業種別開業ガイド

WEBライター

2024年 8月 21日

WEBライターのイメージ01

トレンド

政府による働き方改革は、コロナ禍を機に加速度的に進んだ。リモートワークや副業を解禁する企業が増え、在宅でできる仕事としてWEBライターへの関心が高まっている。

WEBライターは、主にWEBメディアを運営している企業から仕事を受注し、インターネット上に掲載される記事を作成する。例えば、次のようなものがある。

  • 企業サイトのコラム記事やSEO記事(*1)
  • ニュースサイトやまとめサイトの記事
  • ECサイトでの商品サービス説明文
  • インターネット広告のコピー
  • イベントやセミナーのレポート記事
  • 著名人や有名店への取材(インタビュー)記事
  • その他(動画コンテンツの台本、SNSの運用、メルマガの作成など)

(*1)SEO(Search Engine Optimization)記事:検索エンジン向けに最適化し上位表示を狙った記事

以下では、WEBライターを取り巻く近年の動向について解説する。

(1) インターネット広告の成長

インターネットの普及とともに、企業が選ぶ広告媒体は変化している。日本の広告媒体は、マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)、インターネット、プロモーションメディア(屋外、交通、折込、DM、フリーペーパーなど)の大きく3つに分類される。民間の調査によると、2022年にマスコミ4媒体とインターネット広告費の割合が逆転し、2023年はインターネット広告費が全体の45.5%を占め、マスコミ4媒体(31.7%)との差は広がっている。

SEO記事は、インターネット広告と同じくWEBを活用した集客方法だが、インターネット広告よりも費用を抑えられる。今後もSEOに取り組む企業は増えていくと予想され、コンテンツを作成するWEBライターの必要性はさらに高まるだろう。

媒体別広告費<2021年~2023年>
(2) フリーランス人口の急増

働き方が多様化し、フリーランス人口が増えている。フリーランスの定義は調査機関により異なり、総務省統計局では本業のみで209万人、内閣官房日本経済再生総合事務局では副業も加算して462万人(本業214万人/副業248万人)としている。また民間の調査では、仕事の対価として報酬を得た人もフリーランスとカウントしている。2015年は937万人だったフリーランス人口は、2020年以降一気に増加し、2021年10月には1,577万人となった。

現在のフリーランス人口・経済規模

また、同じ民間調査でフリーランスとして活動している職種は「ライター」が23.3%を占めている。インターネット上で仕事を完結させたことのあるフリーランスは53.2%というデータもあり、特別な資格を持っていなくても、パソコンとインターネット環境があれば始められるWEBライターの新規参入者は急増したと推察できる。

(3) 生成AIサービスの普及

近年、WEBライター業界で大きな話題になっているのは、ChatGPTなどの生成AIサービスの普及である。簡単に短時間で自然な文章を作成できるため、ライティングの多くはAIに委ねられ、WEBライターの役割も変化していくだろう。

企業側は、できるだけコストを抑えて速く良質な記事を作成したいと考えている。最近では「プロンプトライター」や「プロンプトエンジニア」という職種が転職サイトなどで見られるようになった。プロンプトとは、AIに対する指示や質問のことをいう。良いプロンプトによって、AIに質の高い仕事をさせることが可能となる。

ただし、Googleで評価されるには独自性の高い記事にする必要がある。生成AIサービスを使いこなしながらオリジナリティを追求し、AIだけでは決して書けない「人の心を動かす」価値ある記事を作成していくことが重要だ。

近年のWEBライター事情

WEBライターの働き方は主に2通りあり、企業に勤めるかフリーランスとして働くかを選べる。近年では、政府による働き方改革で副業・兼業を推進する流れもあり、時間や場所に縛られないフリーランスとして活動するWEBライターが増えている。

WEBライターの新規参入が増える中、初心者でも利用しやすいクラウドソーシングに注目が集まっている。クラウドソーシングとは、企業とワーカーがインターネット上でつながり、直接仕事を受発注できるマッチングサービスだ。ワーカーは、本業・副業問わず主婦や学生でも登録できる。

日本労働組合総連合会が行った調査では、WEB上で仕事を受注しているフリーランス1,000名のうち、70.7%の人がクラウドソーシング事業者を利用していることが分かった。

クラウド・ソーシング事業者を利用しているか

クラウドソーシングを利用する企業やワーカーは増え続けており、市場規模は拡大している。例えば、大手クラウドソーシングのクラウドワークスは、2024年現在約632.6万人のワーカーと約97.4万社の企業が利用しており、ライターとして登録している人は少なくとも10万人以上いる。

組織に所属しないフリーランスは、これまでの労働関係法令では保護されにくく、納品後に報酬が支払われないなどトラブルのリスクが高い。クラウドソーシングを通して依頼を受ければ、仮払い分の報酬が保障される。また、トラブルが発生しても、相談できる場があり心強く感じる人も多いだろう。フリーランスの不安を拭える仕組みが、利用者増加の要因の1つと考えられる。

また、政府の成長戦略の一環として、フリーランスが安⼼して働けるよう法整備が行われている。フリーランスと発注事業者間の取引の適正化と、フリーランスの就業環境の整備を目的として、2024年11⽉1⽇に「フリーランス保護新法」が施⾏される。働き方の不安にとらわれず、のびのびと個人の能力を発揮できる時代が来ている。

参考:

