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中小企業は、ロボット技術で自社製品の高付加価値化を【千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」所長・古田貴之氏】<連載第3回>(全4回)
2020年 8月13日
中小企業は「ロボット」にどのように関わっていくべきかについて、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」所長の古田貴之氏に伺う本連載。第3回では、ロボット関連事業に参入する方法と留意点を紹介します。
ロボット事業に関わる方法は一つではない
中小企業がロボット事業に関わる。そう聞くと、まず思い浮かぶのがロボット開発を手がける大手メーカーに自社の技術や部品を供給するという方法ではないでしょうか。
「確かにそれも一つの方法です。センサー、知能・制御系、駆動系などを要素として持つロボットには、機械、電気、ITなどさまざまな技術が必要です」
実際、人の身体の動きでロボットを制御するfuRoの『WIND Robot System』の開発は、会社の大小を問わず、回路設計、基盤、CPUなど各分野の先頭を走るものづくり企業の知見を結集する形で行われました。
「自社の技術・製品の売り込み先としては、身軽で動きの速いベンチャー企業なども有望でしょう。ただ私が中小企業の皆さんにぜひ取り組んでほしいのは『ロボット技術を活用した自社製品の価値向上』です」
具体例として、古田氏は大手カメラメーカーにCCD※を卸していたセンサー会社のケースを教えてくれました。
「CCDは、デジタルカメラで立体の対象物を2次元画像として処理し、デジタル情報として記録します。同社はこのCCDに、AIを載せた半導体チップをつけてモジュール化。そのモジュールを使って奥行きを計測できる2眼カメラを作り、撮影しながら自動で地図を作成できるという機能を加えました。この機能は建設現場などで非常に重宝されています」
※Charge-Coupled Deviceの略。日本語では電荷結合素子と訳され、各種カメラや光検出器などに広く使用されている個体撮像素子のひとつ
“ものづくり”ならぬ“ものごとづくり”を目指す
アジア企業の成長などにより、価格と品質だけでの勝負が難しくなった今、日本企業は他国が真似できない、独自の高付加価値製品を開発する必要があると古田氏は力を込めます。
「その高付加価値を生む鍵にロボット技術がなり得る。私はこう考えています」
ではその高付加価値を持つ製品を生み出す秘訣はなんでしょうか。古田氏は「“ものづくり”ならぬ“ものごとづくり”を考える」と指摘しました。
「例えばiPhoneは、従来の電話の機能に、アプリケーションとネットワークを使った多彩なサービスを付加し、新たな“ものごと”としての価値を作り出して大ヒットしました。ロボット技術は、究極的には人間の衣食住をどうサポートするかがテーマ。技術を使って未来を創るつもりで、新しい世界のグランドデザインを描いてみてほしいです」
“共創”によるロボット事業参入も
自社製品のロボット化に取り組む場合、製品サポートなども踏まえて、自社内にロボット関連ノウハウを持っておいた方が好都合であるのは事実です。ただ今の時代、自社にロボット技術がないからといって、それが諦める理由にはなりません。
「今、世の中は、独創ではなく、共創の時代に入っている。現場を知って問題を抽出し、どんな製品・サービスが完成すれば新たな価値を生み出せるかを考えた後は、その分野の専門家の力を借りればいい。重要なのは、誰に何ができるかを把握し、自社にとって必要な人とつながることです」
次回の最終回では、この連携の際のポイントや中小企業に期待することについて伺います。
連載「中小企業は「ロボット」にどのように関わっていくべきか」
- 第一回 企業の競争力強化の鍵を握る「ロボット」とどうつきあうか
- 第二回 現場を知り、使う側の視点を大切にし、そして技術を理解する
- 第三回 中小企業は、ロボット技術で自社製品の高付加価値化を
- 第四回 スピード感のある中小企業はイノベーションとの相性がいい
古田 貴之(ふるた・たかゆき)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」所長
1996年、青山学院大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程中途退学後、同大理工学部 機械工学科 助手。2000年、博士(工学)取得。同年、科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーとして、ヒューマノイドロボット開発に従事。2003年6月より、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo(Future Robotics Technology Center)」所長。気鋭のロボットクリエーターとして世界的な注目を集め、政府系ロボット関連プロジェクトにも多数参画。企業連携も推進し、新産業のシーズ育成やニーズ開拓に取り組む。
取材日:2020年 5月22日
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