中小企業応援士に聞く
コロナ禍は社会貢献のチャンス、社員と信頼関係醸成で【株式会社生活の木(東京都渋谷区)代表取締役社長CEO・重永忠氏】
中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。
2021年1月28日
1.事業内容をおしえてください
一貫流通体制のもとハーブ・アロマテラピー製品の原材料の調達から企画・開発・製造・物流・販売・カルチャースクールまでをすべて自社で行う「オール自前主義」で事業を行っている。初代は写真館、2代目は陶器製造販売、そして3代目の自分はハーブ・アロマ製造・販売と、事業承継をきっかけに第二創業(後継創業)を繰り返してきた。
昨年の緊急事態宣言下では、2カ月間、全国の110の直営店舗が休業になった。店舗を閉めている間に、自分自身が語った動画を作成し、2つのことを社員にお願いした。一つは、健康体でいること。二つ目は、復帰した後にどうお客様を感動させたいか、できることを考えておくこと。仕事としてこの二つに取り組んでください、雇用は絶対に保証します、給与は100%支給しますと全社員に直接メッセージを発信した。社員からは安心した、不安が吹き飛んだという声があがり、結束力や信頼関係が強まったと感じている。
コロナ前から、クラウド化による情報の社内共有化のシステムはできていたが、スマートフォンを社員に配布し、昨年9月から10月には全国の店長とリモート面談を実施した。これまでは全国の店舗を出張して各地の社員とミーティングやコミュニケーションを行っていたが、代替手段ではあるが、オンラインでのミーティングでも心は一つだと思った。
東京・原宿表参道の本社で指示を出しているのが経営者の役割ではない。現場の声を聴き、会社を家族である社員が幸せになるための場所にしていくために、新たな価値を創造する様々な手を打っていくことが経営者の役割ではないか。
2.強みは何でしょう
コロナを経てわかった自社の強みは(1)複数の販売チャネルをもっていること(2)オウンド(自前の)メディアをもっていることだ。
(1)では直営店、オンラインストア・通信販売、卸先の販売チャネルがあるが、昨年4月はオンラインストア・通信販売の売上が前年比で669%にもなった。物流が大変だったが、社員には交代制の週3日勤務で対応してもらい、本社に集中する電話を岐阜にあるセンターに回すなどの工夫も行って社員全体で補完して対応した。
(2)では、自社HP、メルマガ、FacebookやInstagramなどのSNS、YouTubeなど多様なメディアをコロナ前から既に運営している。コロナ前は店舗での販売がメインでしたが、コロナ禍ではSNS等での拡散から顧客層の広がりが生まれ、YouTubeやSNSで発信したものがTVや雑誌などのメディアで取り上げられることが増えた。なかでもアロママスクスプレーは約82万本のヒットに繋がった。この商品は元々、花粉症の方をターゲットに開発していたマスクスプレーを転換して、New Normal生活に対応した商品に改良したものだ。既存商品を世の中のお役に立つように改良して提供していくこと、経営のスピードを上げることが大事だ。
今後は社内にルーフトップスタジオを作る予定だ。そこでオンライン中継や動画の撮影などができるようにして、生活の木が「Wellness & Well-being」のプラットフォームとなることを目指していきたい。コロナ前から社員を第一に考える家族経営をしてきたこと、社員が「自分事」として働く仕組みをつくってきたことが、いま経営のスピードを上げることができていることの要因だと思う。
3.課題はありますか
社員とは2つの約束事をしている。一つは「コロナのせいで」と絶対に言わないこと、二つ目は「ほんとうだったら○○〇だったのに」と考えないことだ。これが「ほんとう」のことであり「現実」なのだ。むしろ今この現実の中において自社がお役に立つ時で、貢献のチャンスであると考えることがWITHコロナ社会においての経営・マーケティングの本質だと思う。
今後の生活環境や社会環境を予測し、リブランディングを行った。創業から10~20年度ごとにリブランディングを行ってきたが、2020年はちょうどその年だった。「Wellness & Well-being」はコロナ禍前に考えていたブランドメッセージだったが、ちょうど時代に合ったメッセージになったので、まさに創業以来の「進取の気性」を体現した独創的なことを行うチャンスだと考えている。
4.将来をどう展望しますか
私の後継創業者への道は、中小企業大学校東京校の経営後継者研修を受講したことがターニングポイントの1つになった。
全国から経営後継者候補が集まる10カ月間全日制の研修で、後継創業者になるため、様々な分野から自社分析をするカリキュラム構成だ。研修中は昼間の講義が終わると、当日夜や翌朝自社に戻り、研修で習ったことを直ぐに自社で確認・検証することを繰り返していた。現在でも、開講記念講演での講義やOB会の会長としての活動を通して受講生の方にメッセージを贈っている。コロナ禍でもOB間での交流や情報交換ができるよう、若いOBが中心となり「後継創業ネットワーク」というFacebookグループも立ち上げた。
私はこの経営後継者研修6期を受講したが、息子達も「後継創業者」になってくれるだろうと期待して、長男は36期、次男も現在開講中の41期に派遣し、私と同じ体験をさせている。
私は父親から進学のことから自社を承継するに至るまで全て自分で決めさせてもらった。取り扱い商品を陶器からアロマ・ハーブへ転換するときも「そろそろだと思っていた」と言ってくれた。今度は自分が事業を渡す立場になったが、父と同じように、息子2人にも何事も自分自身で決めることを促して育ててきたつもりだ。
成功体験よりも大事なのは決断体験。小さな「決める」を積み重ね、大きな決断ができるようにしていくことが大事だ。将来的には、息子2人にそれぞれ国内と海外に役割を分け、兄弟経営の新しい形を作っていって欲しいと思っている。
企業データ
- 企業名
- 株式会社生活の木
- Webサイト
- 設立
- 1967年12月
- 代表者
- 重永忠 代表取締役社長CEO
- 所在地
- 東京都渋谷区神宮前 6丁目3番8号
- Tel
- 03-3409-1781
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