BreakThrough 企業インタビュー
呼吸器系に問題を抱える患者のニーズの汲み取り コンプレッサー小型化との闘い【株式会社イズミ技研】
2018年 4月 23日
summary
利用者の利便性を考慮すると小型化は当然の成り行き
長時間の耐久性獲得に多大な時間を費やす
より高い課題を設け、目標到達を目指す
小型化への挑戦。すべては利用者のため
世界に類を見ないスピードで人口の高齢化が進む日本社会において、厚生労働省主導のもと在宅医療が推進されている。
「慢性の呼吸不全者は加齢とともに多くなっており、近年は酸素濃縮器を必要とする人の数が増えた」
そう語るのは、酸素濃縮器において重要な役割を担うコンプレッサー(圧力をかけて気体を圧縮し送り出す装置)を提供しているイズミ技研代表取締役社長の若生登士男氏だ。
従来サイズの酸素濃縮器では、その大きさが足かせとなってしまい、自宅内の移動であってもその持ち運びに難があった。特に利用者には高齢者が多いこともあり、機器同伴での移動困難を理由に寝たきりの進行があってはならない。小型化は急務の課題であったともいえる。
10年の開発期間、そのほとんどを耐久性の獲得に費やす
同社が新たに開発したコンプレッサーは従来品が8kgの重量だったものを、その半分の4kgというコンパクトなものに仕上げた。さらに常時利用するものでもあるため、消費電力においても従来品の2~3割程度抑えることにも成功した。
開発期間のなかで、そのほとんどを費やしたのはモーター部だ。従来の技術ではAC(交流)モーターを採用していたが、DC(直流)モーターに変更した。この変更は高効率化や小型化を可能にした。
しかし、モーターの高効率化こそ実現したものの、そこには機器を長く使うための「耐久性」という解決すべき大きな課題が同社を待ち構えていた。
同社ではこれまで冷凍・空調に関わる製品機能部品のモーター開発を得意としていたが、そこで得た技術とノウハウを持ってしても、同コンプレッサーの開発は10年にも及んだ。開発期間のほとんどを、モーターの耐久性を獲得するのに費やすほど実現は難しいものだったという。
より高みを目指し改良に意欲
粘り強い開発によって1万6千時間という高い耐久性と小型化に成功した同社の酸素濃縮器用コンプレッサーだが、若生氏はまだ満足していない。現状の約1.9倍に近い3万時間の耐久性を実現しようと開発を進めている真っ最中だという。
より長時間の耐久性を獲得することで、機器のメンテナンス、オーバーホールの回数を少なくできるなど、総合的にコストを抑えることができる。開発こそまだ終わりとはいかないものの、その見通しはたっているとのことから、耐久性獲得への自信が見えている。
多くの呼吸不全者の手助けとなるコンプレッサーの高性能化・小型化に挑戦し続けてきた同社。小型化を追求し、携帯性が優れることによって、設置場所に困ることも減り、さらなる利用拡大が見込める。また、設置場所を選ばず利用できることは対人だけでなく、たとえば水産物の養殖現場などの新たに場所を確保するのが難しい現場でも、水中の溶存酸素を高めるための活用など貢献できる可能性を秘めているのではないだろうか。
企業データ
- 企業名
- 株式会社イズミ技研
20年程前から医療向けとして酸素濃縮器用圧縮機(オイルレスコンプレッサー)の開発を手掛け、今では従来主力の冷凍・空調向けの機器に並ぶ事業として大きく成長してまいりました。この間に弊社の圧縮機は大手酸素濃縮器メーカーから寿命等で光栄なトップクラスとの評価を頂き、それをバネに市場の開拓を致しております。