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医療従事者用の白衣の抗菌加工品の認可基準は、EUと日本と同じでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大という非常時ですので、特例措置はあるでしょうか。

2021年 8月20日

医療従事者用の抗菌白衣を製造しています。抗菌試験はJIS L 1902:2015により試験結果を得ています。
繊維製品の抗菌加工品のEUの認可基準は、日本と同じでしょうか。また、新型コロナウイルスの感染拡大という非常時ですので、特例措置はあるでしょうか。

回答

EUは殺生物性製品(除菌剤や抗菌機能付き製品など)を、規則(EU)(528/2012 殺生物製品の市場における利用及び使用に関するEU議会及び理事会規則:BPR)で規制しています。
BPRは殺生物性製品を3段階で規制します。

EUは殺生物性製品(除菌剤や抗菌機能付き製品など)を、規則(EU)(528/2012 殺生物製品の市場における利用及び使用に関するEU議会及び理事会規則:BPR)で規制しています。直近の統合版は2021年6月1日版です。 *1)

(1)要求概要

BPRは、従前の指令((EC)98/8 EUバイオサイド指令)による加盟国法で規制していましたが、EU(ユニオン)で規制するようになりました。国内法では、認可承認が国ごとに行っていましたので、ユニオン規制にする移行処置もあり、分かり難い内容です。しかし、難解な移行処置はほぼ終わっています。
BPRについては、JETROで解説をしています。 *2)
この解説は初期の頃でその後の改正は反映されていませんが、全体像を理解するうえで参考になります。
BPRの独特の用語の定義をご紹介しておきます。

(i)殺生物性製品(biocidal product)

  • 使用者に提供される際の性状が物質あるいは混合物であって、意図的に何らかの単なる物理的あるいは機械的な動作以外の手段によって、ある有害な生物を駆除、抑制、無害化、活動の疎外、さもなければ支配的影響力を及ぼすことを目的とした、それが一つ以上の活性物質からなり、それを含む、あるいはそれを発生させるもの
  • 最初のインデントされた項の分類には入らなかった物質や混合物によって生成されて、意図的に何らかの、単なる物理的あるいは機械的な動作以外の手段によって、ある有害な生物を駆除、抑制、無害化、活動の疎外、 さもなければ支配的影響力を及ぼすことを目的とするすべての物質あるいは混合物
  • 主たる機能として殺生物性を有する処理された成形品は殺生物性製品と見做される。

(ii)活性物質(Active Substance)

  • 物質あるいは微生物であって、それ自身が 直接あるいは間接的に 有害生物に対し作用を及ぼすもの

(iii)処理された成形品(treated article)

  • 一つ以上の殺生物性製品によって処理された、あるいは意図的に含有したあらゆる物質、混合物および成形品をいう。

(2)販売手順

BPRは殺生物性製品を3段階で規制します。

Step1:活性物質(殺生物剤)の承認
Step2:活性物質の販売
Step3:殺生物性製品の認可

(i)Step1

活性物質の承認申請を物質製造者、輸入者が第7条により行います。

(ii)Step2

活性物質として承認された物質はユニオンリストに収載されます。2021年6月30日時点で、評価中、キャンセルを含めて898物質が収載されています。 *3)
抗菌剤や防腐剤などの製品の場合は、第20条の手続きで、殺生物性製品としての承認申請を行います。附属書Iに収載れた活性物質であれば第25条の単純化された手順で承認申請をします。
承認された商品のリスト(authorised biocidal products)には、2021年6月30日時点で、5,173製品が収載されています。*4)
承認された活性物質を扱うサプライヤーは、第95条の手順で“the list of active substances and suppliers”(第95条リスト)に収載されます。*5)

活性物質の承認は、用途が特定され、特定された用途でしか使用できません。用途(Product-Types:PT)は1~22に分かれています。

第1主要グループ:消毒剤
PT1:ヒト衛生用製品
PT2:製品タイプ2:人間または動物への直接適用を目的としていない消毒剤および殺藻剤
PT3:動物衛生用製品
PT4:食料及飼料用製品
PT5:飲料水
第2主要グループ:保存剤
PT6:貯蔵中の製品のための保存剤
PT7:膜保存剤
PT8:木材防腐剤
PT9:繊維、皮革、ゴム及び重合物の保存剤
PT10:建設材料の保存剤
PT11:液体の冷却処理システムのための保存剤
PT12:殺虫剤
PT13:加工液または切削液の保存剤
第3主要グループ:有害生物防除
PT14:殺鼠剤
PT15:殺鳥剤
PT16:殺軟体動物剤、駆虫剤および無脊椎動物の防除製品
PT17:殺魚剤
PT18:殺虫剤、殺ダニ剤及び節足動物の駆除製品
PT19:忌避剤及び誘引剤
PT20:他の脊椎動物の駆除製品
第4主要グループ:他の殺生物性製品
PT21:防汚製品
PT22:死体保存用及びはく製用液体

