業種別開業ガイド
マッサージ業
トレンド
マッサージは、狭義では、国家試験に合格し厚生労働大臣から免許を受けた「あん摩マッサージ指圧師」による施術を指す。ただし、本稿では、それ以外の整体、クイックマッサージ、リフレクソロジー(足裏マッサージ)などの業態もマッサージ店として取り上げる。
1. サービス多様化により市場拡大
マッサージの利用者は、女性が多く、また男女ともに20代~50代の働き盛りの人たちが多い。近年では、あん摩・マッサージ・指圧のほか、骨盤のゆがみなどの矯正やストレッチなどを売りにしたものや、リフレクソロジーやクイックマッサージなど、ちょっとした空き時間に「癒し」を提供する新しい業態が登場している。
2. 市場規模は拡大
マッサージ業界においては、サービスの多様化と女性利用者の増加などを背景に、市場規模は拡大していると考えられる。
3. チェーン店の増加
マッサージ業界の市場規模拡大に関しては、数多くのチェーン店が全国展開を進めてきていることも一因としてあげられる。チェーン店はサービス内容を標準化し、どの店に行っても同じサービスが受けられるのが大きな特徴であり、安心感にもつながっている。
マッサージの主なチェーンとしては、「Re・Ra・Ku」、「てもみん」などリラックスを目的としたもの、「Dr.ストレッチ」「SSS」などストレッチを目的としたもの、「KA・RA・DAファクトリー」など整体・骨盤矯正を目的としたものがあり、いずれも店舗数が伸びている。
マッサージ店の特徴
マッサージ師は、正式には、あん摩マッサージ指圧師と呼ばれ、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に規定された国家試験に合格し厚生労働大臣から免許を受けた者を指す。あん摩マッサージ指圧師は、腰痛や肩こりなどの治療を目的とした施術を行う。
国家資格をもつあん摩マッサージ指圧師の施術所は、おおむね2万事業所前後で推移している。
一方、国家資格を必要としないリラックスなどを目的としたマッサージも多数存在する。例えば、以下のようなものをあげることができる。
- 整体
- クイックマッサージ
- 骨盤矯正
- リフレクソロジー
- ストレッチ、ほぐし
- ハンドマッサージ
- フェイシャルマッサージ
- アロマセラピー
- タラソセラピー
- タイ式マッサージ
- 台湾式リフレクソロジー
- 痩身ボディケア など
上記のものに加え、スパやヨガ、岩盤浴など他の機能やサービスを組み合わせた業態もある。
マッサージ店業態 開業タイプ
あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。
(1)国家資格型
国家資格を取得し、あん摩マッサージ指圧師の事業所を開業するタイプである。店舗の規模は一般的に小規模であり、従業員数5名以下というところがほとんどである。また、必ずしも広い店舗スペースを必要としないため、マンションの一部屋を借りて完全予約制として開業しているところも多い。利用ターゲットは、主にサラリーマンなどの男性である。
(2)リラクゼーションサロン型
主にリラックスを目的とした店舗を開業するものであり、総称してリラクゼーションサロンやボディケアサロンなどと呼ばれている。このタイプにはチェーン店による展開が目立っており、広めのスペースで多人数の利用客を効率的に施術する店舗も出てきている。
施術者としての資格は短期間の研修などで取得することが可能であるため開業者が多く、最も伸びている業態と言える。主に女性を利用者ターゲットとしている業態が多いのが特徴である。
開業ステップと手続き
(1)開業のステップ
開業に向けてのステップは、主として以下の7段階に分かれる。
(2)必要な手続き
国家資格型の場合は、厚生労働省が実施するあん摩マッサージ指圧師国家試験に合格する必要がある。試験合格後、公益財団法人東洋療法研修試験財団にて登録手続きを行い、あん摩マッサージ指圧師の免許証が交付される。
リラクゼーションサロン型の場合は、無資格で開業可能なケースもあるが、各施術の団体や協会が実施する研修を受けて試験に合格し、正規の認定などを受けてから開業することが望ましい。
メニューづくり
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律施行規則」によると、施術室などについては以下のように規定されている。
- 6.6m2以上の専用の施術室を有すること。
- 3.3m2以上の待合室を有すること。
- 適切な換気装置を設置すること。ない場合は、店舗面積の約15%以上の部分を外気に開放できるようにすること。
- 室内は常に清潔に保ち、採光、照明および換気を充分にすること。
- 施術に用いる器具、手指などの消毒設備を有すること。
国家資格型のマッサージ店だけでなく、リラクゼーションサロン型の開業の際も上記条件を参考としたい。
料金は、一般に10分1,000円を基準にしている店舗が多い。収入はほとんどが現金による受け取りである。店舗運営に際し、商材の仕入れなどは発生しないので、資金繰りは他の業種に比べて多少楽だと言える。
女性利用客の増加に対応するための施策も必要である。女性の施術者やスタッフを充実させることは当然ながら、立地は繁華街の裏道などではなく、駅前の明るい場所を選ぶなど出店場所や店内雰囲気にも気を配る必要がある。
業態も多岐にわたっている。独立開業する際には、どのような業態で開業するのかの見極めが重要となる。
必要なスキル
- 国家資格型の場合、国家試験の受験資格を得るためには、あん摩マッサージ指圧師の養成コースがある大学や専門学校、盲学校で学び必要な課程を修めなければならない。
- リラクゼーションサロン型の場合は、チェーンや団体、協会の研修機関で技術を修得することができる。
- 資格取得は、施術レベルとしてはベーシックなものである。実際に施術を受けた利用者が効果を実感できるレベルになければ、事業継続は難しい。よって、自らの施術レベルをいかに向上させていくかの取り組みが重要になる。日々の工夫は当然のこと、最新理論の情報収集、新業態の研究や利用者アンケートを通じてのサービスレベル向上に取り組みたい。
- クイックマッサージなどでは価格競争を打ち出すチェーンも出てきた。独立開業する場合、チェーン店との価格競争に巻き込まれては勝ち目がない。価格以外のところで利用者に評価される「自店舗の強み」は何かを考え、その追求に努めたい。
- 実際の営業に際しては、サービス提供や店舗運営、顧客開拓などのスキルを身に付ける必要がある。資格取得後にマッサージ店にスタッフとして就職し、一通りの運営ノウハウを身に付けた後に開業すると成功確率が上がるだろう。
- 集客に際しては、インターネットの集客サイトの利用も効果があるが、口コミの影響力も大きい。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
マッサージ店は、5~10坪程度の狭い店舗でも開業可能であり、開業に要する費用は他の業種に比べて低く抑えられる。
【参考】:店舗面積約5坪、ベッド数2台のマッサージ店(国家資格型)を開業する場合の必要資金例
(2)損益モデル
■売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、土曜、日曜で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。
(参考例)マッサージ店(国家資格型)
■損益イメージ(参考例)マッサージ店(国家資格型)
- ※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
- ※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
掲載日:2019年1月