起業マニュアル

出店地域の選び方

出店地域の選び方

出店を考える地域の人口や世帯数、競合店を調べましょう。取り扱う商品やサービスによって商圏の広さは異なるため、調べる地域の範囲も変わります。

商圏の考え方

まず、自店に来る顧客のいる範囲となる商圏を考えます。商圏は取り扱う商品やサービス、地域によって異なります。日常的に買うものは家や勤務先などの近隣で買い物をします。
都市部では徒歩5分から10分で行ける範囲ですが、地方では自動車で15分くらいまで近隣の範囲になることもあります。

家具や電化製品など、複数の店を見てまわって選ぶような商品では電車や自動車で30分程度の範囲が商圏となります。
道路や鉄道に近い場所は商圏が広くなります。一方、近くでも交通の障害になりそうな川や線路の反対側は商圏として考えない方がよいでしょう。

人口や世帯数、事業所数を調べる

商圏の人口や世帯数は、総務省「国勢調査」などで調べることができます。総務省統計局のホームページから調べられます。また、その地域の役所や図書館にも資料があります。
地域や事業によっては、住んでいる人よりも通ってくる人が重要で、従業地・通学地による人口(昼間人口)や、鉄道会社が発表している乗降客数を確認するとよい場合もあります。
事業所を顧客とする場合は、総務省「経済センサス」で地域の事業所数を調べましょう。

商圏の市場規模を推計する

総務省「家計調査年報」では、世帯当たり年間の品目別支出金額などがわかります。もし扱う商品・サービスが調査の対象品目であれば、先に調べた世帯数などと合わせて、商圏の市場規模が推計できます。
その他、人口や事業所数あたりの販売金額を仮定して、商圏の市場規模を推計することもあります。

競合店の調査

商圏が重なる競合店を調べます。自店の商圏の周辺にある競合店も、自店の商圏と商圏が重なりますから、商圏の周辺も調べます。大型店の商圏は特に広いので注意しましょう。

1.競合店のチェックポイント

競合店を把握したら、その店の営業状況をチェックしましょう。

  • 客数(曜日別、時間帯別、男女別、年齢層別など)
  • 売場面積
  • 商品・価格構成
  • 店舗レイアウト
  • 販売員の人数・男女比
  • 接客態度
  • 営業日数(年中無休、定休日、不定休)
  • 営業時間
  • 商品の陳列状態
  • 照明の明るさ
  • BGM(選曲、音量)
  • エレベーター、エスカレーター
  • トイレなどの付帯設備
  • 駐車場(台数、駐めやすさ)
  • 空調
  • 広告、店頭POP
  • タイムサービス
  • ポイントカード

2.競合店とのシェア配分の計算事例

商圏の世帯数は10,000でした。このうち3,000世帯がライバル店Aと競合していると仮定します。
売場面積は競合店Aが自店の2倍で、品揃えもやはり2倍程度の場合、この競合している3,000世帯を、自店:競合店A=1:2として配分します。つまり自店分の顧客となる世帯数は1,000で、競合店Aに流れる世帯数を2,000と考えるわけです。 そうすると、自店の顧客世帯数は10,000(商圏全体)-2,000(競合店Aの顧客)=8,000となります。

競合店が2店あり、自店を含め3店で分けあう場合でも、同じ考え方で競合する地域の世帯数を売場面積比で分けあいます。

3.競合店との差別化

人口や世帯が多くて競合店がない地域が好ましいですが、需要があるのに競合店がない地域は少ないものです。競合店が少しあっても出店をあきらめるのではなく、競合店の弱い点をつけないか考えましょう。
ただ、競合店との差別化を考えるあまり、顧客のニーズから離れないようにしてください。また、あまりにも競合店が強力な場合は、他の地域を探す方がよいかもしれません。

商圏を歩いて調査する

一戸建て、マンション、社員寮、公営住宅、社宅など、どんな住宅が多いのか確認しましょう。また、事業所や学校の人の流れ、街の雰囲気を自分の目で確認しましょう。
競合店に限らず商圏内の他の商店を見ることで、さまざまなヒントを得ることができます。逃がしていた客層や、営業上の工夫を発見できるはずです。
他にも交通網の変化や新しい施設の建設など、顧客の動きに影響を与える事象には注意しましょう。

商圏に合った商売

商圏の顧客特性を生かして成功した事例を紹介します。

  1. 通行客を調査した結果、人通りの多い早朝と夜の営業時間帯を加えて成功したドラッグストア
  2. ワンルームタイプのマンションが増えたことから、単身者用の惣菜販売を強化したミニスーパ
  3. 通行客の服装から、人気柄をつかみ、仕入れに生かしたファッション雑貨店
  4. 残業の多い事業所に夕方の弁当配達を始めた弁当店
  5. 商圏の高齢者の増加をつかみ、人気スポーツの商品をラインに加えたスポーツ店

どの事例も地域の顧客と競合店をしっかり見て出店しているのがポイントです。