コロナ禍でがんばる中小企業

動画+宅配の体験サービス迅速に提供【有限会社平田観光農園】(広島県三次市)

2020年 7月 20日

果樹園をバックに笑顔の平田社長
果樹園をバックに笑顔の平田社長

1.コロナでどのような影響を受けましたか

昭和30年に広島県三次市で創業した観光農園。西日本では珍しいリンゴ栽培にチャレンジし、その後農園の面積を15ヘクタールに拡大し、リンゴをはじめイチゴ、サクランボ、ブドウなど14種150品種の果物を栽培。一年を通じてくだもの狩りができる。

6次産業という言葉のない頃から、園内に農家レストラン、農産物加工場を立上げ、レストランで提供する収穫したての果物を使ったパフェなどは予約でいっぱいになる人気。コト消費にも着目し、森の中で薪を割ってダッチオーブン料理が楽しめる施設や、体験をテーマにした子会社・株式会社イチコトを立ち上げ、農園内でくだものを使った缶詰作りやアイスクリーム作り体験なども行っている。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大で今年2月末から団体旅行が全てキャンセルになった。しばらく一般客だけで営業していたが、広島県知事から自粛要請が出て4月17日から6月5日までの50日間、園内全ての施設を休業。観光収入が完全にゼロになった。ちょうどイチゴの収穫期でゴールデンウィーク期間に全く営業できなかったのは大きな痛手だった。

2.どのような対策を講じましたか

第2弾「巣ごもりジャム作り体験」動画のオープニング画面
第2弾「巣ごもりジャム作り体験」動画のオープニング画面

イチゴは、熟れ過ぎると腐ってしまう。顧客が来られなくなると分かってからすぐ、ネット販売に切り替えることを決めた。今の時代のキーワードは「コト消費」「動画の時代」だ。イチゴと動画をセットにして、家でイチゴ狩りが楽しめるキットを開発し、休業した1週間後の4月下旬にリリースした。

「いちご狩り」が宅配されるという「巣ごもり体験」が注目され、各メディアが多数取り上げ、約1000件の販売数は、イチゴの在庫がなくなりストップする人気を獲得。第2弾「巣ごもりジャム作り体験」、第3弾「巣ごもりさくらんぼ狩り」も好評だ。

「イチゴ」ではなく「いちご狩り」という「コト」を販売したため、付加価値の高い商品として認められ、2人前送料込み5000円越えと高額でも顧客に満足してもらった。良い経験になったし、動画効果も期待通りで、これからの時代にたいへん重要だという認識を社内で共有できた。

今回のネット販売では、自社のチャネルだけでなく、農産物EC(電子商取引)ポータルサイトや、クラウドファンディングも初めて使ってみた。どちらも顧客との双方向のやりとりができるしかけが頻繁にあり、顧客の共感を獲得することの重要性を実感した。良いチャレンジができたと思う。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

体験動画を見た後で獲れたてのイチゴを味わう
体験動画を見た後で獲れたてのイチゴを味わう

農業界ではこれまで「6次産業化」「インバウンド」「観光農園」「農家民泊」「農家レストラン」「レストランとの直接取引」などが目指すべき道とされ、そちらに邁進してきた。これらは全て相手に「人」がからむビジネスで、付加価値は高くとれるものの、新型コロナ感染症の時代では一番弱いことが露呈した。

今後はライフスタイルが見直され、自宅で丁寧に食事をつくることが見直されてくるだろう。味噌づくりや、ぬか漬けなど、ひと昔前にどの家庭でもやっていた丁寧な暮らしへ回帰していく時代がやってくるのではないかと思う。

動画を使った教室やECなどが伸びてくるだろうが、これらは会社の大小の規模に関係なく誰でも取り組めるビジネスだ。早く始め、早く認知されることが重要になるのではないか。「巣ごもりいちご狩り」を1週間でリリースしたら多くのメディアに取り上げられたのは、スピード感が鍵だったからではないか。

公共交通機関をつかっての移動が前の状態に戻るにはもう少し時間がかかるだろう。当面、マイカー移動で、家族や仲間での日帰りや1泊の旅行が主になりそうだ。観光庁の「GO TOキャンペーン」に期待したい。当社は65年間続く観光農園のウィズコロナ対策の充実と、今回の取り組みで獲得したECビジネスなどを伸ばし、より強い企業を目指して頑張っていく。

企業データ

企業名
有限会社平田観光農園
Webサイト
設立
1985年8月1日
代表者
平田真一 氏
所在地
広島県三次市上田町1740-3
Tel
0824-69-2346

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