業種別開業ガイド

家事代行

2020年 1月 7日

トレンド

(1)家事代行市場は急速に拡大、参入事業者も増加

家事代行サービス自体は古くからあるが、共働き世帯の増加や単身高齢世帯の増加などを背景に近年市場規模が急速に拡大した。矢野経済研究所の2018年調査によると、2013年に818億円、2017年(予測)には906億円の規模とされている。

NTTタウンページの2014年8月の調査によると、家事代行サービスの登録事業者は2006年から2014年までの間に、205件から629件と3倍以上に増加している。

(2)今後も引き続き拡大が見込まれる

今後も少子高齢化は進み、キャリアの高度化を望む女性も増加すると予想されるため、将来の市場規模は引き続き拡大することが見込まれ、約6,000億円に拡大すると推計されている(出典:経済産業省「家事支援サービスについて」)。

(3)家事代行サービスの担い手は不足している状況

有望な市場動向を受けて参入事業者は多くなっているが、業界が抱える課題はサービスを提供する人材の不足である。家事支援外国人受入事業が国家戦略特区において行われており、家事代行サービスにおける外国人の活用も進められている。こうした状況は開業のチャンスと捉えることができる。

実際、様々な事業者が市場に参入している。家事全般に対応したサービスとして、老舗ではミニメイド・サービス、ダスキンのメリーメイド、ベアーズなど、大手系列ではイオン系のカジタク、パソナ系のパソナライフケア、ベンチャー系ではカジーやカジワンなどがある。洗濯代行、料理代行、買い物代行などに特化した家事代行サービスもある。また、タスカジなどの依頼主と家事代行事業者をマッチングするプラットフォームを運営する企業もある。

(4)開業の方法にも様々な選択肢

こうした状況の中、開業の方法としても様々な選択肢を取れるようになっている。

家事代行スタッフを雇用する独立した家事代行事業者を目指す開業、フランチャイズ加盟による開業、個人事業または個人会社として自ら家事代行サービスを提供する開業、マッチングプラットフォームなどを活用した副業的な開業などである。

ビジネスの特徴

家事代行サービスは、本格的なハウスクリーニング事業などとは異なり、家事を行えるだけのスキルと用具があれば足りるため、開業資金があまりかからないことが特徴である。

一方、サービスの継続的な利用をしてもらうためには、依頼主との信頼関係の構築が重要になる。個人または個人会社として開業する場合には、相性の合う依頼主を一定数確保することがポイントとなる。一方、本格的な事業として開業する場合には、家事代行スタッフの質を確保するための採用・研修がポイントとなってくる。

開業タイプ

(1)独立した家事代行事業者を目指す開業

家事代行スタッフを雇用するなどし、本格的な家事代行事業者を目指す開業タイプである。経営者となる開業者自身に高い経営スキルが求められる。他の事業を営む企業が事業の多角化として取り組むことも考えられる。

家事代行ビジネスのノウハウが十分でない場合には、フランチャイズ加盟によって開業する方法もある。

(2)自ら家事代行サービスを提供する開業

自らが家事代行サービスを提供する形で開業するタイプである。自らの家事スキルを活かしたい人や育児後に時間ができた人などに向いている。雇用される形態ではなく開業を選ぶことでより自分の都合に合わせた働き方を選択できるメリットがある。一方で、個人とはいえ経営者となることに伴う様々な事務や経費の負担が発生する。

このタイプでは副業的な小規模ビジネスとしての開業も可能である。その場合、マッチングプラットフォームを活用することも有効である。一方、より本格的に専念する場合には、フランチャイズ加盟を選ぶこともできる。

(3)フランチャイズ加盟による開業

家事代行サービス事業で開業する場合、すでに述べたように上記の(1)(2)のいずれの場合でもフランチャイズ加盟を選択することができる。フランチャイズ本部によって仕組み(システム)は様々であるが、ブランド、家事代行サービスのノウハウ、初期研修、その他付帯するサービスや支援が提供される。その対価として、加盟料、研修費、ロイヤルティなどを支払う必要がある。メニューや価格もフランチャイズ本部の指定に従うことになる。

