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電力の待機ロスが少なく、エネルギー使用の最適化に貢献【治部電機株式会社】

2020年 3月 24日

低圧アモルファス変圧器
太陽光や風力など再生可能エネルギーシステムの稼働に適した低圧用の乾式変圧器
製品名=持ち運び可能な非常用発電システム「EPGS」

アモルファス合金を採用し、待機ロスを大幅に低減した変圧器

治部電機株式会社の「低圧アモルファス変圧器」は、電圧変換における無負荷損失(電力の待機ロス)を大幅に縮小できる低圧用の乾式変圧器だ。コア部分に使用される素材を、従来のケイ素鋼板からアモルファス合金に変えることで、電力の待機ロスが5分の1〜10分の1に減少。特に20年以上変えていない変圧器を変更した場合のメリットは大きく、ライフサイクルコストの大幅な圧縮が期待できる。

こうした省エネ効果が高く評価され、平成29年に兵庫県尼崎市の「あまがさきエコプロダクツ」の認証を受けている。

“非結晶”というアモルファス合金の特徴を有効活用

同製品のコアに使用されたアモルファス合金とは、鉄やケイ素、レアメタルなどを原材料とし、溶融状態から急速に冷却することで作られる非結晶の個体。非結晶であるため原子が自由に動き回ることができ、通電の際のエネルギー損失が少なくなるという。さらに、板厚は約25ミクロンと従来のケイ素鋼板に比べ10分の1となるため、渦電流の発生も低減。このアモルファス合金の特性と、板厚の薄さにより、同製品の省エネ効果が実現されている。

同製品などが分類される「低圧用の乾式変圧器」群には、高電圧用の変圧器には設けられている省エネ基準がないため、業界全体として省エネ化には消極的だった。ただ、同社は再生可能エネルギーが根付くためには低圧用の変圧器の省エネ・高効率化は不可欠と考え、この領域の省エネ化を独自にスタート。アモルファスをコアとして使用するには多くの問題にぶつかったが、試行錯誤の末に何重にも重ねあわせて多層にしていく「ラップコア方式」を確立し、独自の価値を持つ同製品を完成させた。

全国へ普及させることを目的に製造ノウハウを公開

同製品は、再生可能エネルギーなど発電量の変動が大きく、平均発電量が低い発電システムと好相性で、すでに太陽光発電や風力発電などの関連企業に多く導入されている。今後は、乾式だけではなく、モールド変圧器や油入変圧器など他の方式を用いた変圧器にも、「低圧アルファモス変圧器」シリーズを拡大していく予定という。

そして同社が全国各地の課題を解消するため、同製品の設計・製造ノウハウを公開していることも大きな特徴と言えるだろう。これからは、他社や外部機関とのオープンイノベーションによって社会課題を速やかに解決していくのが世界基準という時代。同社の技術がどこかの見知らぬ企業の悩みを解決していた──というエピソードに出会う日も、そう遠くはなさそうだ。

取材日:2020年1月23日

企業データ

企業名
治部電機株式会社

1964年創業。産業用変圧器メーカーとして50年以上の歴史を持ち、これまでに蓄積した高い技術力と製作実績5万件以上のデータベースを元に、ユーザーのご要望にあった製品を「短納期」で提供する。また市場ニーズを先取りした開発にも取り組み、チャレンジ精神と幅広い業種と共に開発を進める柔軟性を持つ。