業種別開業ガイド

宅配ピザ店

2025年 4月 2日

宅配ピザ店のイメージ01

1.トレンド

(1)市場規模の拡大と日常食への変化

日本の宅配ピザ市場は2023年度に3,237億円規模に達し、過去最高を記録している。この市場成長の背景には、新型コロナウイルスの影響で在宅時間が増えたことがある。外出自粛期間中に「手軽に頼めて、家庭で楽しめる食事」として需要が急増した。この需要は外食需要が回復しつつある現在も継続しており、ピザは特別なイベント用の料理から、日常的な食事として広く浸透している。多くの家庭で「困ったときの一品」として選ばれるなど、生活に根付いた存在となっている。

(2)健康志向とメニューの多様化

現代の食生活で重要視されている健康志向を反映し、宅配ピザ業界でも新たなメニュー開発が進められている。低カロリーやグルテンフリーの生地、植物由来の代替肉を使ったトッピングなど、ヘルシーな食材が増えている。また、糖質オフの生地やプロテイン強化型のピザはダイエット中の人や健康意識の高い消費者から支持されている。これに加え、地域の特産品を取り入れた「ローカルフレーバー」のピザや季節限定メニューも提供されており、健康とサステナビリティを両立した商品展開が業界全体で広がっている。

(3)デジタル技術の活用とオンライン注文の進展

オンライン注文とデジタル技術の活用は、宅配ピザ業界の成長を支える重要な柱となっている。多くの企業がスマートフォンアプリやウェブサイトを通じて注文を受け付けており、顧客は簡単に商品の選択やカスタマイズができるようになっている。また、AIを活用したリコメンデーション機能により、顧客の嗜好や過去の注文履歴に基づいたメニュー提案が可能になっている。配送状況をリアルタイムで確認できるトラッキングシステムの進化も、顧客の利便性向上に寄与している。これらの技術は、顧客満足度の向上とリピート率の増加を実現している。

(4)サブスクリプションモデルと新たな配送手段の導入

定額制で一定期間内に複数回の注文が可能なサブスクリプションモデルが一部の企業で採用されており、これにより顧客のリピート利用を促進している。また、海外ではドローンや自動運転車を使った配達が進んでおり、日本でも規制が緩和されれば導入が期待される。これに加え、エコフレンドリーな電動車両の導入が進んでおり、環境への配慮と効率性を両立した配達手段が注目を集めている。こうした新しい取り組みは、業界全体の競争力を強化する要因となっている。

(5)競争激化と独自性の追求

この数年でのピザの原材料の高騰とガソリン代や人件費の値上がりは顕著であり、大幅に値上げをした店舗も多い。さらにスーパーやコンビニなどがピザの販売に力をいれる中、宅配ピザ業界はますます激しい競争に直面している。こうした状況の中で、業界全体が迅速な配達サービスの提供や独自の商品開発に力を入れている。特に、地域の特産品を活かしたメニューや時間限定のキャンペーンなど、顧客を引きつけるための差別化が行われている。さらに、近年ではパスタやパエリア、飲料など、多様な商品を展開し、ピザ店の枠を超えた店舗も増えてきている。これらの多角的なビジネス展開は、30分程度で商品を顧客に届ける物流システムという宅配ピザ業界独自の強みを活かしたものであり、コンビニ並みの利便性を提供できる点も大きな魅力となっている。

宅配ピザMサイズの価格変遷

近年の宅配ピザ店事情

近年の宅配ピザ業界は、多様なニーズに応える可能性を秘めた成長分野として注目されている。特に、ピザが日常食として日本の食文化に定着し、幅広い層に親しまれていることは大きな追い風となっている。スーパーやコンビニなど、他業種からのピザ販売の参入が進む中でも、宅配ピザ特有の「できたてを届ける」という強みは差別化の鍵を握っている。迅速かつ確実な配達サービス、独自のレシピや地域性を活かしたメニューの開発は、新規参入者にとっても大きなチャンスである。

また、近年の技術進歩は、宅配ピザ業界の効率的な運営につながっている。冷凍生地や調理済みトッピングの活用により、キッチン業務を効率化し、限られた人員でも高品質なピザを安定して提供する仕組みが構築されている。これにより、オーナーが経営戦略に注力しやすい環境が整いつつある。また、デジタル技術を活用したオンライン注文システムや配達状況の追跡サービスも、顧客の満足度向上とリピート率の向上につながっている。

ピザの主要食材であるチーズやオリーブオイル、輸入トマトなどの品質にこだわりながらも、効率的な仕入れや調理方法を工夫することで、店舗独自の価値を創出することが可能である。特に地域の特産品を取り入れたメニューや、季節限定のピザなど、他にはない商品で差別化を図ることが、新規参入者にとっても成功のポイントとなる。

