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かつて「厄介者」扱いをされていた廃棄瓦から「新価値」を発見【株式会社エコシステム】
2020年 11月 26日
製品名=廃棄瓦を利用した「K -グランドシリーズ」「瓦チップ」「かわらかべ」
ヒートアイランド現象の抑制や都市型洪水のリスク低下に
日本の建築物に多く使われている瓦。建築物の解体や屋根の葺き替えなどで発生する大量の廃棄瓦は、重量があり、処理もリサイクルも困難で、以前は建設・解体現場の「厄介者」だった。
この廃棄瓦の有効活用を目的に生み出されたのが、株式会社エコシステムの「K -グランドシリーズ」だ。瓦を粉砕処理して砂利や砂製品化し、道路等の舗装材の骨材として活用。保水性や遮熱性などに優れ、アスファルトなどと比べると夏場は10℃以上路面温度が低下するため、ヒートアイランド現象の抑制が期待できる。一方で、透水性という機能を付加することもでき、近年多発しているゲリラ豪雨による「都市型洪水」のリスクの低下にも貢献できる。
同シリーズのほかに、瓦砂利を園芸用資材などに活用する「瓦チップ」、放湿・吸湿性の高い瓦砂を建築物の壁に利用する「かわらかべ」も製品化。かつての「厄介者」から多くの新価値が誕生している。
多孔質性を有効活用し多様な機能の付加に成功
多様な機能性は、瓦の素材が多孔質であることがポイントだ。多孔質=表面積が大きく、空間が多くあるため、温まりにくく、かつ雨が降っても持続的な保水効果が期待できる。また近年の都市型洪水は、局所的な激しい降雨が側溝などを伝ってすべて河川に集中することにより引き起こされるケースが多いが、同シリーズを使用していれば道路自体が雨水を吸収。河川への流出を抑制し、地中へと返すことができるため、自然のリサイクルシステムの改善にも寄与できる。
通常、多孔質素材は強度が出にくくなるため舗装材の骨材には向かないが、同社では「エコに貢献することをビジネスに」という強い思いのもと、社会のエコに対する関心がまだそれほど高くなかった1998年頃に同シリーズなどの研究開発を推進。地元の金沢工業大学や北陸先端科学技術大学院大学のほか、数十社に及ぶ企業との共同研究を重ね、改良を進めてきた。
廃棄瓦のリサイクルノウハウを展開し、世界進出も視野に
同製品は、金沢城公園や日比谷公園などで使われているほか、年間に全国で5000〜2万平米ほどの施工依頼があるという。ユーザーからの反響も好評で、継続依頼も多いが、廃棄瓦は重量物であるため、輸送にもコストがかかる。そこで同社は、瓦のリサイクルノウハウを全国の企業に展開し、フランチャイズ化を進行中。また、瓦と似た性質を持つ「レンガ」のリサイクルにも成功している。さらに、舗装材を各地で生成できる「車載式生コンプラント」も開発中。この「リサイクルノウハウ」と「生コンプラント」を武器に、今後は世界の瓦文化のある国と、さらに市場性が大きいレンガ文化のある国へも進出していきたい考えだ。
同社が提供する製品やノウハウに加え、「厄介者から新たな価値を生み出した」というストーリーもまた、多くの企業のブレークスルーを手助けするかもしれない。
取材日:2020年10月19日
企業データ
- 企業名
- 株式会社エコシステム
1994年創業。廃棄瓦のリサイクル事業を提携パートナー企業とともに推進。透水性や保水性、遮熱性などの機能を持たせた舗装材を、現在では全国の33都府県において提供することができる。