起業マニュアル
小売業の仕入ポイント
本レポートは、小売店経営者やこれから小売店経営を始めようと考えている方を対象として、顧客ニーズに合った適切な仕入を行うためのポイントを紹介している。
1. 仕入情報の収集ポイント
1)内部から得られる情報
販売データの活用
POSシステムなどを使って収集した販売データを使い、「どの商品が、いつ・どれだけ・いくらで売れたのか」、また「それはなぜか」を分析する。
顧客要求伝票の活用
顧客要求伝票を活用し、機会ロスを防ぐ。顧客要求伝票は、在庫のない商品に対して顧客の要求があった場合に発生し、その理由は品切れの場合と、商品を取り扱っていない場合が考えられる。前者の場合は発注タイミングや発注量を検討し、後者の場合は今後の取り扱いを検討する必要がある。
販売員からの情報収集
普段から顧客と接している販売員から得られる情報は、定量的なものよりも定性的な情報が多く、販売データだけでは読み取れない内容が得られる。
2)外部から得られる情報
卸売業者からの情報収集
卸売業者からは製造者やほかの小売店など幅広い情報が得られる。売れ筋商品や死に筋商品についての情報や、新商品の情報を確実に収集できる関係を保つべき。
顧客からの情報収集
顧客と直接コミュニケーションをもつことも重要な情報収集策のひとつ。中には、時期を決めて定期的に顧客アンケートを行なっている店もある。
業界誌からの情報収集
業界新聞や専門誌を活用し、品揃えを検討したり、商品知識を高めたりする努力を。
インターネットの活用
ネットショップの売れ筋ランキング、メーカーの新商品情報などは、時間やコストをかけずに顧客の嗜好を把握できる。
「家計調査年報」の活用
総務省が毎年発行している書籍で、500を超える品目ごとに世帯平均の消費額の推移や消費者動向を知ることができる。
2. 仕入先の選択ポイント
1)仕入先の商品レベル
まず、仕入先が供給する商品が自店の顧客ニーズに合致しているかどうかを把握すること。商品の機能性・耐久性・安全性といった基本的な品質に加え、価格帯やデザイン・ブランドについても検討しよう。
2)仕入の取引条件
価格条件
数量割引・季節割引・現金割引などの割引条件は仕入先選択の重要なポイント。
支払い条件
現金払いか、掛け仕入ができるのか、手形の場合の期間はどれくらいなのかといった支払い条件を確認する。
納品条件
安定供給が受けられることはもちろん、納品までの期間や輸送手段・運賃負担・梱包状態・納品場所について、どこまで希望に応じてくれるのか確認する。
返品条件など
不良品や損傷のある商品についての返品条件を確認する。小売業者が商品の所有権をもたず、販売に応じて手数料を支払う委託方式を採用する際は、商品の管理義務、売れ残った商品の回収方法などについても確認する。
3)仕入先のリテールサポート力
情報提供力
商品情報のほか競合店などに関する情報提供力も、仕入先選定の重要なポイント。
商品に関する提案活動
品揃えや商品の陳列・演出・販売促進まで相談に乗ってくれるなど、自店にとって有効な提案を行ってくれるかどうか。
4)仕入先の信頼度
取引前には、先方の企業体質・財務体質についての信用調査を行う。また、取引開始後は、納品の正確さ、仕入価格は他店より高くないか、日付の古い商品が混入していないか、欠品は多くないか、売れ筋や新商品の納品スピードは速いかなどをチェックするといい。
3. 仕入の効率化ポイント
1)大量仕入の実行
大量仕入のメリットには、「数量割引の適用が受けられる」「品切れを起こしにくい」などがあげられるが、その一方で「保管費用の増加」「商品回転率の低下」「需要の変化によるリスク増加」といったマイナス面も考えられる。大量仕入れを行う際は、商品の性格をよく考えたうえで慎重に検討すべきである。
2)計画的な仕入の実行
発注から納品までのリードタイムを考えたうえで、「必要な時期と量を予測し、無理な発注や無駄な発注を避ける」など計画的な仕入を実行することで、品切れによる機会ロスを防いだり、発注コストを削減したりすることが可能になる。
3)共同仕入の実行
共同仕入とは、同種の商品を扱う小売店が提携して共同で仕入を行うことを言い、「数量割引の適用を受けやすくなる」「各店の情報を総合できる」「仕入交渉力が高まる」といったメリットがある。ただし、小売店同士の規模の差から不合理が起きたり、人間関係にあつれきが生じたりすることもあるので慎重に検討すべき。
4)仕入の集中化
安定した仕入を行う、または独占の弊害を避けるためにも、複数の仕入先を確保しておく必要はあるが、むやみに仕入先を広げても信頼関係が築きにくくなる。取引先を絞り込むことで取引条件を有利にすることができないかなど、交渉してみるといい。
5)情実仕入の排除
「昔からのつきあいがあるから」「知り合いからの紹介だから」といった理由で仕入先を選定する経営者もいるが、こうした情実仕入が仕入の効率化を妨げる原因になることもある。仕入先を選定する際は、自店の経営環境や顧客ニーズに応じて正しい意思決定を。
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