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「HALVOホールディングス」新興国の健康被害軽減に貢献

この記事の内容

  • 地元鹿児島の火山灰シラスの凝集効果を活かした浄化剤を開発
  • 新興国の飲料水を浄化して健康被害軽減に貢献
  • 第4回九州未来アワードの企業・団体部門で大賞を受賞
HALVOホールディングス
「将来は海水の淡水化にも挑戦する」と浄化前後のボトルを手に永原社長

地元鹿児島県に堆積している火山灰シラスの水質浄化作用を活かした凝集剤開発・販売メーカーHALVOホールディングスが今年3月、九州の魅力を世界に発信し九州経済を牽引する起業家やイノベーションの創出に成功している事業者をたたえる第4回九州未来アワードの企業・団体部門で大賞を受賞した。降灰や地滑り、土石流の被害が絶えないことから、地元で「厄介者のシラスが希望の粉に変わった」と受賞式で挨拶した永原一佳代表取締役社長兼COO (最高執行責任者)に、火山灰という天然〝資源〟の活用で新興国の飲料水を浄化し、住民の健康被害軽減に貢献する製品の開発経緯や経営理念「世界の環境改善」の目指すところ、鹿児島から世界に進出していく経営戦略などを聞いた。

——1986年の創業時は塗装防水業でした

「塗装用具についた汚れを洗浄した後の排水を河川などに廃棄するわけにはいきません。この排水問題を解決するため、創業者で先代社長の柳生良治が地元の火山灰シラスの浄化作用に着目し、これを利用して排水に混ざった塗料などの汚濁物同士をくっつける効果のある凝集剤の開発に着手しました。改良を重ねて創業から5年で完成したのが現在の主力商品となっている水質浄化剤『きよまる君』と、これに殺菌効果を付加してヒメダカによる魚類急性毒性試験にも合格している『H・O・H』です。これらの製品販売に注力するため昨年2月に設立した新会社が当社です」

——『H・O・H』を具体的に

「濁水に少量入れて混ぜるだけで、溶け込んでいた汚濁物が固まってすぐ沈殿し、飲料に適した澄んだ水に変わります」

——ODA(政府開発援助)事業でベトナムの水質改善にも貢献しました

「小規模浄水普及・実証事業でJICA(国際協力機構)に採択され、浄水機を29カ所に設置して生活用水や飲料水用にメコン川の水を浄化しました。事業期間は2012年から約3年間でした。ベトナム政府は日本の水道水質基準の倍以上となる109項目の検査を特別に要求してきましたがパスし、飲料水としての安全性能承認を『H・O・H』で取得しています」

——企業理念に研究開発による国際環境整備を掲げています。次の目標は

「フィリピンやインドネシアなどの島国とアフリカ諸国の環境改善への貢献です。都市部はともかく人口が少ない未開拓地域に十分な予算は充当しにくいでしょう。当社の浄化剤は雨水や地下水に混ぜるだけで水質を飲料に適した水準に改善できます。大規模な浄化装置や電力供給も不要です。バケツにためた水に入れてかき混ぜ、固まった汚濁物をタオルなどでろ過するだけでも構いません。飲料水に利用する地下水などに重金属が含まれていることで健康を損ねてしまう状況から彼らを解放したい」

——新興国で販売するには、より安価にする必要がありそうです。低価格化はどう実現していきますか

「当社が進出を計画している新興国などで鹿児島の火山灰シラスとよく似た性質を持つ鉱物を採掘できる地域を数カ所見つけています。付近に浄化剤製造工場を建てることで運搬費を削減して実現します。日本から運搬するより効率的ですし、火山灰自体はどの国でも安価です」

——九州未来アワード大賞受賞の効果は

「受賞前は製品の販売代理店契約を取るのに苦労しましたが、今では大規模な商社さんにお声がけをいただいています。現在までに12社と契約を結びました。受賞で品質への信頼が高まり、販売力を強化する転機になりました」

——九州の地場企業が世界に進出する際に必要なサポートは何でしょう

「当社の役割は新興国に安全安心な飲料水を供給するための浄化剤の提供です。各国政府には設備投資に取り組んでほしいのです。固まった汚濁物をろ過する簡易設備で十分ですから整備に尽力していただきたいですね」

企業データ

企業名
HALVOホールディングス
Webサイト
設立
2017年2月
従業員数
3人
代表者
代表取締役兼COO永原一佳氏
所在地
東京都千代田区神田佐久間河岸78-6 第2壽ビル4階
Tel
03-5846-9832
事業内容
飲料水・環境改善事業
売上高
2700万円(2018年3月期)

プロフィール

永原一佳 (ながはら かずよし)

代表取締役兼COO

1974年5月13日生まれ。香川県出身。2018年7月1日より現職。「未利用資源を使った浄化剤により水で困っている世界の人々を助ける」と新社長就任の抱負を語る。