同社は1934年、塩竈(しおがま)で創業した須田商店が前身。その後、1970年に有限会社松島蒲鉾本舗が設立された(1995年に株式会社化)。塩竈工場で笹かまぼこを中心に魚肉製品を製造し、国内屈指の景勝地・松島にある総本店などで販売を行ってきた。
しかし2011年3月11日、東日本大震災で店舗・工場ともども被災。幸い人的被害はなかったものの、とくに塩竈工場は建屋1階天井ほどの高さの津波に襲われ、生産設備は壊滅状態となった。震災翌日、当時社長だった須田展夫氏とともに工場を訪れた朱氏は、あまりの悲惨な状況を目の当たりにして無力感を覚えた。ところが須田氏はむしろ開き直った気持ちで、「ゼロからやり直しだね」と笑いながら話したという。「その一言でみんな勇気づけられ、気持ちのスイッチが切り替わった」と朱氏は振り返る。その後、お中元シーズンを念頭に「3カ月後に生産を再開する」との目標を設定した。
かねてより塩竈工場の老朽化が課題となっていたこともあり、同社はいち早く新しい生産設備の導入を業者に発注。資金も自社で手当てするとして復旧に向けて動き出した。その後、施設・設備の復旧費用の4分の3を補助するグループ補助金制度が新設されたため、同社も申請し、交付を受けた。また、準社員やパートを含めて120人ほどいた従業員の大部分は、雇用保険の特例措置を活用できるよう一時的な離職扱いとした。残った10人ほどで工場や店舗の片付け作業に取り掛かったが、「離職中の人たちがボランティアで手伝いに来てくれ、本当に助かった」(朱氏)という。こうした素早い立ち上がりとチームワークによって目標どおり6月10日に工場で生産を再開。店舗での営業も順次始まり、離職していた従業員は全員復職した。