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ドイツにポータブルオーディオ機器を輸出することになりましたが、輸入者から電池と包装箱に関する適合宣言が要求されました。CEマーキングでは足りないのでしょうか。

2021年11月10日

ドイツにポータブルオーディオ機器を輸出することになりました。ドイツの輸入者から電池と包装箱の適合宣言が要求されました。
ドイツはEU加盟国なので、RoHS指令とEMC指令のCEマーキング対応で適合宣言するつもりでした。CEマーキングでは足りないのでしょうか。

回答

製品にはCEマーキングだけでなく、多くの規制法が適用されます。ドイツでは、電池規則と包装材規則が改定されました。EU指令の国内法ですが、EU指令に規定されていない点や具体化基準を制定しました。
電池は使用後の廃電池の取り外しに関する条項が明確になりました。
包装はリサイクル義務が明確になり輸入者は包装材の種類や素材を登録し、リサイクル業者との回収契約が要求されます。
潮流として、エコデザインの要求が強化されていますので、情報取集が重要となります。

1.CEマーキング

貴社製品のポータブルオーディオ機器は、仕様によりますが、RoHS指令((EU)2011/65)、EMC指令((EU)2014/30)や低電圧指令((EU)2014/35)などのCEマーキング関連の規制が適用されます。
これらのCEマーキング対応は準備されているとのことですが、製品には多くの規制法があります。
RoHS指令と対象製品が同じ兄弟指令と言われるWEEE(廃電気電子機器)指令((EU)2012/19)も適用されます。WEEE指令は、すべての構成部品、サブアセンブリ、アクセサリ及び消耗品は含みますが、電池、包装、取扱説明書は除かれます。
貴社製品は「電池」を使用し、「包装箱」に入れて販売されています。これらの規制は、CEマーキングの基準には含まれていませんので、電池や包装箱の基準にも適合させなくてはなりません。
ドイツでは、電池や包装箱の基準が改正されたので、輸入者は特に確認を求めたものと思います。
CEマーキングの要求基準及び前記などの基準に適合させる必要があります。

2.電池規制

電池は電池指令((EC)2006/66)が適用されます。電池指令は2006年に告示された指令で、当時の「欧州共同体を設立する条約」第175条(1)(現 欧州連合運営条約 第192条(1))で決定された指令ですので、加盟国の状況に合わせて制定できます。日本の環境法の「上乗せ(基準の強化)横出し(対象の拡大)」と同じです。

ドイツでは電池指令を電気電子機器法(電気電子機器の市場投入、回収、環境に配慮した廃棄に関する法律:ElektroG)で転換して規制しています。
電気電子機器法は2021年5月20日の官報(Gesetzes vom 20. Mai 2021 (BGBl. I S. 1145))で修正されました。発効は2022年1月1日です。(*1)

電池に関して、第4条(製品コンセプト)を以下のように修正(項目追加)しました。(機械翻訳による意訳)

(1)(i)製造業者は、特に古い機器、それらのコンポーネントおよび材料の再利用、解体、およびリサイクルが考慮され、容易になるように、電気電子機器を設計する必要がある。
(ii)電池または蓄電池で完全または部分的に操作できる電気電子機器は、エンドユーザーが問題なく、破壊することなく古い電池および蓄電池を取り外すことができるように設計する必要がある。
注:「問題なく、壊さずに」の意味は、電池または蓄電池を組み込んだ電気電子機器の延命と電池または蓄電池のリサイクルのために、電気電子機器と電池、蓄電池の双方を非破壊で、エンドユーザーが古くなった電池または蓄電池を容易に取り外せることである。
(iii)古い電池または蓄電池をエンドユーザーが簡単に取り外すことができない場合、メーカーから独立した専門家により電気電子機器は、古い電池および蓄電池を簡単かつ非破壊的に、市販の工具を使用して取り外すことができるように設計する必要がある。

(2)製造業者は、特別な設計機能または製造プロセスによる再利用を妨げてはならない。ただし、設計機能が法律で義務付けられている場合、またはこれらの特別な設計機能または製造プロセスの利点が、たとえば健康保護、環境保護、または安全規制に関して有利な場合を除くものとする。

(3)パラグラフ1の第2文節および第3文節は、無停電電源装置と、デバイスと電池または蓄電池との間の永続的な接続が必要な電気および電子デバイスには適用しない。

(4)すべての製造業者は、電池または蓄電池を含む電気電子機器に関する情報を同封する必要がある。このため、エンドユーザーに次の情報を通知しなくてはならない。
(i)電池または蓄電池のタイプと化学システムに関する情報
 但し、前項(3)に従った電気電子機器には適用しない。
(ii)安全な取り外しに関する情報

(i)の「電池または蓄電池のタイプ」とは、電池の種類で、アルカリ乾電池、マンガン乾電池やニッケル水素電池などになります。リサイクルのための情報となります。
「電池の化学的システム」とは、鉛電池でいえば、硫酸と鉛を使用していますし、リチウム電池も多くの種類があります。このような情報を伝えるのが目的です。

