起業マニュアル

ネットショップ開店準備の進め方

ネットを介して商品を提供する場合は、ビジネスマッチングサイトを利用することが一般的ですが、自社でネットショップを持ちたいというニーズも根強く存在するようです。
本レポートでは、自社でネットショップを開店する際の準備の進め方を紹介します。

開店準備の進め方

インターネット通販を始めたいとは思っても、
「何を用意すればよいのか」「何から手をつければよいのか」と悩んでしまい、
なかなか実行に移せないという方も多いことでしょう。

実店舗をオープンする場合には、まずターゲットや品揃え、価格、サービスなどを検討して、店舗コンセプトを明確にするのではないでしょうか。店舗の設計にしてもデザインにしても、また什器の選定にしても、具体的な作業は、すべてこのコンセプトに基づいて進められるものだからです。そのうえで、出店場所を決め、設計・施工業者を選び、店舗の設計・デザインをして、建築や内外装に取りかかるはずです。

インターネット通販の場合も、インターネット上の店舗である「オンラインショップ」をオープンするわけですから、同じような準備作業が必要になります。 具体的には、以下のような流れで進めていくとよいでしょう。

(1)店舗コンセプトを明確にする

(2)必要な機材を揃える

(3)プロバイダーと契約する

(4)出店場所を決める

(5)ホームページを作成する

本項では(1)~(4)についてご説明していきます。

店舗コンセプトを明確にする

店舗コンセプトとは、簡単に言えば、

「何を」=扱う商品

「誰に」=狙う客層

「いつ」=営業時間

「どこで」=立地

「どのように」=商品の提供方法やサービスのスタイル

「いくらで」=価格設定

を具体化したものだと考えればよいでしょう。上記の6点を踏まえて簡潔かつ明瞭な言葉で表現すれば、自店のキャッチフレーズともなります。

コンセプトを明確にしておかなければ、店舗をオープンしても成功は期待できません。

すでにインターネット上には膨大な数のホームページが存在しており、現在も増え続けています。

オンラインショップも急速に増加しています。その中から自店のホームページを選んで見てもらい、商品を購入してもらうためには、あらかじめコンセプトを明確にし、

ターゲットとする消費者が魅力的だと感じてくれるようなホームページを作成する

ことが大切なのです。
また、インターネット通販とは、商品の紹介を実店舗に代わってホームページで行い、注文もインターネット上で受け、顧客の自宅など指定の場所へ配送するというものです。したがって、業種にもよりますが、一般的には実店舗の取扱商品すべてを紹介することは難しいでしょう。数多くの商品をただ並べても、1つひとつの商品の魅力が十分に伝わらなければ購入してもらえませんので、

自信をもって紹介できるお薦め商品だけに思い切って絞り込む

ようにします。さらに、その店ならではの商品(オリジナリティのあるもの)を取り扱うことが重要と言えます。どの店でも売っているような商品なら、わざわざインターネットで購入する必要はありません。他店では入手できないから、あるいは、他店よりおいしいから、安いから、品質がよいから、鮮度がよいからといった差別化商品だからこそ、購入してもらえるのです。また、成功しているオンラインショップの多くは看板商品をもっています。複数の商品を取り扱う場合も、看板商品を前面に押し出してアピールするようにしましょう。

なお、インターネット通販は、カタログなどの代わりに商品紹介をインターネット上のホームページで行うだけで、仕組み自体は通常の通信販売と変わりありません。そこで、通信販売を行う準備もしなければなりません。たとえば、

配送方法や決済方法を決めたり、返品やクレーム処理についてのルールを決める

必要があります。消費者にとって利便性の高い配送方法・決済方法を複数用意するのは、集客力を高めるためにも大切なことです。

必要な機材を揃える

インターネット通販を始めるためには、インターネット上にホームページという形で店をオープンしなければなりません。そのためには、以下の機材が必要です。

パソコン

まず、パソコンを用意しましょう。
家電量販店などのパソコン売り場には形も価格もさまざまなパソコンがずらりと並んでおり、「どれを選べばよいのか分からない」と頭を抱えてしまう方も多いようです。最近のパソコンは低価格であっても高性能ですので、

