売上アップ取り組み事例集
協力と外部資源の活用が原動力。開業支援で規模の利益獲得(事例3回目)
文:鈴木佳文(中小企業診断士)
店舗販売もやるべき手は打ちつくし、販路開拓にも現状のままでは限界が見えて来ました。広告を買い、通信販売で売り上げが伸びても、手元のお金が増えて行きません。売上が伸びることに着目して通信販売用の製造拠点を作ったものの、思うように採算が合わず結局は閉鎖することに。
助言者の必要性を感じ、中小企業診断士の支援を受けながら経営のレベルアップを図る事にしました。今は、さまざまな危機を乗り越え、成り行きで始めていた『開業支援』を、より積極的に展開することに力を注ぎ始めています。
パートナーショップの存在が交渉力をアップ
店長のこだわりの一つは、通常の大判焼き店では使っていない品質の高いミックス粉。通信販売用に冷凍をしても品質が落ちません。粉の品質にこだわる店長は、粉のブレンドについて研究。仕入先を開拓し、研究したブレンドの粉を仕入れられるように交渉を重ねました。
結果、自店のブランド名を冠した『ひなさくミックス』の取引開始にこぎつけました。開業支援をしたパートナーショップに粉を卸販売していることが評価されたのです。
パートナーショップへの材料提供価格を大きく引き上げずに済むよう仕入先に交渉する際にも、パートナーショップと連携していることで規模の利益が働きました。
専門家の知恵を活用
店長は、事業の範囲を拡大して行くに伴い、戦略を考える余裕が不足している事に問題意識を持っていました。通販事業の拡大を断念してから、専門家のアドバイスを受けることに。商店街を支援している中小企業診断士に依頼し、企画書などの作成支援を受けるとともに、新規取引先との交渉に立ち会って貰うなど、徹底的に専門家を活用しました。
依頼する資金の捻出が厳しいので、商工会議所の専門家派遣プログラムを利用するなどして、自店の負担を軽減しました。専門家のバックアップがあることを取引先に示すことで、信用力を高めることに成功。現在は、開業支援のパッケージのブラッシュアップに各種専門家のアドバイスを取り入れています。
前に進む姿勢を示す
店長の周りには、さまざまな専門家や事業家がサポーターとして集まっています。「なぜ、手伝ってくれるのか良く分からないけれど、本当にありがたい」という店長。人的なネットワークを広げている事は勿論ですが、サポーターが増える大きな要素は、その姿勢にあります。
悪い結果を必要以上に想像せず、良いと思ったことは直ぐに行動に移し、支援してくれた人に結果を報告しているのです。いまも新しい取り組みをスタートし、サポーターの支援を受けながら少しずつ形を作っていっています。
今回ご紹介した事例から見える、売上アップのポイントは以下の3点です。
1)仲間との連携を力にする
規模の利益を獲得する為の手段として『共同仕入』が良く知られていますが、複数の店舗が連携して動くことで大きな力になります。同業者組合といった既存の組織に参加することも一つの方法ですが、自店が主導権を持って進めることは容易くはありません。
既存の団体に頼り過ぎることなく、自らが手を組める仲間を増やしていくことでさまざまな可能性を高めましょう。
2)専門家や他業種とのネットワークを活用する
店舗について最も詳しいのは、日々の活動を行っている店長に他なりません。反面、自店のことに集中し過ぎ、視野が限定的になることがあります。専門家や他業種とのネットワークを持つことで、新たな気付きや視点を得ることができます。商工会議所や自治体などで相談窓口の開設や専門家の派遣を行っており、このような制度を積極的に活用してみましょう。
3)他店や異業種と手を組むことを意識する
イベントなどに参加して連携ができる相手を見つける為には、自分に何が出来て、相手の役に立てるのかを考えておく必要があります。ただ、出会うのではなく、最初から手を組む可能性のある相手かも知れないと意識しておくことで、機会を逃さずに連携につなげて行きましょう。
ひなさく堂が困難を乗り切ってきた原動力の一つは、「協力」と「外部資源の活用」です。まだまだ課題は山積している状態ですが、自分に出来ることと出来ないことを認識して、不得意な分野は外部に任せることで店長の機動力が向上しました。一人では出来ないことも、仲間と協力して取り組むことで道が拓けるのです。
企業データ
- 企業名
- 有限会社ミラクル(ひなさく堂)
- Webサイト
- 代表者
- 石井直美(店長:石井裕)
- 所在地
- 東京都中野区野方6-23-13
- Tel
- 03-3338-8074
- 事業内容
- 大判焼きの製造・販売、卸
掲載日:2012年2月28日
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