業種別開業ガイド

ブライダル

2021年 7月 2日

トレンド

(1)市場規模は縮小傾向

日本のウェディング市場規模は約2.4兆円と縮小傾向が続いており(出典:矢野経済研究所「ブライダル産業年鑑2019年版」)、2018年の婚姻組数は約59万組(前年比2.8%減)とこちらも減少傾向で推移している(出典:厚生労働省「2018年人口動態統計」)。こうした中、婚姻届の提出のみで結婚式を行わない「ナシ婚」の増加や再婚率の上昇などがみられ、ブライダル業界ではこれらの層に対するアプローチが今後の課題となっている。

(2)多様化する結婚式

顧客ニーズの多様化と、晩婚化、再婚層の増加により、親族や限られた友人のみが列席する「少人数婚」の需要が高まっている。これに伴い「海外ウェディング」「リゾートウェディング」のシェアも拡大傾向にあり、顧客のニーズに合わせた様々なウェディングプランが提供されている。

(3)新型コロナウイルスの影響で式の中止相次ぐ

新型コロナウイルス感染拡大により、結婚式や披露宴の延期・中止が全国で相次ぎ、今後の市場の冷え込みが懸念されている。こうした中、結婚式のライブ配信やオンライン結婚式(リモートウェディング)など新たなスタイルのウェディングプランが登場し、注目を集めている。感染防止だけでなく、結婚費用の削減や準備期間の短縮といったメリットもあり、今後の選択肢の1つになっていくことが期待される。

ビジネスの特徴

ウェディングプランナーは、結婚式のプランニングをし、新郎新婦のアドバイザー的な役割も担う。ブライダルコーディネーターやウェディングプロデューサーともいう。式場の確保に始まり、料理、花、写真、衣装、ヘアメイク、引出物等の提案・手配から人員配置、金銭的な調整、当日のアテンドまで、結婚式をトータルでプロデュースすることで対価を得る。

一般的に結婚式を挙げる場合、最初にゼクシィなどの情報誌やWebサイトで結婚式場探しから始めることが多いが、近年では結婚式のスタイルが多様化しており、企業に属さないプランナー個人への依頼も増えつつある。

フリーのウェディングプランナーの場合、仕事は新郎新婦からの直接依頼のほか、式場からの業務委託によるものがある。

開業タイプ

打ち合わせは外部でもできるため、特にオフィスは必要なく、自宅での開業が可能である。

(1)ブライダル企業からの独立型

結婚式場、ホテル、レストラン、ウェディングプロデュース会社などでプランナーとして経験を積んだ後に独立する。在職中に培った人脈や職歴に基づく信頼感が顧客獲得につながるため、個人での開業も容易といえる。

(2)関連職種からの転職型

結婚式の司会者やフラワーコーディネーターなど結婚式の現場での仕事経験を生かし、プランナーとして開業する。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業のステップ

(2)必要な手続き

ウェディングプランナーになるために特別な資格は必要ないが、BIA(日本ブライダル事業振興会)、ABC(全米ブライダルコンサルタント協会)、JADP(一般財団法人日本能力開発推進協会)などの認定資格を取得しておくことが望ましい。そのほか、ドレススタイリスト、メイクアップアーティスト、フローリスト、色彩検定といった各種の関連資格も強みとなる。また、語学力があれば、海外ウェディングや外国人のカップルのプロデュースの際に役に立つ。

SNSによる集客

商品やサービスの利用に際してSNSで情報収集を行う層が拡大しており、ブライダル業界でも重要な集客ツールとなっている。特に「instagram(インスタグラム)」は必須である。
無料で利用できる上、最新情報を写真や動画などで視覚的にアピールすることができ、ユーザーとのコミュニケーションも取りやすいなど、費用をかけずに認知度を高めることができる。その際、自分の得意とするプロデュースやユーザー層を明確にし、マッチング度の高い顧客に訴求していくことが重要である。

必要なスキル

ブライダルに関する専門知識、ビジネスマナーはもちろんのこと、接客スキルやコミュニケーション力が求められる。また、業界のトレンド、流行のファッションや美容情報など、常に新しいことを取り入れ、自分のプロデュースをブラッシュアップしていく姿勢が必要である。

開業資金と損益モデル

初期投資を抑えるため月額10万円のレンタルオフィス(2人用個室、什器・備品付き、初期費用として家賃2か月分前払い)での開業を想定して作成した。

(1)開業資金

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

ユーザーからの直接依頼単価が20万円(月2件)、契約企業からの依頼単価6万円(月5件)として年間売上を算出。

売上計画例の表

b.損益イメージ(参考イメージ)

 損益のイメージ例の表

※標準財務比率は結婚相談業・結婚式場紹介業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

収益化において最も重要な点はいかに集客数を上げ、高い水準で維持していくかということである。結婚式のトータルコーディネイトだけでなく、カウンセリングやアドバイスなど部分的にサポートするメニューを用意して利用の幅を広げることも1つの手段である。また、結婚式にかける予算は限られているため、高品質かつ安価な提携先を多数発掘しておくことも必要である。司会やフラワーコーディネイトの経験があれば、その部分を自分で手掛けることも可能であり、コスト抑制につながる。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)