WEBライターの仕事

WEBライターの主な仕事は、「リサーチ」「取材」「構成作成」「執筆、推敲」「画像選定」「入稿」に分けられる。

  • リサーチ:公的機関などの信頼できる媒体から、鮮度の高い情報を収集する。
  • 取材:取材やインタビューが必要な案件は、決められた時間内で効率的に取材を行う。
  • 構成作成:読みやすい流れを考え、魅力的なタイトルやSEOを考慮した見出しを作成する。
  • 執筆、推敲:クライアントの規定に沿った用語や表現、文字数で執筆、推敲する。
  • 画像選定:文章を補佐する画像を選定し、挿入する。
  • 入稿:案件によっては、CMS(*2)であるWordPressで入稿する。

(*2)CMS(Contents Management System):WEBサイトを簡単に作成できるツール

※フリーランスの場合は、請求書発行や会計などの「事務作業」も発生する。

WEBライターとして、基礎的なライティングスキルやWEB知識を持つことは必須だ。専門知識や取材スキルを持つWEBライターは希少なため、市場価値が高くなる。また、WordPressの操作や入稿作業ができると、仕事の幅が広がり報酬アップにつながる。

WEBライターのイメージ02

WEBライターの人気理由と課題

人気理由

  1. パソコンとインターネット環境があれば、大きな初期投資はなく手軽に始められる
  2. ライフスタイルに合わせて、時間や場所を問わず自分のペースで仕事ができる
  3. 得意分野の知識やスキルを報酬につなげられる

課題

  1. 計画的に案件を獲得して、安定した収入を目指す
  2. 納期までのスケジュール管理を徹底する
  3. 急増するライバルとの差別化を図り、自身の強みを磨く

開業のステップ

フリーランスとして活動する場合は、以下のような流れになる。

開業のステップ

開業届を提出すると「個人事業主」となり、確定申告の際「青色申告」が可能となる。青色申告をすると税金や国民健康保険料で控除を受けられるため、開業届とともに青色申告の承認申請手続きをすると良い。

参考:

また、2023年10月1日から開始されたインボイス制度(*3)により、クライアントから適格請求書(インボイス)の発行を要請される場合がある。双方で適格請求書を保存することで、消費税の仕入税額控除が適用されるためだ。

WEBライターが免税事業者のままでいると、インボイスを発行できるライターに仕事を回されたり、原稿料を引き下げられたりする可能性があるため、状況を見極めて対応する必要がある。

(*3)インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式):複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式のこと

参考:

WEBライターに役立つ資格

WEBライターになるために、資格や許可は特に必要ない。しかし以下のような資格はスキルアップに役立ち、能力をアピールできるため案件獲得につながる可能性がある。

(1) Webライティング能力検定(*4)

2012年から続く歴史ある検定で、WEBライティングの基礎を学び、実践的なライティング技術を習得できる。受験科目は、WEBライティング基礎の他、国語やSEO、コピー・メールライティング、法律・倫理、炎上対策など6つあり、点数に応じて1〜3級に認定される。

(*4)Webライティング能力検定の詳しい情報は、こちら(一般社団法人 日本WEBライティング協会)をご確認ください。

(2) WEBライティング技能検定(*5)

クラウドソーシングで働くために必要なビジネスマナーや基礎知識、文章作成技術などが身に付く技能検定である。合格すると「WEBライティング実務士」に認定され、提携するクラウドソーシング事業者において優遇を受けられ、仕事の受注率向上が期待できる。

(*5)WEBライティング技能検定の詳しい情報は、こちら(一般社団法人 日本クラウドソーシング検定協会)をご確認ください。

開業資金と運転資金の例

フリーランスとして独立する場合は、次のような資金が必要である。

  • 地代家賃(自宅で仕事をする場合は不要):コワーキングスペース利用料(月額契約)
  • 通信費:インターネット回線使用料、スマートフォン利用料、アプリ利用料(マイクロソフトオフィス・セキュリティ・会計・コミュニケーションツールなど)、クラウドソーシング利用料など
  • 備品・消耗品費:パソコン、周辺機器、セキュリティソフト、文房具、名刺など
  • その他:コワーキングスペース入会金(諸会費)や一時利用料(会議費)、交通費、書籍代など

以下、開業資金と運転資金の例をまとめた(参考)。

開業資金例
運転資金例

会社員から独立してフリーランスになる場合には、健康保険や国民年金、住民税を自分で納める必要がある。経費への計上はできないが、確定申告で社会保険料控除の対象となるため、忘れずに申告する。

売上計画と損益イメージ

フリーランス(完全在宅)で仕事をした場合の1年間の収支をシミュレーションしてみよう。

売上計画イメージ

年間の収入から支出(上記運転資金例)を引いた損益は、以下のようになる。

損益イメージ

ただし、収入例の案件を受注・納品できた場合に見込める売上額であるため、受注状況により損益イメージは変動する。

フリーランスで活動する場合、ライターの経験や実績によって受けられる案件が異なり、収入にも差が出る。例えばクラウドソーシングの募集には、WEBライティング初心者向けに文字単価0.5円という案件もあり、2,000字で1,000円の報酬となる。執筆やリサーチに時間をかけてしまうと、時給換算で最低賃金以下になってしまうため、応募する前に作業にかかる時間をシミュレーションすると良い。

WEBライティングやSEOの基礎知識があれば文字単価1.5円前後、専門知識を持っていれば文字単価5.0円以上の案件を獲得できる可能性が高い。

収入を上げていくためには、専門分野の知識を生かせる案件や、取材記事にも対応できるようになると良いだろう。自分が書いた記事が、誰かの役に立つという使命感も忘れずにいたい。想定読者をイメージして、読みやすく、気付きを得られる記事にすることが大切だ。

専門性と独自性の高い記事が執筆できれば、クライアントとの直接取引や継続依頼の可能性が高まる。常に知識をアップデートさせ、WEBライターとしての市場価値を高めていきたい。

WEBライターのイメージ03

※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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