起業マニュアル

アルバイト採用の実務(面接編)

採用したアルバイトが来なくなる理由

「面接後、採用の連絡をしたのに出社予定日を過ぎても来てくれない」。こんな店長のボヤキを多くの店で耳にします。あるいは、「面接に来るパート・アルバイトは多いんですが、いざ採用を決めた途端、来ないんですよ」と、ほとんどあきらめて匙を投げたと言わんばかり。最後は、「私たち店長ではどうしようもありません。トップに何とかしてもらわないと...」。
本当に店長に打つ手はないのでしょうか?

忙しい時間を割いてせっかく「面接」までしたのに、なぜ来てくれないのでしょうか。
実は、その最大の原因は「面接の失敗」にあるのです。
失敗する理由として、以下の2つが考えられます。

  1. 応募者は関心があるから、応募していることを理解していない
  2. 応募者の期待と不安を払拭できていない

はじめから、店で働かないのに面接に来る人はいません。このことを、面接者であるはずの店長が分かっていないことが多いのです。たとえ「冷やかし」であったとしても、まったくその気のない人が自分の大切な時間を割いて、初めての店の戸を叩く勇気があるでしょうか? ほんの少しでも関心があるからこそ戸を叩くのです。

面接に来たパート/アルバイトの人たちが抱いている「期待と不安」に応えられなかったからです。応募者が「面接に行こう」と決めるまでのことを思い浮かべてください。「友人から誘われて」、「店頭の張り紙を見て」、「チラシを見て」など、募集情報を知ると、パート/アルバイト の人たちはさまざまなことを考えますが、なかでも「自分に合う店かどうか」が一番気になることです。

そのために多くのパート/アルバイトの人たちは、その店の仕事が自分に合うかどうかを判断するため、仕事の条件や仕事内容など事前に必要な情報を入手します。その結果、「このお店で働いてみよう」と思い、「面接で確認してみよう」と期待と不安の中で面接にやってくるのです。にもかかわらず、面接の中味が応募者の期待に応えられなければ、当然「×」の烙印を押されることになってしまいます。
今までの面接のやり方を思い浮かべてください。

□ふんぞり返ってはいませんか?

□一方的に話していませんか?

□堅苦しい最初の緊張の出会いから面接が終わって帰るとき、相手から安堵と笑顔が漏れていますか?

□顔や態度を見た途端、相手の服装や身なりで話を聞く前に結論を出してから面接していませんか?

こんなやり方では面接に来たパート/アルバイトの人たちが落胆する姿が目に浮かびます。「こんな店来なければよかった」と印象を与え、確実に一人のお客さまを失ったことになります。
「面接の正否」が採用の重大なポイントであることがお分かりでしょう。

面接のポイント

面接のポイントは限られた時間にどれだけ応募者の適性と可能性を見いだせるかにあります。そのためには場数を踏み、多くの面接を重ねて応募者の採用ときの印象と採用後の仕事ぶりや段階的な成長度を比較し、自分自身のケーススタディとしてインプットを積み重ねることです。「これは!!」と思った人がいい加減であったり、どうかと思った人がまじめでしっかりとしていたなどのケースはよくあります。

面接で大切なのは段取りです。せっかく自店を選び縁あって応募してくれた人ですから店側も大切に扱いたいものです。
パート/アルバイトの応募範囲を見れば分かることですが、大多数が通勤時間15~30分以内であり、自店の主要顧客の来店範囲である商圏と重なることを忘れてはなりません。

たとえ、不採用の場合でも主要商圏内の大切なお客様の一人であるということにほかなりません。したがって、店や面接者であるオーナーや店長の第一印象や対応が大変重要なポイントになります。

面接の進め方

(1)面接する場所を決めておく

自店のどの場所で面接するのがベストか、応募者にはどこに座ってもらい、面接者はどこに座り話を聞くのがよいかも事前に考えておく必要があります。
例えば、よく応募者を面接者の正面に座らせますが、応募者によっては威圧感や緊張感からあがってしまい、本来の良さが短時間では現れないこともあります。
面接者と応募者がテーブルのコーナーを挟んで、L字型に座り必要に応じて目線を合わせられるようにするのも効果的です。

(2)面接は短時間にしっかり行う

応募者1人当たりの面接時間は15~20分くらいが適当です。これより短くてはなかなか判断できません。かといって長ければ面接に集中力や良い意味での緊張感を欠くことになり、応募者にも迷惑です。

