起業マニュアル
自己資金の準備
開業資金を準備しようとする場合に、どれだけの自己資金が用意できるかは、借入などその他の資金調達とも関連し、非常に重要なポイントとなります。
ここでは、具体的に必要な自己資金額の目安や、自己資金を計算する際のポイントなど、開業に必要な自己資金について説明します。
自己資金額の目安
具体的な自己資金額の目安ですが、必要な開業資金総額の3割~5割程度を準備できるようにしましょう。
これは、借入と関連するのですが、創業関連の有利な制度を利用して融資を受けようとする際、ある程度の自己資金割合が定められていることが多いからです。
また、返済負担の面からも、3割~5割程度の自己資金は必要と考えられます。
例えば、開業当初1,000万円の資金が必要で、毎年200万円の利益を上げる事業を計画したとします。
1,000万円全額を5年返済で借り入れた場合、1年ごとの返済は200万円となり、毎年の利益額全てで返済を賄うことになります。金利も必要ですし、売上の波もあるでしょう。税金の支払も必要です。年あたり200万円以上の利益を計上できれば良いですが、少しでも下回れば資金繰りが行き詰ってしまいます。
これが全額の借入ではなく、自己資金と合わせ500万円~700万円の借入だったとしたら、資金繰りも随分と変わってくるはずです。
どのような計画を立てるかにもよりますが、やはり実際の経営をイメージした場合、ある程度の自己資金は必要と考えられます。
自己資金を計算する際のポイント
実際に保有している預貯金の全てを自己資金としてはいけません。
事業の資金と個人の資金をしっかりと分けるのが理想ですが、開業当初は事業の収支が個人の収支に直結することが普通です。事業資金に余裕を持つのは当然ですが、個人の生活費についても同様に余裕を持っておく必要があります。
食費や教育費などの生活費のほか、各種の個人ローンがあれば、それらの資金についても3ヶ月分程度は準備できると安心です。
手持ち資金の全てを自己資金としてしまった場合、事業として資金繰りは楽になりますが、個人としての生活が厳しくなってしまう可能性があります。その結果、結局は事業資金から融通することになり、余計な手間が掛かってしまいます。
自己資金は「やる気」の指標
自己資金は、事業に対する「やる気」を証明する手段としても有効です。事業を始めようとすると、様々な場面で、事業に対するあなたの「やる気」を見られる場合があります。
多くは借入の場合ですが、相談の際に「多少なりとも自己資金が貯まっている」人のほうが信頼はあると判断されます。逆の立場になって考えてもらえれば分かると思いますが、金融機関もリスクを負って貸し出します。貸付の相手方が「自己資金を全く準備していない」人だと、よほど計画が良いものでない限り、リスクを負ってまで協力しようとは思わないでしょう。
また、借入に限らず、不動産の入居審査などの際も、通帳履歴などの情報を積極的に開示することで、話が良い方向に進む場合もあります。
開業当初は信頼を得ることが非常に難しいと言われます。そのような中で、自己資金をしっかりと準備することは、非常に重要です。
親戚・友人知人からの調達
厳密には自己資金ではありませんが、「親戚・友人知人からの調達」も有効です。
金融機関はお互い初対面となりますが、親戚・友人知人であれば、長いつきあいの中で、あなたの「人柄」や「事業に賭ける想いや能力」を多少なりとも判断できるはずです。
事業に対する前向きな関係が構築できれば、資金面だけでなく、他のところでも協力を得られることが期待できます。開業当初は従業員を雇う余裕もないので、公式・非公式に関わらず多くの人を事業に巻き込んで、可能な範囲で協力してもらえるようにしましょう。