(iii)Step3

活性物質を使用するには、第95条リストに収載されたサプライヤから入手し、販売製品を製造する必要があります。
リストに収載されていない場合などは、活性物質の承認者から“authorised biocidal products”の利用許可(利用状)を得て、EU域内の事業者であれば、収載申請ができます。*6)

(3)貴社製品(抗菌白衣)について

着衣の抗菌加工ですと、PT2またはPT9の「殺生物性製品」を利用すると思われます。PT2及びPT9の要件は以下となっています。

(i)PT2:ヒト又は動物への直接施用を意図していない消毒剤及び殺藻剤

  ・食品または飼料と直接接触しての使用しない表面、材料、器具及び家具の消毒に使用する製品
  ・使用分野は、特に、水泳用プール、水槽、風呂及びその他の水系
  ・空調システム
  ・個人、公共及び企業分野、及び専門業者が活動するその他の分野の壁及び床を含む使用
  ・空気、ヒトまたは動物の摂取に使用されることのない水、化学トイレ、排水、医療廃棄物及び土壌の殺藻剤
  ・殺菌特性を持つ処理された成形品を製造するための繊維製品、ティッシュマスク、塗料や他の成形品又は材料に組み込み用

(ii)PT9:繊維、皮革、ゴム及び重合物の保存剤

  ・微生物劣化の抑制による皮革、ゴム、紙、繊維状物または重合物の保存に使用
  ・このタイプは、材料の表面の微生物の定着に対抗し、結果として臭気の発生を妨害または防止、及び/又は他の便益を提供する殺生物性製品を含む

貴社製品は、抗菌加工した生地を抗菌白衣に仕立てて商品化されていると思います。
この場合は、第58条(処理されたアーティクルの上市)の手順によります。すなわち、第95条リスト製品で、抗菌処理する/処理されている必要があります。
貴社製品の製品には、抗菌機能を謳うのであれば第58条によるラベル表示が要求されます。

なお、抗菌機能試験は、効果効能を確認された物質を確認された用途(PT1~22)使用しますので、不要です。
日本国内の場合は、「日本産業規格 JIS L 1902:2015 繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果 」(Textiles- Determination of antibacterial activity and efficacy of textile products)に試験方法があります。
JIS L 1902の適用範囲は以下です。
この規格は,不織布を含む全ての抗菌性繊維製品の抗菌活性を評価する定量試験方法及び定性試験方法並びに抗菌効果について規定する。
この規格は,布はく(帛),詰めもの,糸,衣服素材,寝具,家具用繊維及び雑品を含む全ての繊維製品に適用する。抗菌剤の種類は,有機,無機,天然又は合成を問わず,また,加工方法も,練り込み,後加工又はグラフト処理の種類を問わず適用する。

(4)特別措置について

新型コロナのようなパンデミックの場合は、第55条で以下の要件の特別措置があります。
1. 所管当局は、第17条及び第19条の規定(活性物質の認可手順)を適用しないで、公衆衛生、動物の健康又は環境に対する危険であって他の方法により封じ込めることができないもののために必要な場合には、所管当局の監督の下での限定的かつ管理された使用のために、この規則に定める認可の条件を満たさない殺生物性製品を180日を超えない期間上市又は使用することを許可することができる。 (以下略)

所管当局は各加盟国の当局で、各国の当局に個別に申請することになります。加盟国の国内法によることになり、加盟国の国内法を確認する必要があります。*7) 
第55条の認可案件もあります。*8)
貴社製品をEUに販売するのであれば、まずは第95条リスト収載物質を利用するのがよいと思います。第95条リストは、コロナの影響で承認物質が次々と追加されています。

引用情報等:

回答者

中小企業診断士 松浦 徹也

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