どのパソコンを選んでも基本的には問題ありません。

どうしても不安な場合は、売り場の販売員やパソコンに詳しい友人・知人に相談するのも1つの方法です。
ただし、

パソコンの基本ソフト(OS)だけはきちんと確認しましょう。

OSが異なると使用できるソフトも異なってきます。代表的なOSには、マイクロソフトの「Windows」、アップルコンピュータの「Mac OS」などがあります。

周辺機器

ホームページに商品の写真を掲載するため、デジタルカメラが必要になります。商品の写真は売り上げに影響しますので大変重要です。デジタルカメラで撮影した画像は画像編集ソフトなどを使って、簡単に修正・加工することができますが、照明器機を用意して本格的に撮影するのが望ましいといえます。

通常のフィルムカメラで撮影したプリント写真を使用したい場合は、スキャナーを使ってプリント写真の画像をデジタルデータに変換してパソコンに取り込みます。ネガ・ポジフィルムを取り込めるスキャナーもあります。カタログの写真などをホームページに掲載したい場合も、スキャナーを使用します。

そのほか、請求書や領収書などを印刷するにはプリンターが必要ですし、外出先で顧客からのメールに対応できるようにしたいと考えるなら、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル器機を用意するとよいでしょう。

受注データや顧客データが消えてしまうといった万が一のトラブルに備えて、ファイルのバックアップをとっておきたい(予備データを保存しておきたい)という場合には、DVDドライブやブルーレイ・ディスクドライブ、あるいは外付けのハードディスクなどが必要になります。

ホームページ作成ソフト

インターネットが普及し始めた初期(2000年前後)には、自分でページを作成するしかありませんでしたが、現在はブログ感覚でネットショップを構築することができるサービスとかネットモールを活用するのが一般的です。

しかし、どうしても自分ですべてを作成したい場合は、ホームページ作成のためのソフトが必要になります。

ホームページ作成ソフトは、

(1)ホームページのデザイン、レイアウトなどの外観を作成し、更新作業などを管理するための基本的なソフト

(2)インターネット通販に必要な機能を備えたソフト

に大別できます。

(1)は、自由なデザインのホームページを作りたい人にお薦めです。代表的なソフトとしては、アドビの「ドリーム・ウィーバー」、日本IBMの「ホームページ・ビルダー」などがあります。前者は世界中の多くのWebクリエーターから支持されているプロユースのソフトで、後者は、どちらかというと一般向けのソフトです。

(2)は、インターネット通販専用のソフトで、デザインのひな型(テンプレート)がついており、顧客管理や商品管理など豊富な機能を備えています。ただし、高機能であるがゆえに、プロバイダー(後述)によっては一部の機能が使用できないということもあり得ますので注意してください。代表的なソフトとしては、インクリメントP「ネットショップ・オーナー」、インフォテクニカ「It's eShop」などがあります。

体験版を用意しているメーカーも多いため、いくつかのソフトを試用してから、自分が使いやすいと思うものを選ぶようにするとよいでしょう。

プロバイダーと契約する

インターネットというのは、複数のコンピュータ・ネットワークをデータ通信専用の回線(専用回線)を使って常時接続した世界規模のネットワークです。しかし、すべての利用者が専用回線を引いて常時接続することは不可能です。そのため、

インターネットを利用するためには、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー、以下ではプロバイダー)と契約する必要があります。

最近では電話回線を使ったADSL接続から、光ファイバーやケーブルテレビの通信網を使った大容量で高速の接続サービスに移行しており、今後はこちらが主流になるとみられています。

プロバイダーの選択にあたっては、

通信速度は速いか

料金体系はどうなっているか、どんな料金プランがあるか

電子メール受信ボックスの容量は十分か

サポート体制は整っているか

注文を受けるためのソフト(フォームメール)が使えるかどうか

といった点をチェックしましょう。

出店場所を決める

ホームページを公開するためには、ホームページを構成するファイルを「サーバー」と呼ぶコンピュータに保存しておかなければなりません。ホームページが個別の店舗だとすれば、サーバーは出店場所にあたります。これには、大きく分けて以下の4つの方法があります。

