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妻鳥通信工業

GPS技術を極め、社会インフラ構築に貢献

「いつかは独立したいと思っていた」という妻鳥圭志氏は、勤めていた銀行を1995年に退職し妻鳥通信工業を設立した。現在ではカーナビゲーションシステムなどで一般的にも普及している衛星測位システム(GPS)にいち早く着目し、創業以来一貫してGPSを利用したシステムの開発を行っている。

  • 独自アイデアで社会インフラ構築を支える
  • 障がい者や外国人のサポートを
  • 最新技術を融合し新たなサービスを創出

GPSで聴覚・言語障害者の緊急時対応

主力製品の緊急Web通報システム「ガチャピー」は、2004年に聴覚・言語障害者の緊急通報手段として開発した。携帯電話やスマートフォンで事前登録作業をしておけば、画面に表示されるボタンを選んでいくだけで、管轄の消防本部に救急車や消防車の出動要請が届く仕組み。携帯電話やスマートフォンに搭載されているGPS機能を利用して位置情報を消防本部に知らせるため、外出先で利用することもできる。

緊急通報システムは、自治体ごとに構築されている。「発売当初は実績もなく、どこにも相手にされなかった」と妻鳥社長は振り返る。だが2004年に愛媛県新居浜市消防本部で採用されたことをきっかけに、同年中に松山市消防局でも、2006年には愛媛県今治市消防本部と愛媛県内で相次いで採用された。

導入実績が増えるとともに、その良さは徐々に全国の自治体に知れ渡るようになった。2015年3月には東日本大震災で甚大な被害を受け、多くの聴覚・言語障害者が犠牲になった岩手県陸前高田市消防本部にも導入された。防災意識の高まりとともに全国の自治体から声がかかるようになり、現在では全国30カ所以上の消防局で採用されている。

スマホからワンタッチで非常事態を送信できる

外国人向けの緊急通報システムも視野に

東日本大震災で多くの聴覚・言語障害者が犠牲になったことがきっかけで、2012年に総務省は「大規模災害、聴覚・言語機能障害に対応した緊急通報技術の開発」という研究会を発足させた。同社も研究会に参加する。自治体ごとに構築している緊急通報システムを将来的に統一規格にすることで、どこからでも緊急要請ができる社会インフラの構築を目指している。

また、「ガチャピーの仕組みは外国人向けの緊急通報システムにも応用できる」(妻鳥社長)と、近年の外国人観光客の増加や2020年の東京オリンピック開催を見据え、多言語に対応した緊急通報システムの開発も視野に入れている。

最新技術を企業向けサービスに応用

2015年5月には、これまでのGPS技術から脱却し、最新の通信技術「Web Real Time Communicatione(WebRTC)」をベースとした新商品「Webが窓口」を発売した。WebRTCは、パソコンやスマートフォン同士で映像や音声、ファイルなどをブラウザ間でリアルタイムに通信する技術。従来のように専用のアプリケーションが不要で、簡単にリアルタイム通信ができることから、今後さまざまな技術応用が見込まれている。

「Webが窓口」は消費者とオペレーターを、パソコンの画面上でリアルタイムの音声と映像を使ってつなぐサービス。消費者が企業のホームページ上にアクセスし、例えば「電話窓口」というボタンをクリックすると、瞬時に相談窓口のオペレーターと通話できる仕組み。

画面上にはオペレーターの顔も表示されるので、離れていても対面接客と同じようなきめ細かいサービスの提供が可能になる。パソコン画面の共有やファイル転送も可能なので、消費者が求める情報をオペレーターが探して提供することもできるとしている。顧客サービスの充実や出張費の削減、時間の有効活用などができることから、今後は不動産や金融機関などをターゲットに販路拡大を目指す方針だ。

One Point

2つの技術の融合で高度なサービスを

主力製品の「ガチャピー」は自治体向けの製品だが、「Webが窓口」の発売をきっかけに、今後は民間企業をターゲットとした製品の開発にも注力することで、新たな市場の開拓が期待される。またWebRTC技術をガチャピーに応用することも検討しており、実現すれば「通報者の周りの状況が把握でき、より迅速で的確な対応が可能になる」(妻鳥社長)としている。GPSとWebRTCの融合から生まれる新しい発想にも注目だ。

企業データ

画像キャプション
企業名
株式会社妻鳥通信工業
Webサイト
法人番号
1500001010351
代表者
妻鳥圭志社長
所在地
愛媛県新居浜市南小松原町8-66
事業内容
ソフト開発・販売