激変する時代を乗り越える中小企業

官民合同伴走型支援で3テーマの改善、売上増を達成【株式会社南雲製作所(新潟県上越市)】

2023年 7月 20日

金型の設計・製作とパーツ加工を事業の柱とする南雲製作所
新たに発足した技術部では若いメンバーが中心となる

1. 事業内容をおしえてください

米桝弘社長
米桝弘社長

当社は1947年、創業者の南雲徹也が当時働いていた工場から1台のプレス機を譲り受け、南雲ファイバー加工所として事業を始めた。1958年に現在の株式会社南雲製作所に改組した。雪国という土地柄もあって、創業当時は暖房機器の板金プレスを行っていたが、その後、顧客の要望に応える形で、精密プレス金型の設計製作技術を習得し、リードフレームや電機・電子部品の量産工場として国内外へ販路を開拓していった。

しかし1990年代、量産部品の価格競争が激化したことを受けて、量産を一切やめることを決断した。その後は高精度プレス金型の設計製作(売り型)と、それに付随する高精度部品加工(パーツ加工)を事業の柱としつつ、自動省力化装置の設計製作も手掛けた。現在は装置部門をなくし、新たに若いメンバーを中心とした技術部を発足させた。主に、顧客の開発案件に参画させてもらい、試作から量産まで共にノウハウを蓄積するという、一種の共同開発が事業の一つとなっている。2008年には経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」に選定され、2016年には、経済的・社会的にすぐれた成果をあげている中小企業を表彰する「グッドカンパニー賞」(中小企業研究センター主催)で特別賞を受賞した。

主要製品の順送プレス金型
主要製品の順送プレス金型

当社の強みは次の三つ。一つ目は、売り型専門としては100人を超える従業員がおり、毎年1億円の設備投資を行うなど、規模が大きいこと。二つ目は品質の高さ。量産を行っていた時代から、金型の品質が良ければ不良品を作ることなく、異常停止も起きづらい、メンテナンスの時間も短縮できる、といったことを理解していた。売り型は顧客に使ってもらうので、そのような経験を活かし、金型の品質に注意を払っている。そして三つ目は技術部の存在。図面支給の加工ばかりではなく、新しいものを自分たちで描き、具現化していくことは容易ではないが、その分、経験に基づくノウハウが蓄積されている。

一方で弱みも三つある。一つ目はリサーチ力。現在は顧客の業界に偏りがあるため、当社の強みを活かしながら分散を行わなくてはならない。二つ目は、技術開発速度。世の中の変化により早く対応していく環境をつくる必要がある。三つ目は技術、技能が属人化していること。現場教育を見直すなど、改善は行っているが、技能の継承は常に課題であると感じている。

2. 昨今の外部環境の変化でどのような影響を受けましたか

原油・原材料高の影響で電気料金が上がった。売上に占める割合は高くないが、少なからず利益を圧迫している。おそらく顧客も同様であることから、さらにQCD(品質・コスト・納期)対応力を付けなければ競争に負ける恐れがあると考えている。

3. どのような対策を講じましたか

高精度に加工された金型部品
高精度に加工された金型部品

2021年に関東経済産業局による官民合同伴走型支援事業に採択され、三つのテーマについて指導を受けながら改善に取り組んできた。

一つ目は製造リードタイムの短縮だ。これまで1日1工程の割り振りで、納期に対し後ろ詰めだった生産計画を、1日に複数工程を回す計画を立て、リードタイムを短縮する計画の仕方と流し方の訓練を行った。金型の特急案件を受注した際はその手法を使用して対応し、短納期品の受注も積極的に行えるようになった。また、新規設計で設計時間が多少かかっても製造でリカバリーするなど、これまでだと納期遅れが発生しそうな状況でも対応できる力がついたと感じている。加えて、機械稼働状況システムを導入し、稼働状況の一部を把握できるように構築した。

今後の課題は、その稼働データを取るだけでなく、そこから課題をいかに抽出し、継続的に改善し続けるかということと、今後、仕事が増えていったときに製造現場の負荷が高い状態でもリードタイム短縮の手法を継続させられるかということだ。

各種の展示会に出展し実際の金型を展示
各種の展示会に出展し実際の金型を展示

二つ目のテーマは技術開発ロードマップの作成。金型の設計製作における売上をさらに増やしつつ、「○○なら南雲製作所」と言ってもらえるようにすることが目的だ。そのためのロードマップを作成し、期限を決めて進めている。一つのターゲットを決め、それに関連する案件を受注しようと全社的に進めてきたが、市場調査に難航した。そこで、ターゲットをいったん白紙とし、既存顧客からの金型案件を断らずに受注し続け、より多くの経験値を蓄積したうえで新たなターゲットを見出す方向に舵を切った。

ロードマップは、状況に応じて見直すことが重要だ。経営者として一度決めたことをやり切ることも大切だが、状況を見て方針を変更することも重要である。そのためのツールとしてロードマップは有効だった。現在、新入社員を2人、設計者として増員し、教育を行っている。顧客の動向を注視しながら、より深く掘り下げるべきターゲットを見定めていく。

三つ目は情報システムの見直しだ。いろいろなシステムが乱立し、つぎはぎ状態であることから業務が煩雑になったり、情報管理上のリスクが増えたりすることが予想されたため、改善を進めた。各部署の作業をフロー化し、些細なことでも困っていることを共有するなど、グループでの作業の進め方も学んだ。その結果、将来的にさまざまなシステムが連携できる可能性の高い生産管理システムを導入することとした。これまで壁一面に生産計画を手作業で貼り出すスタイルだったが、単一のシステムでの作業となり、非常にスムーズになった。現状でも他システムとデータ連携を行うことで、社内向けの帳票作成や原価処理など、これまでの半分以下の時間で完了できる。一部の現場ではタブレットを使用した生産実績収集を行っており、DXへ向けたデジタルツールへの移行の一端にもなった。

これら一連の取り組みの効果もあって2022年3月期の年商は19.7億円となり、直近10年で最高の売上となった。

4. 今後はどのように展開していきますか

南雲製作所は「お客様第一」を徹底していく
南雲製作所は「お客様第一」を徹底していく

今回、当社が採択された官民合同伴走型支援で取り上げたテーマは、終わりのないものだ。次々に出てくる課題をより早く解決するには、いっそうの現状分析と改善努力が不可欠になっている。そのためには、経営者自らが率先して指揮し、やり遂げるという強い意志と姿勢を示し、リーダーシップを発揮していく必要があると考えている。

また、当たり前のことだが、「お客様第一」を徹底していく。顧客の要望をより深く聞いて、一つ一つ着実に応えていくこと。そこには競合他社との競争、難易度の高い案件への対応などがあると思うが、それらの対応の繰り返しが当社の継続的成長につながると考えている。そのなかで、新たな市場開拓から業界の偏りを分散させ、生産性を向上させることにより、QCDの面で顧客に満足してもらいながら、先行き不透明な環境へのリスク対策を行っていく所存だ。

企業データ

企業名
株式会社南雲製作所
Webサイト
設立
1958年8月
資本金
9500万円
従業員数
112人
代表者
米桝(こめます)弘 氏
所在地
新潟県上越市三和区野5823-1
Tel
025-532-4040
事業内容
金型の設計・製作、パーツ加工など