BreakThrough 企業インタビュー
大勢の見守り対象者が「どこにいるか」を同時に把握し、介護現場を支える【株式会社NESI】
2018年 3月 2日
学ぶべきポイント
要素技術をニーズに特化して製品化した企画力
新たな事業の柱づくりを目指す企業姿勢
厚生労働省による2025年に向けた介護人材の需給推計によると、需要見込み253万人に対して37万人以上が不足するとされている。こうした状況下にあって、介護現場の業務を合理化するさまざまなIT商品が登場し始めている。株式会社NESIが開発する「アイズ」は、見守り対象の居場所などを正確に把握することで見守り業務を効率化してくれる新しいセキュリティシステムだ。企画段階では研究施設等における外来者の動きを把握するセキュリティ用途を想定していたが、上記のような介護業界における強いニーズに着目し、介護の見守り用途に特化する形で開発が進められてきた。
BLEビーコンという小型のBluetooth端末を見守り対象者が携帯し、館内に設置した受診装置で検知・分析して建物図面や敷地図上にわかりやすく表示。現在位置だけでなく、移動の履歴や滞在時間も把握することで、トラブルを未然に察知できる。見守り支援についてはさまざまなシステムが登場してきているが、アイズの特徴は大勢の対象者を同時に「見守る」ことができることである。30人以上を同時に把握でき、自由に設定できるエリア(常在、進入禁止、境界線)を見守って変化を電子メールで知らせてくれる。
検知した情報は、すべてパソコンやタブレットのブラウザで見ることができる。タブレット程度の画面サイズがあれば十分に情報を確認できるという。現在位置を確認するだけでなく、過去から現在までの位置情報と同席者数を一覧表示でき、介護分野だけでなく広く警備・警護の用途で見守り、業務効率化、人員・設備の最適化などを支援してくれる。サービスの利用については、BLEビーコンや受診装置を購入する必要はなく、インターネット環境やパソコン等があればあとは機材費用込みで利用できる。見守り対象の増減や必要な期間に応じた柔軟な運用が可能だ。
見守り対象者の動きを時系列で追いかけられるので、例えば「一定時間動きがない」といった不自然な状態もシステム的に判断できる。また、テレビカメラやドアセンサーといった他のシステムと連携させれば、これまでになかった強固な見守り環境を実現することも可能。アイズは既にシステムは完成し、現在は試験的にいくつかの施設に導入してデータ採取を行っている。そして今後はいよいよ市場投入へ向けて、本格的に準備を進めていくことになっている。
株式会社NESIは創立以来、30年以上にわたって原子力分野における計算機の運用やサポート、システム開発、技術情報の管理といった総合情報システムサービスを主要な業務としてきた。そして新たな取り組みの一つとして、この位置情報測位技術によるソリューション提供をスタートさせた。見守りに特化し、「同時」「多数」を対象にシステム化した発想はユニークだ。本格的に市場投入されれば、介護の現場を大きく変えていく可能性を感じさせてくれる。
企業データ
- 企業名
- 株式会社NESI
原子力関連の法人や企業を主要なお客様として、ソフトウェア開発、ネットワークの設計・運用・保守、情報技術に係る技術支援や人材派遣、産業用ロボットの開発及び販売、構造解析、流体解析等の科学計算・数値解析、コンピュータ関連OA機器の販売等々、幅広い分野に事業を展開しております。