BreakThrough 企業インタビュー
AIを中堅中小規模企業がビジネスに生かす時代【ソフトバンク株式会社】
2017年 3月 27日
ソフトバンクがIBM Watsonを使って多彩で魅力的なソリューションを展開
囲碁の世界でトップクラスの棋士がAIに負けてしまったり、AIを使った自動運転車への取組みが始まったり、AIはいまさまざまな形で社会の中に入り込もうとしている。当然、ビジネスの世界でも然りで、AIの利活用に多くの注目を集めているものの一つが、米IBM開発によるIBM Watson(以下Watson)だ。
AI普及に火をつけ加速させた立役者Watson
Watsonは、クラウド上で提供され、非常に膨大なデータを分析して、自然言語で投げかけられた複雑な質問や対話などを解釈して、根拠に基づいた回答を提示してくれる。そして経験を重ねていくことで、回答の精度がどんどん向上していくようになっている。いま、このWatson日本語版をベースに、さまざまなサービスの提供がソフトバンクで始まった。こうしたサービスの導入のしやすさや値ごろ感は、中堅中小規模企業のビジネス分野で、強力な味方になるかもしれない。ここでは、Watsonサービスの最新例を紹介しよう。
Watsonを利活用した接客ソリューションと社内お問合せシステム
ソフトバンクは日本アイ・ビー・エムと提携し、2016年2月よりWatson日本語版の普及に精力的に取り組んでいる。ソフトバンク 法人事業戦略本部 Watsonビジネス推進部 部長 立田雅人氏は「パートナー企業と協力してWatsonを活用した多彩なサービスを提供し、お客様の課題を解決していきたい。現在当社では、利用目的を具体的に絞り込むことで、低価格かつスピーディにWatsonを導入いただけるパッケージ型のソリューションを提供している。導入へのハードルを低くし、より多くのお客様にWatsonの効果をご実感戴きたい」とその意気込みを語る。こうしたソリューションサービスの最新例を紹介しよう。
まず接客ソリューション。エクスウェアが開発した「TalkQA for Pepper」は、Watsonとソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperとの組み合わせで実現したものだ。たとえば、店舗や施設に客が訪れると、Pepperが製品やサービスの説明、施設の案内をしてくれる。そこで客がPepperに質問をすると、WatsonのAPI(Application Programming Interface)の一つNLC(Natural Language Classifier:自然言語分類)が質問内容を理解し、音声やタブレット端末などから最適な回答をしてくれるようになっている。また、Pepper向けプレゼンテーションアプリ「ペップレ」(エクスウェア開発)との組み合わせでは、Pepperがスライドや映像、音声を使ってプレゼンできるために展示会や企業内研修などにも利用可能だ。既にPepper所有のユーザーは、これをより多くのシーンで活用するのに最適なソリューションとなっている。導入費用は初期費用が65万円からで、本番運用は月額利用料で17万5000円から、となっている。
また、空色が開発した「OK SKY」は、ECサイトや各種のサービスサイトでハイクオリティな接客サービスをめざそうというものだ。これは、Watson活用のチャットボットと有人のチャット対応を組み合わせるもので、サイトの利用客がPCやスマホからON SKYに質問すると、WatsonのAPIの一つNLCによって質問の意図が解釈され、チャットボットが最適な回答をリアルタイム提示する。内容に応じて、オペレータ対応に切り替えられるので、客はあたかも1人の担当者と話をしているかのように自然で高品質な接客を受けられるようになっている。導入にあたっては、有人のチャット対応から開始することで、接客に必要な学習データを蓄積可能なのでチャットボットへのスムーズな移行が可能だ。導入費用は初期費用100万円からで、本番運用が月額利用料10万円+従量制)となっている。
導入しやすい値ごろ感になってきたAI
いまAIは、このように各種サービス提供や導入利活用が急速に進みつつあるが、むろんこれだけにとどまるものではない。しかもサービスを利用する場合、クラウド環境での利用も手伝って、上記のようにコストもそれほどカベが高いものではなく、中堅中小規模企業が今後ビジネス展開する上で強力な味方になりつつある。立田氏は「AIは、車に例えればエンジンのようなもの。いろいろなアプリやサービス、データと組み合わせることで、さまざまなシーンでの業務改革を実現できる。AIが従来の業務を効率化することで、人はよりクリエイティブな仕事に集中することができるようになる。新しいテクノロジーによって、お客様のワークスタイル変革に積極的に貢献していきたい」と、今後のさらなる展望を語る。