起業までに必要なタスク(サービス業)

サービス業では、起業までに必要な主なタスクとして「立地調査・選定」「内装工事・設備導入」「サービスメニューの検討」「宣伝広告・プロモーション」があります。ここでは、それぞれのポイントを紹介します。

立地調査・選定

小売業、飲食業と同様に、サービス業においても立地の選定は重要です。なぜなら、立地の選定が集客に影響を与え、最終的な売上を決定づけるためです。好立地の条件として、一般的に「人口が多い地域」「購買力の高い地域」などがありますが、こうした地域は家賃も高額で、競合店もひしめいています。はじめてサービス業を経営する場合、いきなり好立地へ出店するのは現実的ではありません。

重要なのは、皆にとっての好立地を目指すのではなく、「自店にとっての好立地」を見つけ出すことです。たとえば、家事代行業や幼児を対象とした教育関連サービス業であれば、小さな子供のいるファミリー層が居住する住宅街が好立地となるでしょう。
立地と対象顧客はコインの表と裏の関係であり、立地が決まれば対象顧客が決まります。自店のコンセプトに基づいて対象顧客を絞り込み、自店にとって望ましい立地を選定することが大切です。

内装工事・設備導入

立地を選定したら、次は内装工事や設備導入です。内装工事とは、物件内部を自分の実現したいレイアウトやデザインに仕上げることであり、設備導入とは、そこに必要な設備を配置することです。

内装工事にあたっては、内装業者によって強みや実績が異なるため、自身の開業する業態に実績の豊富な内装業者(リラクゼーションサロンであればリラクゼーションサロンの実績が豊富な内装業者)を選ぶことが大切です。
WEB検索から探して連絡をとる方法もありますが、「信頼できるサロン経営者の知人に紹介してもらった」「自身の理想に近い内装のサロン経営者を直接尋ね、内装業者を紹介してもらった」という事例もあります。

こうして連絡を取った内装業者に、実際に物件を見てもらいます。自身の事業コンセプトや店舗イメージを詳細に伝え、図面と見積書を依頼します。この際、複数の内装業者に見積もりを依頼することが重要です。相見積もりを取ることによって内装業者間に競争意識が生まれ、より良い提案を、よりリーズナブルな価格で獲得できるためです。
その後、各担当者の提案内容と費用見積もりを比較し、バランスの良い、自身の気に入った内装業者と契約を結びます。契約後、通常は1週間前後で工事が始まり、店舗の規模にもよりますが、1ヶ月前後で内装工事が完了します。

設備導入に当たっては、予算に応じて新品の購入と中古の活用を検討します。業態によって設備や什器は異なりますが、いずれも中古市場が充実しており、必要な物のほとんどを中古で揃えることができます。できるだけ予算を抑えたい場合は、WEB検索で中古販売サイトやオークションサイトを確認し、物の状態と価格を比較して購入するのが良いでしょう。
ただし、中古品は、微妙に寸法が合わない、汚損があるなどの欠点もあります。ソファや椅子など、顧客が直接触れる物や、使用頻度の高い設備や什器に関しては、新品を購入するのも良いでしょう。

また、サービス業では、そもそも店舗や設備・什器を必要とせず、個人で開業するという事例もあります。たとえば通訳業や翻訳業、イラストレーターやデザイナーなど、自らの特技やスキルを生かし、自宅を事務所として開業する場合がこれに該当します。

サービスメニューの検討

自社のサービスメニューを考えるにあたって、まずは同業態の繁盛店などのサービスメニューを研究することが有効です。全体のメニュー数はどの位か、表示はどのように行っているか、価格の幅はどの位かなど、実際にお店に足を運んだり、HPを確認したりすることで、自店のサービスメニューのイメージを磨いていきます。

また、サービスメニューの構成だけでなく、どのようにして自店のコンセプトを伝えているのかも参考にしましょう。サービスは、製品や商品とは異なり、目に見えないものです。自店の価値、他店とは異なるサービスの魅力を伝えるために、さまざまな企業が工夫を凝らしてメッセージを発信しています。

あるサービス業の店舗では、経営者の思いや考え、おもてなしの精神、接客のこだわり、スタッフの紹介などを手書きの文や写真を貼ってポスターを作成し、受付に掲示していました。このように、自店のコンセプトやサービスに対するこだわりを「目に見える形」で伝えることで、顧客は安心してそのサービスを利用することができるのです。

宣伝広告・プロモーション

いよいよ開店です。顧客にお店の存在を知ってもらい、実際に来店してサービスを利用してもらうために、オープンの前後には集客販促を行うことが一般的です。

前項でも述べましたが、サービス業の宣伝広告・プロモーションで留意しなくてはならないのは、「サービスは目に見えない」という点です。サービスは実際に購入し、自身で使用・体験してみるまで、その価値や品質の良し悪しを判断することができません。そのため、サービス提供者は、自社のこだわりを目に見える形で表現する、初回お試し価格を設定する、サービスの一部を体験できるようにする(教育関連サービス業であれば体験講義を実施するなど)等によって、新規顧客の「目に見えないサービスを利用するハードル」を下げる工夫が重要になります。