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「住民にどんな価値が提供できるか」という視点からの提案に期待【パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長・山本賢一郎氏】<連載第3回>(全4回)
2021年 2月18日
IoTなどの最先端技術を活用し、企業や組織の連携によって持続可能な街づくりを行うパナソニック株式会社の「サスティナブル・スマートタウン(SST)」。このSSTのあり方から中小企業のブレークスルーのヒントを探す本連載シリーズ第3回では、藤沢SSTに続く第2、第3のSSTの実態と、パートナー企業選定のポイントなどについてプロジェクト責任者の山本賢一郎氏に伺います。
SSTで超高齢社会など社会課題の解決モデルを模索
「サスティナブル・スマートタウン(SST)」の開発の肝となるのが、地域の特性と日本社会の課題を踏まえたコンセプトづくりです。
神奈川県横浜市の綱島エリアで、第2のSSTとして稼働中の「Tsunashima SST(以下、綱島SST)」は、企業の技術開発センター、大学の学生寮、環境に配慮した商業施設、水素ステーションが集まる都市型複合タウン。綱島SSTでは、「この街が、未来をつくっていく。」をコンセプトに、大学とのインキュベーション活動や企業連携を通じたイノベーション創出を目指しています。一方、大阪府吹田市の工場跡地に造成中の「Suita SST(以下、吹田SST)」は、高齢化社会の課題解決が狙いです。
「吹田SSTの敷地の目の前は、北大阪健康医療都市(健都)の建設エリア。そこで、『Suitable Town for Fine Tomorrows』をコンセプトに、ファミリー向け、シニア向けの分譲住宅や単身者向けの共同住宅、またサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)やグループホーム、保育所などが入ったウェルネス複合施設、商業施設などを建設し、超高齢社会の3つの課題『多世代居住』『健康』『地域共生』に取り組んでいきます」
「どんな価値を提供できるか」を参画の出発点に
SSTのパートナー企業は、パナソニック株式会社が各SSTのコンセプトを基に幅広い企業に声を掛け、SSTの理念を共有できるか、連携でどんな価値を実現できるかといった話し合いを経て決定します。当然、街に新たなメリットをもたらす中小企業からの提案も歓迎しており、実際にオファーも多数。その場合に重要なのが、「自社の技術、製品を使ってほしい」というサプライヤーとしての意識を超えた「パートナーとしての意識」です。
「『自社の技術でSSTの住民の方々にどんな価値を提供できるか』をスタート地点としていただくと有り難いですね。IoTで集積されたSST内のデータ活用や、モビリティの分野などは特に提案を求めています。互いにリスクを取る覚悟も持ちながら、社会に大きなインパクトを与える先進的で独自性の高い取り組みを本気で進めていきたい考えです」
「コミュニティ」の生の声をサービスに反映
SSTの運営では、より良い街づくりにつながる意見やアイデアの提供、新たに開発されたサービスの実証実験への協力など、住民も大きな役割を果たしています。SST側も住民主体の街づくりを実現する次世代型自治組織とマネジメント会社を設立し、その活動を支えています。
「住民とパートナー企業の距離が近く、その生の声に応えるサービスを開発・検証していけるのがSSTの強みです。コミュニティ形成は当社がこれまで手がけていなかった分野ですが、よりよい街づくりには不可欠。例えば防災・減災を考えた場合、互いに支え合うコミュニティづくりがいかに大切かは、皆さんにもご理解いただけると思います」
持続可能な街の基盤となるコミュニティ形成に力を注ぐことで、住民の声を活かしたサービス開発が進めやすくなり、結果住民の暮らしの質が向上する──。SSTではそんな好循環が生まれています。次回最終回は、自社リソースの活かし方について全般的なアドバイスをいただくとともに、SSTが中小企業に期待していることなどについて紹介します。
連載「「サスティナブル・スマートタウン(SST)」を新たな価値創造の舞台に」
- 第一回 産官学連携で社会課題の解決を目指す「サスティナブル・スマートタウン(SST)」とは
- 第二回 「暮らし」起点のSSTでは、企業連携による新サービスが続々誕生
- 第三回 「住民にどんな価値が提供できるか」という視点からの提案に期待
- 第四回 「サスティナブル・スマートタウン(SST)」を新たな価値創造の舞台に
山本賢一郎(やまもと・けんいちろう)
パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長
1990年4月、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)入社。以来、社内で一貫してB to B事業分野を担当する。パナソニックシステムソリューションズ社首都圏本部や、本社の建設事業推進本部、設備事業推進本部などにおける多彩なチームをリーダーとして率いた後、2016年4月に本社ビジネスソリューション本部企画・開発担当総括に就任。2018年10月より、同本部CRE事業推進部部長およびFujisawa SST協議会代表幹事を務める。
取材日:2020年12月14日
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