業種別開業ガイド
スナック・パブ
2020年 1月 9日
トレンド
(1)市場規模
一般社団法人 日本フードサービス協会の「平成30年外食産業市場規模推計について」によると、バー・キャバレー・ナイトクラブの2018年の市場規模は前年からほぼ横ばいの2兆4,594億円であった。
広義の意味での市場規模として、居酒屋・ビアホール等の2017年の市場規模については、前年比1.4%減の10,094億円であった。
(2)昔ながらのアットホームな空間の店
特にスナックなどは、店主であるママの人柄を慕って来店する顧客も多く、常連客同士が顔見知りとなって、アットホームな空間を作り出している店が多い。こうしたスナックにみられる特徴は今も昔も変わらず残っており、これがスナックの強みともなっている。
(3)様々なタイプの店の登場
昔ながらのスナックは依然として残っているものの、ホステスが接客するといったタイプの店のほか、様々なタイプの店舗も登場してきている。
具体的には、主に以下のタイプに分けられる。
- 提供する酒を特徴とするタイプ(ホテルなどでみられるオーセンティックバー、1杯ずつ注文するショットバー、スタンディングバー)
- ライブバー(ミュージックバー)などショーを楽しむことができるタイプ
- ダイニングバーなど食事を楽しむことができるタイプ
ビジネスの特徴
昔ながらのスナックや気軽に静かに酒を楽しむといったスタイルもあるが、サービスにおいて“こだわり”や“うんちく”を有効な、また差別化を図るツールとして用いる事業者もみられる。
例えば、酒と料理の提供においては、提供する酒や料理の素材についてのこだわりや相性の良い酒と料理を出す。あるいは、音楽の提供においては演奏者との人的なネットワークを持ち質の良い音楽を演奏する。また、ダーツバーなどスポーツ系ではインストラクションができるレベルの技能を持つ、などの特徴を打ち出す店舗が増えるなど多様化、専門化している。
開業タイプ
(1)提供する酒類に特徴のあるスタイル
ショットバーのほかオーセンティックバーのような格式の高いバーをはじめ、スタンドバーや焼酎バー、ワインバーなどがある。また、店主がソムリエの場合などは、こだわりのワインを提供する店舗などもある。
(2)食事を同時に楽しむことができるタイプ
カフェバーやダイニングバー、スペインバルなどが代表的なもので、お酒に合った料理などを堪能できるタイプである。
(3)提供サービス別のスタイル
ジャズバーや生演奏を行うライブバー、ショーを提供するライブバー、会話や交流を楽しむアイリッシュパブなどがあり、この他にはダーツバー、ガールズバーなどのタイプもある。
開業ステップ
(1)開業のステップ
(2)必要な手続き
許認可が必要であり、深夜営業には警察の許可取得に留意する。
- 食品衛生責任者の設置
保健所指定機関による講習の受講やその受講者などの資格保有者を雇用する必要がある。 - 飲食店営業の許可(酒類提供飲食営業開始届出:保健所)
開店にあたり、設備など条件が提示されている。また、保健所職員の臨店確認が行われる。
- 風俗店営業の申請
スナックやパブは風俗営業の対象になることから、風俗店営業の申請が必要となる。また、深夜の時間(午前0時から日の出前)に営業する場合は、「深夜における飲食店営業等」(警察署)の許可が必要。
上記の条件を整えることが求められる。この他、収容人数によって防火責任者(バーの収容人数が30人以上の場合:消防署)が必要となる。
メニュー、商品の品揃えなど
一通りの酒の種類は揃えたいところである。さらに蔵元、産出国や銘柄などの違いを特徴とした場合や、カクテルなどを提供するとメニューはさらに幅広くなる。
料理では、多国籍料理やイタリアン、フレンチといった特徴により、メニューの幅も広くなる。
必要なスキル
料理を提供する場合には、調理師等の資格や経験を有することが望まれる。提供するドリンク類に特徴を持たせる場合は、バーテンダーとしての技能、ソムリエやワインアドバイザー、そして酒匠(さかしょう)などの資格を取得としておくと良い
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
開業にあたっては、下記が主な支出費目である。賃借を想定し保証料6か月(月額家賃15万円)、仲介手数料10万円として推計している。厨房機器(什器・備品の中心支出費目)では、中古品の採用なども検討すると良い。内外装は、採用する営業スタイルによって増減することが見込まれる。
また、事業運営においては、家や人件費などのランニングコストの負担も考える必要がある。
【面積33平米程度の店舗を賃貸で開業する際の資金例】
(2)損益モデル
a.売上計画
本モデルでは、厚生労働省の生衛業経営状況調査(平成30年度)における平均数値、売上高平均2,300万円、客単価約5,000円、平均来店客数14人(1営業日あたり)、材料・仕入(売上原価)500万円を参照し、経費については、オーナーの報酬を含め人件費を1,300万円、月額家賃を15万円として推計した。
b.損益イメージ(参考イメージ)
標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。
※標準財務比率はバー、キャバレー、ナイトクラブに分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。
c.収益化の視点
スナック・パブは業態によっては接客が中心となるため、接客スタッフを雇用する場合には、人件費が想定以上に増加することもありうる。そのため、経費支出が収益を上回り損失が発生しないように留意する。
モデルの売上高対総利益率は75.0%で高い水準にあるが、業態によっては、典型的な労働集約型の業種となるだけに、人件費などの固定費の上昇には注意したい。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)