さらに、ピザが幅広い層に受け入れられている背景には、誰にでも喜ばれる汎用性の高さにある。個人向けの小型サイズから家族向けの大きなピザまで、さまざまな商品構成で幅広いターゲットにアプローチできる点は、他の飲食業態にはない大きな利点である。

宅配ピザ業界は、汎用性の高さや技術の進歩による効率的な運営、そして幅広い顧客層への対応力という強みを活かして、さらなる成長が期待される分野である。これからの事業者は、新たな発想や工夫を取り入れることが、成功の鍵になるだろう。

宅配ピザ店のイメージ02

開業のステップ

開業のステップ

必要なスキル

宅配ピザ店の経営には、飲食業の基礎的なスキルに加え、物流システムや配達管理、さらにはデジタルツールの活用といった広範囲な能力が求められる。経営管理能力では、売上やコスト、人件費を効率的に管理し、収支バランスを整える力が必要であり、原材料費の高騰や人件費の増加を考慮した戦略的な運営が不可欠である。さらに、人材管理能力として、配達スタッフやキッチンスタッフの採用、育成、シフト調整だけでなく、顧客対応力を備えた人材育成が重要であり、社員1名が中心となり多くのアルバイトやパートを統率する能力も求められる。

また、宅配ピザ店特有の配送サービスでは、効率的なルート設計や最新のGPS技術を活用した動線管理が必要で、配達時間の短縮やコスト削減を実現するとともに、配送品質の向上が店舗の評判やリピート率に直結する。加えて、マーケティングスキルとして、地域性を活かした商品開発やプロモーション、顧客ニーズに対応する独自のサービス提供が成功の鍵を握る。

デジタルツールの活用では、オンライン注文システムや顧客データ管理を駆使して効率化を図り、顧客満足度を向上させる仕組みが不可欠である。さらに、調理工程の効率化や食材の鮮度管理を通じて商品の品質を一定に保つことも重要で、配達時の温度管理や状態確認など細部にわたる配慮が、顧客満足を確保するために必要となる。

このように、飲食業の枠を超えた多角的なスキルと柔軟な対応力を活かし、店舗運営を効率化するとともに、独自性のあるサービスを提供することが、宅配ピザ店の成功を左右する重要なポイントである。

宅配ピザ店に役立つ資格と許可

店舗運営には「食品衛生責任者」の資格が必須であり、保健所が実施する講習を受講することで取得可能であるほか、店舗ごとに「飲食店営業許可」も必要となる。この許可は、設備が食品衛生法の基準を満たしていることを保健所で確認のうえ取得する。また、この業態の特徴でもある交通事故や配達時の怪我などのリスクが高いことを考慮し、防災関連資格である「防災士」や「応急手当普及員」を取得することで、災害や事故への迅速な対応能力を高めることが有効である。

さらに、店舗の商圏内で効果的なマーケティングを行うには、商工会議所が実施している検定試験「販売士」資格が役立つ。この資格では、顧客管理やマーケティングの知識を学び、顧客満足度を向上させるスキルを習得できる。

開業資金と運転資金の例

【前提条件】都内 11坪  バイク5台保有 フランチャイズではなく独自開業

配達代行業者は頼らず自社配達

出店場所は、繁華街などの、人口が最も密集している場所である必要はない。配達効率のいい範囲内にどれだけの世帯数や事業所数があるかがポイントのため、駅と駅の間にある人通りのない場所でも十分成立する。そのため、物件取得費は低く抑えることが可能。また、店内の居心地をケアする必要はほとんどないため内装費が安く済む反面、設備費用に多くの投資が必要な傾向。施工期間は短いがバイクや設備のセットアップ、初期設定に準備期間が必要となる。

開業資金と運転資金の例

売上計画と収益イメージ

前項の店舗立地条件で収支予測を掲載している。レジ関連やオーダーシステム、デリバリー管理でのシステム利用料やバイク関連の維持費が比較的高額な経費となるので独立して記載した。広告宣伝費は雑費に合算。家賃が低い分、車両の維持費と保険料の負担が大きい。繁忙期と閑散期のアルバイトのシフトコントロールが月々の損益を大きく左右する。

売上計画と収益イメージ

補助金・給付金など

ピザ宅配店で活用できる補助金として、IT導入補助金と人材開発支援補助金を活用してほしい。この業種ほどデジタルツールとの親和性が高いものはない。デジタルツールを導入する場合、そのための経費と、有効活用できるようにスタッフを教育する研修費や研修時間の人件費を補助してもらえる。また国からの支援だけでなく、各市町村でも創業時の宣伝費や家賃のサポートなど様々な補助金・助成金を用意している可能性があるので詳細をチェックする価値がある。

宅配ピザ店のイメージ03

※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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