開業ステップ

(1)開業のステップ

以下では、自ら家事代行サービスを提供する開業タイプでのステップを記載する。

開業のステップ

(2)必要な手続き

家事代行サービスを開業するに当たって、特別な手続きは必要ない。

個人開業の場合は所轄税務署および都道府県税事務所への開業届等の提出が必要となる。会社設立の場合には会社設立手続きや社会保険などの加入手続きが必要となる。

(3)開業場所

開業するエリアとして、一定の家事代行ニーズがある場所を選ぶことが重要になる。ジャストシステムによる2018年の調査によると、世帯年収別の利用経験率は、世帯年収「1,000万円以上」が39.4%、「700万円以上1,000万円未満」が23.4%、「500万円以上700万円未満」が16.4%、「300万円以上500万円未満」が16.9%、「300万円未満」が18.6%で、世帯年収が高い女性ほど利用経験が多かった。家事代行サービスの利用者は高年収世帯だけではないが、利用率の高い世帯が多いエリアを選ぶ必要がある。

開業する物件については、最低限の事務機能があれば足りるため、自宅での開業も可能である。事業を拡大しようとする場合には、一定の時期に賃貸物件を借りるなどして拠点を設けることになる。

メニューづくり

フランチャイズに加盟する場合には、メニューはフランチャイズ本部の指定に従うことになるが、一定の範囲のメニューを選べる方式になっていることもある。その場合、自らがサービス提供したいか、家事スキルを持っているかといった観点からメニューを選ぶことになる。

一方、フランチャイズ加盟しない場合は、自らメニューを設定することになる。最もニーズが高いとされるのは水回りの掃除を中心とした掃除メニューである。もう一つのニーズの高い分野は料理の作り置きである。料理が得意な場合には、料理を中心としたメニュー構成として、サービスの質で高付加価値化・差別化を図ることもできる。

必要なスキル

家事代行サービスを提供するにあたって必須の資格などはない。ただ、他者に対して有償サービスとして提供する以上、一定の家事スキルは必要になる。また、次のような資格を有していると安心感につながることがある。

管理栄養士(料理代行、国家資格)、栄養士(料理代行、都道府県免許)、家事代行アドバイザー1・2・3級(家事全般、日本家事代行協会)、整理収納アドバイザー1・2・3級、整理収納コンサルタント(整理整頓、ハウスキーピング協会)。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

開業資金については、少ないといえども一定の資金を必要とするフランチャイズ加盟(個人加盟)のケースを記載する。なお、ここでは100万円未満に収まる開業資金の例を記載したが、約200万円が必要なフランチャイズ本部もあり、フランチャイズ・ショーなどの展示会や個別の説明会に参加するなどして詳細を把握することが必要である。

a.大手事業者によるフランチャイズ本部の例

必要資金例の表(大手事業者によるフランチャイズ本部)

(出所:「マイ暮らす」のHITOWAライフパートナーWebサイトより作成)

b.女性起業家によるフランチャイズ本部の例

必要資金例の表(女性起業家によるフランチャイズ本部)

(出所:CLファミリーコンシェルジェ フランチャイズチェーン本部資料より作成)

(2)損益モデル

a.売上計画

ここでは日本家事代行協会による働き方シミュレーションを参考に、2つのパターンに分けて概略のイメージを示す。

売上計画例の表

*午前2時間×2日+午後3時間×1日
**午前2時間×5日+午後3時間×4日
(出所:日本家事代行協会Webサイトを参考に作成)

b.損益イメージ

損益については、固定費が発生するフランチャイズ加盟のタイプで記載する。そのため売上計画とは一致しないが、(1)開業資金と対応させている。

1)大手事業者によるフランチャイズ本部の例(月額)
損益のイメージ例の表(大手事業者によるフランチャイズ本部)

(出所:「マイ暮らす」のHITOWAライフパートナーWebサイトより作成)

2)女性起業家によるフランチャイズ本部の例(月額)
損益のイメージ例の表(女性起業家によるフランチャイズ本部)

(出所:CLファミリーコンシェルジェ フランチャイズチェーン本部資料より作成)

c.収益化の視点

損益イメージからも分かる通り、個人開業を前提とした場合、収益化そのものはあまり難しくない。特に副業的な開業や世帯の副収入のための開業であれば、損益面で赤字に苦労することは少ないと想定される。収益の拡大を図るためには、サービスの質で高付加価値化・差別化を図り、口コミによる拡販を実現するとともに、顧客の定着・継続利用を促すことが重要である。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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