(1)プロバイダーのホームページサービスを利用する

(2)オンラインモールに出店する

(3)レンタルサーバーを利用する

(4)自店に専用回線を引いてサーバーを置く

このうち4については、コスト負担が大きいうえ、サーバーの保守やセキュリティ体制などの高度な知識や技術が必要となりますので、以下では(1)~(3)についてご説明します。

プロバイダーのホームページサービスを利用する

プロバイダーによっては、ファイルを保存するスペースを無料で提供してもらえます。また、ホームページサービスを別途有料で申し込む場合もあります。
ただし、プロバイダーのホームページサービスを利用する場合は、

ホームページの商業利用を認めているか

ホームページ容量は十分か

などについて、あらかじめ確認しておく必要があります。プロバイダーのサービスは主に趣味などで利用する一般ユーザーが対象であり、本格的なオンラインショップの利用には適していない場合があるのです。
こうした点については、各プロバイダーのホームページでサービス内容を確認したり、パンフレットを取り寄せたりするほか、インターネット関連の書籍や専門誌の記事も参考にするとよいでしょう。

オンラインモールに出店する

オンラインモールとは、複数のオンラインショップを集めたインターネット上の商店街(またはショッピングセンター)のことです。オンラインモールの運営主体はモール運営企業から、プロバイダー、信販会社、自治体、商工会議所までさまざまですが、出店者に対してホームページスペースの提供やホームページ作成機能の提供、決済・配送機能の提供などの支援サービスを行っているモールが少なくありません。

オンラインモールに出店する場合、

(1)インターネット接続サービスについてはプロバイダーと契約し、出店についてはオンラインモールの運営主体と契約する

(2)オンラインモールを運営しているプロバイダーと契約する

という2つの方法があります。

オンラインモールに出店するメリットは、技術面・運営面での支援が受けられること、消費者の信用度が高まることに加え、モールの知名度を利用できること、相乗効果によって集客力が高まることなどです。一方、出店料がかかる、モールが用意した決済方法以外は使えないなど機能が制限される場合がある、といったデメリットもあります。
オンラインモールに出店する場合は、店舗数(規模)や出店要件、出店に要する金額、サービス内容などが運営主体によって大きく異なりますので、十分に検討するようにしましょう。

レンタルサーバーを利用する

サーバーはレンタルすることもできます。レンタルには専用と共有の二通りの形があります。専用の場合は、コンピュータを一台丸ごと借り、そのメンテナンスや管理はサーバーレンタル業者に任せることになります。共有は、サーバーのハードディスクのスペースを、複数の人間で間借りするというものです。一戸建てとマンションの違いのようなものです。当然、前者のほうが費用がかかります。
また、レンタルサーバーを利用するには、

(1)インターネット接続サービスについてはプロバイダーと契約し、サーバーのレンタルについてはレンタルサーバー業者と契約する

(2)サーバーのレンタルも行っているプロバイダ、または接続サービスも行っているレンタルサーバー業者と契約する

(3)インターネット上の住所に当たるドメインを取得する(レンタルサーバー業者に依頼できる)

という3つの手順が必須です。

レンタルサーバーの利点は、ホームページの容量が大きいこと、複数のメールアドレスを使用できること、注文を受けるために使用するCGIというプログラムが自由に利用できること、セキュリティ対策が充実していることなどです。また、ホームページに対する利用者のアクセス状況を詳細に記録したアクセスログを無料で公開している業者が多いため、どのページに何人のアクセスがあったのか、どの時間帯のアクセスが多いか、といった情報を分析し、売上拡大に役立てることもできます。

独自のドメイン名が利用可能なことも大きな魅力です。ドメイン名とは、「○○.com」「○○.co.jp」などという名前のことです。店名などを自由に付けて登録できる(同名で他社が登録済みの場合は利用できない)ため、消費者に覚えてもらいやすいといえます。ドメイン名の登録手続きなども、レンタルサーバー業者に依頼することができます。

各社の料金プランやサービス内容を比較検討して自店に適した業者を選びましょう。

最終内容確認 2018年2月