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「エソラワークス」子どもの絵「ぬいぐるみ」に

この記事の内容

  • 子供の落書きをぬいぐるみにするビジネスを考案
  • 制作ノウハウを身に付け起業、ネット販売を開始
  • 越境ECも視野に事業拡大に挑む
どんな落書きも立体的な「ぬいぐるみ」に仕上げる白石氏

子供が描いた絵は、それが単なる落書きであっても親や祖父母からみれば、何物にも代えがたい宝物。無邪気で純粋な心から発する表現が、子への愛おしさを倍化させ、より価値を高める。それが親心だ。大切な子供の絵を紙に描かれた状態から立体化できれば、思い出を形に残すことができる。世界で一つしかない自慢のオリジナル作品を飾ることができる。

それをビジネス化したのが、エソラワークス代表の白石哲一氏(42)だ。「ぐちゃぐちゃに描かれた絵が、ぬいぐるみになって届いたら、きっと喜んでくれるだろう」と考えたのが事業化への第一歩だったという。7年前のことだ。

きっかけは友人宅の壁に飾られていたタペストリー(室内装飾用の織物)を見たとき。「おばあさんが孫の落書きを見事に刺繍で再現していた。心の温かさが伝わってくる。良いなぁ、との感動と同時に、ぬいぐるみにする考えが浮かんだ」と当時を振り返る。早速、ぬいぐるみを作ってみたが「感動を伝えられる代物ではなかった」という。

白石氏は、広告代理店の勤務を経て、故郷の愛媛県松山市に戻り家業の建設業に従事。その後、義父が計画する事業を手伝うため、現在の兵庫県芦屋市に移った。「当初は助っ人で空き時間がある。これを有効活用しようと考えていた時なので、慣れないミシンと格闘しながら、ぬいぐるみ作りの腕を磨いた」と語る。

練習用ぬいぐるみの元絵は、自分の子供だけでは足りず、友人の子が描いた絵を借りては、工夫しながら悪戦苦闘の連続。「次第にスピードが上がり、作業アイデアが湧いてくる。ようやくビジネスに発展させられると思った」と、商品化できるまで4年近い歳月が必要だった。

こうして2013年4月にネットショップを開設し、個人事業者として起業した。実店舗を構える余裕資金などない。まずはeコマースから始めるのが自然な流れだった。名称のエソラワークスは、実在しない「絵空事」をもじって決め、煩雑さを嫌いECモールは避け、独自ドメインでの開店となった。

ホームページは、作成ソフトを購入し自らサイトを構築。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への発信やリスティング広告も行い、サービスの浸透を待った。だが、注文は半年で2件という状態だった。

その年のクリスマス前、ネットで見つけたというテレビ局からの取材が入り、放映を機に問い合わせが増え、新聞や他のメディアにも取り上げられ、さらにSNSによる口コミもあって注文が殺到した。

注文が入ると送信された画像を見て見積もりを提示。了承を得て立体化する作り方を決め、材料を選定して製作に入る。「手間暇をかけるから作業効率は悪く、妻と2人では対応しきれない。主婦パートを入れて切り盛りしているが、それでも2カ月待ち」の状態だ。

夢あるネットビジネスだが、1カ月50体の製作がやっとでは売上高の伸びは期待できない。全工程ができる人を育て生産性を上げることに取り組み、他の商品として子供向けグッズなど量産品の展開を検討する。

越境ECも視野に入れている。大手電器メーカーの海外キャンペーンによる依頼で、アジアからの注文を受けた経験が役立つ。「態勢を整え海外に市場を広げたい。世界に一つのぬいぐるみを全世界に届ける」。それが夢だと力強く語る。

今年4月、インターネット上の優れたショップを顕彰する「全国ネットショップグランプリ」(主催・全国イーコマース事業協会)の授賞式が大阪市で開かれた。多くのショップの中からエソラワークスは中小機構理事長賞を受賞。夢あるビジネスを手掛ける白石氏の取り組みが、評価された瞬間だった。

企業データ

企業名
エソラワークス
Webサイト
設立
2013(平成25)年4月
従業員数
4人
代表者
白石哲一氏
所在地
兵庫県芦屋市翠ヶ丘町1-1
Tel
0797-20-1768
事業内容
オーダーメードぬいぐるみ、子供向け雑貨の製造販売