この対応としては、貴社はデザインレビューで、上記の電池に関する要求事項を評価項目に入れる必要があります。デザインレビューの評価では、消費者製品であれば、ボタン電池などは子供が容易に取り出せない必要もありますので、考慮しなくてはなりません。

なお、電池指令は改定される見込みで、電池規則(案)が出ています。(*2)

3.包装材規制

包装材も修正されています。
(新)ドイツ包装法(Gesetz über das Inverkehrbringen, die Rücknahme und die hochwertige Verwertung von Verpackungen (Verpackungsgesetz -VerpackG)は、2017年7月5日に公布され、2019年1月1日から段階的に施行されました。(*3)
その後も改正がされ、直近では2021年8月に改正されています。(*4)
ドイツ包装法は、EUの包装および包装廃棄物指令((EC)94/62)によるドイツ国内法です。ドイツ包装法の目的は「包装廃棄物が環境に与える影響を回避または低減すること」です。
対象となる包装は、第3条(定義)(1)で、「包装とは、商品の受け取り、保護、取り扱い、配送、または提示のためのあらゆる材料で作られた製品であり、原材料から加工製品に至るまで、製造業者から流通業者またはエンドユーザーに渡されるもの」としています。
「個人など最終消費者」によって廃棄される包装材のリサイクル目的です。
「個人など最終消費者」は第3条(定義)(11)で以下としています。
レストラン、ホテル、休憩所、食堂、行政、兵舎、病院、教育機関、慈善施設、映画、オペラ、博物館のような文化部門、ホリデーリゾート、遊園地、スポーツスタジアムのようなレジャー部門などです。
これら組織は、一般家庭と同様に紙、段ボール、段ボール、プラスチック、金属、複合包装のための一般家庭での回収箱(最大1.100リットル)で包装廃棄物を処理している場合に適用されます。

改正法により包装材を利用する中身のメーカーは年間の使用し、流通させる包装材の推定量を新たに組織化されて中央包装登録局(Zentrale Stelle Verpackungsregister)の包装登録データベースに包装材の種類と素材を登録する義務(無料)が課せられました。
詳細な対象品目リストは中央包装登録局が公表しています。(*5)
義務者(最初のディストリビューター:ドイツ国内の商品生産者または、生産者が国外企業の場合、ドイツ国内の輸入業者)は包装登録データベースLUCIDに登録した包装材をリサイクル業者に回収を委託しますが、リサイクル業者と回収契約を結び契約金を払うことになります。

なお、EU包装材指令94/62/ECは、1994年12月31日から施行されています。2018年7月4日から、統合版である指令(EU)2018/852が施行されています。
EU委員会は現在、EUの廃棄物の包装と包装の要件を見直しています。(*6)これには、再利用とリサイクルを促進するための包装設計の改善の側面の評価、包装中のリサイクル材料の割合の増加、過剰な包装量の回避、包装廃棄物の削減が含まれます。

この義務者は、輸入者ですので、輸入者と相談することが肝要でます。
ドイツ包装法の改正強化した事項は、リサイクル目標を高くしたことで、その他は従来からと大きな変更はありません。

関連ですが、フランスでは、廃棄物と循環経済との闘いに関する法律(2020年2月10日の第2020-105)の第 112条で以下を規定しています。(*7)

(i)2022年1月1日から、パッケージングにミネラルオイル(鉱物油)を使用することは禁じる。
(ii)2025年1月1日から、一般に印刷する際に鉱物油を使用することは禁じる。
商業的宣伝のために一方的に送る広告チラシやカタログの印刷文字への使用は2023年1月1日から禁止する。
この法律は環境法の構成法でリサイクルを高めることも目的としています。有害物質を含有している場合は、リサイクルができないので、紙などの包装材には印刷インクなどに入っている有害物質のミネラルオイルを入れないようにするものです。
ミネラルオイル規制は、フランスが先行していますが、EU加盟国全体に広がると思われます。

4.ErP指令

WEEE指令第4条(製品設計)でErP(ecodesign requirements for energy-related products:エネルギー関連製品のエコデザイン要件)指令((EC)2009/125)による環境配慮設計を要求しています。(*8)
2021年2月26日に「サーバーおよびデータストレージ製品、電気モーターおよび可変速度ドライブ、冷凍機器、光源および分離制御装置、電子ディスプレイ、家庭用食器洗い機、家庭用洗濯機および家庭用洗濯機および家庭用洗濯機乾燥機および直接冷凍機」の実施規則(エコデザイン基準)の改定が告示されました。(*9)
電子ディスプレイについては、ハロゲンフリーや修理権(最終製品の上市後7年間修理部品の提供義務)の新設などがあります。
ポータブルオーディオ機器には、上記実施規則の範囲外ですが、潮流としてエコデザイン要求が厳しく、また具体化してきていますので、輸入者と協力して情報を収集し、対応をする必要があります。

引用情報等:

回答者

中小企業診断士 松浦 徹也

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