コロナ禍でがんばる中小企業
金属切削加工の仲介手数料無料システムを開発【株式会社村井】(愛知県名古屋市)
2022年 1月11日
1.コロナでどのような影響を受けましたか
株式会社村井は、2016年に同時設立した一般社団法人中部部品加工協会の管理運営会社だ。中部地域で金属切削加工を行う会社の経営研修や技術指導、切削工具のオンライン販売、カタログ製作や広報などで収益を確保し、協会活動を下支えしている。協会の代表理事は村井正輝、会社の代表取締役社長は妻の村井さやかが務めている。
協会代表理事の村井は産業向けエンジニアリングツールや金属材料を製造・販売するスウェーデン多国籍企業のアジア責任者として欧州やアジア各国を飛び回っていたが、退職して「日本を支えてきた中小企業に恩返しできる仕事をしたい」と非営利活動法人を立ち上げた。中小企業に仕事を仲介・斡旋するビジネスが成り立っているが、手数料など中間搾取をされてしまうと中小企業の競争力とコスト対応力が削がれてしまう。製造業各社が共存しながら自社の技術力を育成できるビジネス体をつくりたいと考えた。
協会会員は2021年11月末現在、139社。部品加工メーカーや周辺サービス業の若手が多く、質の高い経営環境と生産知識を得るため、会員同士の横のつながりを活かして活動している。AIを開発したいという会社があれば、「やりたい会社集まれ」と声をかけ、集まった企業みんなで開発を始める、現場で必要な工具や機械を購入するときは共同購入し、使い方やトラブル対処法の勉強会を開くなど、会員全社が運営にかかわる。相互にサポートし合えば、リスク分散が図れるし世の中のニーズの変化にも迅速に対応できる。
協会活動を支援する株式会社村井はコロナ前の2019年に約2億2000万円の売上を計上していた。だが、コロナ禍で工具などの需要が低下、三密対策で会議やセミナーが相次いで中止になった。研修業務は微減だったが、オンライン販売が半減し、2020年の売り上げは8000万円と前年の3分の1以下に激減、赤字を計上してしまった。
2.どのような対策を講じましたか
売り上げの落ち込みはリーマン・ショック時のようにコロナ感染が収まればすぐ元に戻るという見方も多かったが、コロナは訪問営業自粛などこれまでの仕事のやり方を変えつつある。従来の考えを根本的に見直さなくてはならないと思った。金属加工業は受注次第で、好・不調の波が大きい。外出自粛で営業効率も悪化する。サプライチェーン分断で部品の調達難も顕在化するだろう。だが、うまく対応できれば、コロナ禍は金属加工業の閉塞感を打破するチャンスになるかもしれないと考えた。
まず、株式会社村井の教育事業を強化した。会員企業の採用や社員研修、エンジニアリング人材の育成に力を入れた。会員企業と取引先メーカー間の価格交渉や取引強化のサポートも行った。あわせて補助金の無料サポートも開始した。コロナ禍で雇用調整助成金など国や自治体の補助金が拡充されたが、事業を2~3人で行っている中小企業は申請をする暇がないし、申請したくてもやり方が分からない。そこで企業訪問をして申請方法を無償で伝授した。何年も先の見通しや計画を立てている中小企業はほとんどないのが現状なので、今後も仕事や生活が継続できるよう補助金を活用してもらいたいと思ったからだ。
協会では会員企業による受注アライアンス(協力)チームを結成した。会員は鋳物、製缶、金型など8つの加工アライアンスチームのいずれかのメンバーになっているが、受注を受け身ではなく直接注文を取りに行くスタイルに変え、自社で出来ないものをチームでシェアすることにした。会員には顧客情報を共有し、メンバーが訪問した会社や保有設備などのリストを作ることを要請、大手企業と取引を始めたい会員がいれば、その大手に縁故を持つ会社が中間マージンなしで繋ぐなど、会員の取引先を増やすよう努めた。
強調したいのは会員企業に部品製造や加工依頼ができる検索ポータルサイト「みつツク」の開設だ。文字通り「作る、見つける」サイトで、誰でも簡単に加工品の依頼ができて、受発注ともに仲介手数料が無料のシステムだ。同サイトでは「副資材発注管理自動エクセル」の無料配布も始めている。通常の資材発注は、エクセルを作り、注文書を作り、PDF化するなどの手間がかかるが、このアプリならワンクリックで自動発注ができる。
3.今後はどのように展開していく予定ですか
来年5月、第1回事業再構築補助金で採択された切削加工の教育研修センターが岐阜県に完成する。この施設でリアル研修のほか、オンライン研修も実施して、会員企業のマネジメントやエンジニアリング分野の人材育成にさらに注力していく。2023年を目途に社員を現在の5人から20人規模に増やし、研修では勝てる商品の提案力だけではなく、人材不足や資金調達など金属加工業界全体が抱えている問題の解決策も提案していくつもりだ。
中部部品加工協会は日本のモノづくりの中心である「中部」発信の組織として発足したが、いまでは日本全国、海外からも活動内容の問い合わせが入ってくる。いずれは会員企業全社が上下関係のない製造業プラットフォームを構築し、自由でオープンなコミュニケーションを図り、世界中のニーズに対応できる組織になれたら、と思っている。
企業データ
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