コロナ禍でがんばる中小企業

3密回避の「混雑予報AI」を開発【株式会社EBILAB】(三重県伊勢市)

2020年 7月 20日

ゑびやに併設した土産物店で小田島春樹社長
ゑびやに併設した土産物店で小田島春樹社長

1.コロナでどのような影響を受けましたか

当社は飲食店にプラットフォームの提供や、画像解析などで収集したデータを読み解き、使える形に落とし込む支援を行う情報系販売会社だ。親会社にあたるのは、伊勢神宮・内宮近くのおはらい町に立地する1912年創業の食堂「ゑびや」である。

この店は近年、店舗を改装し土産物店を併設。天気予報や曜日、近隣の宿泊者数などのオープンデータに、グルメサイトからのアクセス数や、従業員が来店客の性別や年代などを目で確認して端末に入力して集めた自社データを組み合わせた「来店予測AI」や来店客の画像解析などのIT技術を駆使して業績を伸ばしてきた。当社は同店の成功体験をもとに開発したデータを他社にも提供している。

だが、新型コロナ感染症の拡大で、当社のデータによると、「ゑびや」前の通行者数は前年同月に比べ今年3月が20.5%減、4月が90.3%減、5月が97.0%減と大きく減少。テレビのニュースでも報道されたが、ピーク時にはほとんど人通りが途絶えてしまった。

当然、毎月の店の売り上げも昨年同時期比で大幅減。仕入れた食材の支払いや店舗の賃料、従業員の給与と出費がかさみ、一時はキャッシュフローがマイナスに陥った。国や自治体からの支援策すべてを活用しても、必要な経費の半分程度。やむなく4月7日から5月27日まで店を閉めた。

店舗は5月末から再開したが、6月は50.3%減、7月も15日までで48.3%減と客足は元に戻らず、コロナ禍前の2割程度のスタッフで営業している。

2.どのような対策を講じましたか

EBILABのデータは店の実績に裏打ちされている
EBILABのデータは店の実績に裏打ちされている

店は休業したが、遊んでいたわけではない。店に立ち寄るお客様が依然少ないのは、密集、密接、密室の3密を避けるコロナ対策が進められている中、店ではどの時間が一番混んでいるのかという情報がないからではないか。そこで当社の来客予測AIを応用し、混雑情報を事前に予測し、可視化することができる「混雑予報AI」をスタッフと協力して開発した。

「混雑予報AI」は、どのテーブルにお客様がいらっしゃるのか、テーブルがいくつ埋まっているかなど、店内レジデータから取得した情報を繋ぎ、店内の状況を外からでも瞬時に知ることができるし、少し先の混雑状況も予測できる。店頭に設置したスクリーンのほか、スマホやパソコンの画面からも確認が出来るので出かけなくても必要な情報を読み取る事ができる。

また、休業中はパート・アルバイトを含む従業員をテレワークにして、希望者を対象にオンライン研修を実施した。知人の大学教授やマーケティング専門家などにも協力してもらい、接客方法や商品開発などを講義した。オンラインで学んだ知識を、店舗がフル稼働に戻ったときに多少なりとも役に立てたい、と思っている。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

伊勢土産を購入代行サービスも
伊勢土産を購入代行サービスも

「混雑予報AI」は飲食店だけではなく幅広い業種の店舗運営に大いに役立つシステムだ。当社の顧客はいま、飲食店や小売業、宿泊施設がメインだが、今後は医療機関など他業種にもお使いいただけるよう広報活動を行っていく。

新たに「WEB来店」システムも開発した。ビデオ会議ツールを活用し、お客様とリアルタイムでお話しながら遠隔で接客ができるサービスで、直接お店に行かなくても実際にお店で受けるのと変わらない、またはそれ以上の接客サービスを店舗スタッフから受けることができる。同システムを用いて遠隔地からの伊勢神宮参拝やお守りの購入代行などを提供していきたいと考えている。

このほか日々の売り上げをスマホで入力し、一括で管理する「スマート日報」も提供している。複数店舗の売上管理や経理業務を簡略化することでコロナによる人手不足解消に役立ちそうだ。

当社は今後も変わりゆく時代に求められるものを常に追求し、創り上げる努力を続けていくつもりだ。

企業データ

企業名
株式会社EBILAB
Webサイト
設立
2018年6月4日
代表者
小田島春樹 氏
所在地
三重県伊勢市宇治今在家町13
Tel
0596-63-6364

同じテーマの記事