業種別開業ガイド
婚活マッチング
2020年 11月 4日
トレンド
(1)オンラインによる婚活マッチングが拡大傾向
結婚相談所をはじめとする婚活サービスの2018年度の市場規模は約500億円(出典:矢野経済研究所「ブライダル産業年鑑2019」)となっている。婚活サービスを利用する独身者の割合や、婚活サービスを通して結婚した人の割合も年々増加しており(出典:リクルートブライダル総研「婚活実態調査2019」)、婚活サービスの認知度も高まっている。
なかでもオンラインによる婚活マッチングサービスの成長が注目を集めている。同サービスの2019年の市場規模は前年比約4割増の530億円、5年後には約2倍に拡大と予測されている(出典:株式会社サイバーエージェント「株式会社マッチングエージェント、株式会社デジタルインファクトによる 2020 オンライン恋活・婚活マッチングサービス国内市場調査」)。
(2)オンラインによる新サービス提供
公設の学童保育施設不足を背景に、民間企業が学童保育サービスに参入するケースがここ数年増えている。沿線価値向上により居住者増加につなげたい鉄道会社や、少子化の中で将来の利用客を確保したい英会話教室、学習塾、スポーツクラブなど、幅広い業界から進出が相次いでいる。駅の近くに立地して利便性を図ったり、勉強や英会話などを教えたりなど、それぞれの業種の長所を生かしたサービスを提供し、差別化を図っている。
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う外出自粛の中、結婚相談所大手ではウェブ会議を使った「オンラインお見合い」や「オンライン婚活パーティ」といったサービスを提供し、注目が集まっている。マッチングアプリ運営会社でもオンラインデート機能をアプリに追加するなど、利便性の向上を図っている。利用者からは好評の声も高く、今後も有効なサービスとして継続する可能性がある。
(3)自治体や地銀が婚活支援
人口減少を食い止めるための手段や、中小企業の事業承継支援の一環として、地方自治体や地方銀行が婚活支援に取り組み始めている。結婚相談所と連携して、マッチングサービスの提供や婚活イベントの開催のほか、婚活セミナーやコンサルティングも積極的に行っている。自治体や地銀が運営・主催しているという安心感や地元開催の利用しやすさから、利用者も多い。
ビジネスの特徴
婚活マッチングは、会員が登録したデータ(プロフィールや希望する相手の条件)に基づいて会員同士をマッチングするサービスである。会員登録制で相手の情報を提供し、対価として入会金、登録料、月会費などを受け取る。相手探しや連絡は会員自身で行えるが、1ヶ月間にコンタクトを取れる人数には上限が設けられていることが多い。また、相談所がマッチングした相手の情報も毎月決まった人数が送られてくるようになっている。仲人型の結婚相談所のような親身なアドバイスやセッティング等のサポートは行わないことが多いため、お見合い料や成婚料は比較的安く設定される傾向にある。
こうした業態は、データマッチング型結婚相談所または結婚情報サービス業とも呼ばれ、すでに大手が参入し全国展開をしている。マッチングサイトの開発や会員集めに多額の費用と時間がかかるため、ゼロからの個人起業はハードルが高いとされている。
個人で婚活マッチングサービスを開業する場合は、日本結婚相談所連盟(IBJ)等の加盟店となり、その会員データを利用したマッチングサービスを提供することが近道と思われる。このようなケースでは、仲人型とデータマッチング型双方のメリットを取り入れたサービスを提供している結婚相談所が多い。
開業タイプ
結婚相談所として開業する場合の一般的なパターンは以下の通りである。
(1)副業型
結婚相談所は仕入や在庫を抱える必要がなく、自宅での開業が可能である。主な業務である会員とのやりとりはオンラインで行い、面談は予約制にするなど、比較的スケジュール調整がしやすく、お見合いやイベント等も休日開催が多いため、兼業も可能である。
(2)専業型
個人事業主として専業で開業する。まずは副業として開業し、軌道に乗り会員が十分に増えたタイミングで専業に移行するという方法もある。
法人型
法人が既存事業を活かすため、新規事業として参入するケースもある。
開業ステップ
(1)開業のステップ
日本結婚相談所連盟(IBJ)等への加盟を前提として開業する場合、当初の開業費用として、広告宣伝費、WEBサイト制作費、連盟への加盟金が必要となる。また、月ごとに連盟のネットワーク利用費が発生する。
開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。
(2)必要な手続き
開業にあたり許認可や届出は必要ない。個人事業主の一般的な開業手続きとして税務署への開業申請を行う。
業界連盟への加盟の際には、書類選考及び面談など一定の手続きが必要である。
結婚相談所の第三者認証として、特定非営利活動法人結婚相手紹介サービス業認証機構の「IMS」や、特定非営利活動法人日本ライフデザインカウンセラー協会の「マル適マークCMS」がある。
差別化について
個人が婚活マッチングサービスで開業する場合、ネームバリューがあり全国展開をしている大手企業と同じ手法を踏襲することは難しいため、希望者にはカウンセラーをつけるなど、仲人型の結婚相談所のサービスを一部取り入れながら、会員の婚活をサポートする仕組みが必要である。
また、婚活アプリなどとの違いを明確化し、安心して婚活ができるサービスを提供することも重要である。そのため、入会前には本人確認や独身証明など公的書類の提出などを求めていることなどをホームページに掲げるなど、積極的にアピールする。
入会のハードルを下げるためにオンラインでの無料相談を行うことも、会員獲得のための1つの手段である。
必要なスキル
基本的に人と接する仕事であるため、コミュニケーションスキルは必須となる。
さらに、婚活ビジネスの集客やサービスにはITスキルが欠かせないものとなっている。SNSやブログでの発信などは基本であるが、それに加えて自身のWEBサイトが検索結果の上位にくるようにするSEO(検索エンジン最適化)対策などにも通じていれば、強みとなるだろう。オンラインお見合いやオンライン婚活パーティのセッティングもできるよう、トレンドとなるツールには習熟しておきたい。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
マッチングサービス提供のため業界連盟に加盟することを前提とし、初期投資を抑えるため月額10万円のレンタルオフィス(2人用個室、什器・備品付き)での開業を想定して作成した。
【レンタルオフィスで専業型結婚相談所を開業する場合の必要な資金例】
(2)損益モデル
a.売上計画
他の年間収入は、イベント参加料(1万円×20名×4回)及び成婚料(成婚料5万円×15名)で算出した。
b.損益イメージ(参考イメージ)
※標準財務比率は結婚相談所、結婚式場紹介業に分類される企業の財務データの平均値を掲載(出典:東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」)。
c.収益化の視点
初期投資における連盟への加盟費の回収と、集客のための広告費やイベント開催費などの吸収が可能なだけの売上を出すことが課題となる。仲介型の結婚相談所に比べて低い料金設定となっているため、収益化には会員数を増やすことが第一であり、新規会員の獲得と同時に、既存会員の契約期間中の中途解約防止がポイントとなる。データマッチングサービス型婚活では基本的に会員が自立的に婚活を進めていくスタイルだが、婚活が滞っている会員へは適宜サポートを行うことが中途解約防止に有効であると思われる。中小の結婚相談所の場合は、データマッチング一辺倒ではなく必要に応じて人的サポートも行う態勢を整えておきたい。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)