プレス加工・金型メーカーの山口製作所が社内でコンピューターを使い始めたのは1989年に遡る。その2年前の87年に、創業者である父親の急逝を受けて代表取締役社長に就任した山口貴史(やまぐち・たかし)氏(53)が旗振り役となってきた。
山口社長は当時、大学を卒業し、後継者になることを前提に地元の専門学校に通い始めていたところだったが、急きょ、入社を繰り上げて経営者になった。その経営者の仕事にも慣れ、ある程度余裕ができた頃に、自分が学生時代に父親に導入を勧めたパソコンがほこりをかぶっているのを見て、「せっかくだから」と、プログラミング言語の「COBOL(コボル)」を勉強しながら社内のOA化、IT化に取り組んだ。
「字が下手で、伝票を書くのが嫌だった」(山口氏)こともあり、最初に納品書の発行作業をパソコンでできるようにした。当時の同社の製品は、納入先からジャスト・イン・タイムを要求される自動車部品が多く、納入期日などを細かく指定されるので、そのぶん納品書の枚数も多くなりがちだったからだ。ただ、多額のコストをかけられないので、山口社長自ら勉強しながらプログラム作成に取り組んだところ、取引先の専門知識を持つ人が手伝ってくれたこともあり、狙い通りのシステムが完成。以来、社外のシステム開発会社を頼ることなく、独自開発を基本に、順次、OA化、IT化を進めてきている。
1991年にはOS(基本ソフト)にマイクロソフト社の「MS-DOS」を使った在庫管理システムの運用を開始。95年には新登場のOS「Windows(ウィンドウズ)」を使って社内ネットワークを構築した。さらに96年にはデータベース管理ソフト「Access(アクセス)」による生産管理システムを開発し、運用を始めた。続く97年には無線LANを導入。生産現場でも98年にCNC(コンピューターによる数値制御)測定機、2000年にCAD/CAM(コンピューター支援による設計・製造)を相次ぎ導入し、社内ネットワークに連結してきた。
製造現場のIoT化も2008年と早い。プレス機のサーボモーターの駆動データをインターネットで送れるようにした。現在は、プレス機の荷重管理システムの開発・導入を進めている。複数台のプレス機の状態をIoTシステムを活用して一括管理することで、金型の最適なメンテナンス時期の予測、異常加工の検出、加工手順の標準化などにつなげ、生産性向上を図る考えだ。