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「まくら(千葉県柏市)」社内開発した自動予側発注システムの効果絶大
この記事の内容
- まくら専門のネット通販会社を設立
- 社内で開発した自動予側発注システムが通販業務を一手に
- 人間は機械が苦手な新規事業立案・実践に注力
業種を問わず企業の生産性を考える連載企画の3回目は、千葉県柏市を拠点に枕のネット通販で業績を拡大している、その名もまくらを紹介する。自社で採用したプログラマーが開発した枕の受発注業務を自動的にこなす独自のシステムは、多くの生産性向上効果をもたらしている。
2002年に家電量販店で携帯電話を販売していた河元智行氏は、使っていた枕が自身に合わなかったことから、消費者の視点で世の中に出回っている多数の枕を紹介し、選び方を提案したホームページを自作した。このホームページは枕で悩む人が集う場となり、枕メーカーから商品掲載依頼やメディアの取材が来るまでに人気を博す。応募したインターネットプロバイダーのホームページコンテストで準グランプリを受賞した賞金20万円を元手に、店舗を持たずネットだけで販売する商品そのものを社名に冠した「まくら」を28歳で創業したのが04年のことだ。
当時は実績がなく借り入れができずに在庫を持てなかった。枕を仕入れては売ることの繰り返しで業績が上向いてきたが、注文される商品はだいたい決まっているためメーカーに発注する商品も決まっていた。アルバイト2~3人で午前中を費やしていた注文集計と発注作業が「面倒になってきた」河元氏は、社員10人規模になった約10年前に経費を削減しようとプログラマーを雇って独自の自動予測発注システムを開発する。実売記録から売れ筋を割り出して注文が入る前に発注・入荷する仕組みで、注文の大半を翌日に宅配できる。自動予測の的中率は8割前後。2割は商品がテレビ番組で紹介された効果などで想定を大きく上回る注文に応じられないケースか、在庫を抱えないようにする工夫に過ぎない。
アイデア創出に人材充当
推奨する枕の選び方は「好みや感覚。自分に合っているかどうかは寝慣れた布団で試して初めてわかる」と明快。20日間無条件返品制度を付けたネット販売のみで経営している理由でもある。枕はメーカーの希望価格で販売するため値引きやポイント付与が主流の今は割高感が否めないが、購入前に試したい枕3点を1000円で20日レンタルするサービスや無料の贈答用包装が好感され、創業以来14期黒字経営を続けている。
河元氏にとって生産性向上とは「業務を効率化するツールやシステムを社内で開発して機械ができる作業は機械に任せ、人間にしかできない企画立案などを人間がするようになる」こと。この社内リソースの適正配分により受発注は機械の業務に「格下げ」し、アイデア創出に人材を充当できるようになったため、地域資源活用事業計画認定を受けた「らっかせいまくら」や千葉県のご当地キャラクターをモチーフにした「チーバくんの安眠まくら」などの独自商品やOEM(委託者ブランド名製造)も実現できている。まくらという社名を最強のSEO(検索エンジン最適化)対策に営業マンを置かず宣伝費もかけず、反響営業だけで「応じきれずに断る方が多い」数の共同企画案が舞い込んでいる。
これまでに社内で構築したツールは自動追加発注など約180個。ネット通販事業者に高評価されたことから商品化し、近く別会社化するまでの事業に成長した。「プログラマーの雇用効果は絶大。人件費が高くても採算は必ず取れる」と自社開発の有効性を強調する。12年に経済産業省の中小企業IT経営力大賞の優秀賞を受賞した際、ベンダーの存在を初めて知ったほど「システムの社内開発は当たり前」だ。
海外進出も実現
同社は中国にも進出している。新卒採用した中国人スタッフの働きなどで同国の大手ネット通販サイトに出店。昨年の独身の日(11月11日)には6000万円を売り上げ、同日の「日本の寝具販売業の海外展開で一気に上位になれた」と振り返る。
現在ネット通販に直接携わっているのは従業員27人中2人だけ。大多数は未来への投資と位置付ける業務に就いている。快眠性の追求に必要として睡眠を数値化する技術を研究中。AI(人工知能)を搭載した枕も構想している。枕が起こしてくれてカーテンを開け、秘書機能と連動して日程を管理、体温や血圧を測って医者や家族に送信、寝ていても緊急地震速報や大雨警報を知らせ、時には人生相談も…。「こんなイメージを現実にして世界に発信したい」と意欲的だ。
企業データ
- 企業名
- まくら
- Webサイト
- 設立
- 2004年4月
- 従業員数
- 27人
- 代表者
- 河元智行
- 所在地
- 千葉県柏市柏4-8-14 柏染谷ビル4階
- Tel
- 04-7167-3007
- 事業内容
- 枕を中心とした寝具のインターネット販売、オリジナル枕の企画開発、卸売販売、OEM受託開発など