(3)導入は応募に対する感謝と自己紹介から

面接の導入は「このたびはご応募ありがとうございました。私が店長の○○です。」と応募に対する感謝の意を心から伝え、自己紹介から始めます。
さらに相手をリラックスさせることを心がけ、天気やスポーツ、学校、近所のできごとなどから会話を始めます。飲み物を勧めるのも効果的です。このときの座りかたも注意してください。いかにも「面接してやる」というような印象を与えてはいけません。ゆっくりと座って目を見て話します。

(4)できるだけ応募者に話をさせ、しっかり相手を見抜く

面接のテクニックとしては、できるだけ「はい」、「いいえ」で答えられる質問は避けます。例えば「当店の印象はいかがですか」といった、ニュアンスとして「~について話してください」という言い方をし、相手が話しやすい状況を作ります。できるだけ、応募者に話をさせるような質問をして、相手の言葉遣いや表現力、態度などを観察します。
その際、事前記入のアンケート、履歴書を前に置いて、書いてある事項の確認と簡単なメモをとってください。相手にあなたの真剣さが伝わります。

以上の3段階であなたは、募集に成果を上げるはずです。しかしながら、それでも応募者が集まらない場合は、地元の有力者グループへの働きかけを行います。

(5)自店と仕事内容を分かりやすく説明する

次に「それでは当店の営業や募集している仕事の内容を簡単に説明します」と、自店に関することや扱い商品の紹介、仕事内容、時給や待遇面などを具体的にわかりやすく伝えます。このときに難しい専門用語や店舗オペレーションなどの英語表現を用いて応募者を戸惑わせたり、あいまいな仕事内容の説明から相手に不信感を抱かせないように注意することが大切です。

主に説明する内容は以下の通りです。

  • どんな仕事をしてもらうのか
  • 仕事のやり方はどのようにして教えられるか
  • どこ(場所)で働いてもらうか
  • 頑張った場合、パート/アルバイトのメリットは何か。
  • 時給のアップや仕事の魅力、仲間や同僚との関係
  • パート/アルバイトの人の基本的な生活への悪影響を配慮すること
  • 無理な曜日・時間・残業などに協力してもらう場合のメリット

説明の際、パート/アルバイトの人たちに、アルバイトとして店の印象についてアンケートを記入していただき、その内容を面接時に活かすことも、応募者の不安を払拭することに役立ちます。

(6)応募者に質問する機会を与える

最後に「一応説明させていただきましたが、そちらから何かお聞きになりたいことがありますか...」と相手に質問させる機会を与えます。もし、質問があれば1つずつ丁寧に答えます。このときに店長の人間性や誠意が応募者に伝わり、信頼感と安心感が生まれることが多いのです。

(7)最後にもう一度、応募に対する感謝の意を伝える

採用の場合はその場で伝えてもかまいません。その際に「今、お話を伺っていても明るい笑顔が素敵ですし、前のご経験からも...」など、応募者の面接の印象や適性の可能性などを具体的に伝え、採用した理由を説明します。このことで応募者は納得しますし、自分が選んだ店で働くという意欲がわきます。

新規開店を控えた面接などのように多くの候補者から選別が必要な場合や、保留や不採用と判断された場合には、原則として明日連絡を取ることを約束して連絡時の応募者の都合を確認します。いずれしても、最後に今回の応募に対する感謝を再度伝え、面接を終わります。

(8)面接で決してしてはいけないこと

面接の途中で不採用と判断した場合でも、応募者にそのことを悟られては絶対にいけません。応募者に対したいへん失礼ですし、面接者の人格も疑われます。
若い店長や未熟な店長の場合に起こしがちな過ちですが、面接を急に省略したり、途中から応対が雑になり応募者に対する言葉使いや態度がいい加減になることは、絶対に避けなければいけません。
なぜなら、繰り返し申し上げますが、応募者はもっとも近いところに住む大事なお客さまの一人なのです。

評価事項

(1)容姿態度

□第一印象は良かったか?
□人の目を見て真剣に説明を聞いていたか?
□自分の意見をはっきりわかりやすく説明できていたか?
□服装、身だしなみ等がきちんとしていたか?
□明るくハキハキして好感が持てたか?

<面接時の質問事項>

(2)仕事に対する考え方はどうか

上記の2、4、5、7の質問事項で分かる。

(3)やる気が感じられるかどうか

上記の1、2、4の質問事項でわかる。

(4)スケジュールが合うか

上記の6の質問事項でわかる。

以上、アルバイト面接の基本をおさえ、店舗の戦力となる優秀なアルバイト採用を目指しましょう。

関連ドキュメントのダウンロード

最終内容確認 2018年2月

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