中小企業NEWS特集記事
「道北バス」人材育成の現場から
この記事の内容
- 路線バス利用者減少に対応し、都市間バスの運行に注力
- 外国人含め観光客増加で、翻訳アプリを配備してサービス強化
- 一昨年から管理職が大学校の研修受講開始。経営環境変化に即応
「これまでと同じことをやっていては事業として成り立たない」─。こう危機感を表すのは、北海道旭川市を拠点とする道北バスの大上修一代表取締役社長だ。
人口約34.5万を抱える北海道第2の都市・旭川市も人口微減が続き、同市で最大の路線数を持つ同社も「路線バスの利用客数は昭和40年代のピーク時に比べ、約3分の1に減った」。中高生らは少子化の影響で減り、高齢者も自動車で移動する機会が増えているためで、「輸送人員の減少に歯止めがかからない」(同)状況という。
そこで力を入れているのが、都市間バスだ。“ドル箱”路線ともいえる札幌市をはじめ、帯広、北見、釧路など主要都市や観光地を結ぶ11の路線を展開。観光地向けでは、北海道で代表的なガーデンが集中する旭川から富良野、十勝などを結ぶ「ガーデン街道」も運行。「都市間や観光地のネットワークはできており、一定の旅客数を確保している」(同)。
高速道路の延伸などによりインフラ拡充も進み、「一般道から高速へという流れが出てきている」。来春には新青森・新函館北斗間の北海道新幹線が開業。将来的には札幌まで伸びる予定で、「時間はかかるが、都市間輸送は拡充されていく」と予想される。
観光客の増加も追い風だ。平成26年度の観光客は5,377万人(道庁調べ)と3年連続で増加し、過去最高を記録。とくに外国人は154万人と、平成23年度比で倍増している。道北バスもこれに対応、観光路線の運転手や営業所の一部には16カ国語の翻訳アプリを搭載したスマートフォンやタブレット端末を配備している。
とはいえ、主力の路線バスの先行きが見通せないため、3年前に就任した大上社長は人材育成に乗り出した。それまで社外研修はやっていなかったが、「バス事業だけの論理ではなく、客観的な視点を持ってもらいたい」と、一昨年から中小企業大学校旭川校の研修受講を始めた。
これまでに22回にわたり、19人を派遣し、「課長以上はだいたい受講済み」(同)。研修後は感想や決意などをリポートとして提出させており、「各種の資格取得に合わせて受講する場合もあり、学ぶ意識が上がってきた」と、成果は上々のようだ。今年度も10人程度の派遣を予定している。
社外研修だけでなく、昨年からは月に1回、管理職を対象とした早朝研修も実施するなど、自ら学ぶ風土が定着してきている。
実際に経営管理者養成コースを受講した踊場稔洋常務取締役は、「異業種の若い人たちが真剣に経営を考えていることが刺激になった」と述懐する。研修委員会の委員長を務める橋本貴幸取締役整備部長も「私自身もいろいろなことを学べた。若手の係長らも意欲的になるなど、大きな効果がある」とし、本格的な研修プログラムやカリキュラム作成も検討している。
「従業員の生活がかかっているから、自信を持って働ける職場にするには、将来の見込みがなければならない」という大上社長。人材育成により、先を見据えた経営を実践。コアとなるバス事業をしっかり確立するとともに、そのノウハウを生かして新規事業などのプラスアルファを生み出すことを狙う。「時代の変化に対応できる体力をつけたい」という大上社長の目標に向かって歩み始めた。
企業データ
- 企業名
- 道北バス株式会社
- 資本金
- 9,000万円
- 従業員数
- 290人
- 事業内容
- 一般乗合・貸切旅客自動車運送事業など
- 創業
- 昭和19(1944)年