ビジネスQ&A

EU離脱後のUKでCEマーキングは継続使用できるか。

2021年 1月22日

弊社は電子機器メーカーで、僅かながらUKの商社に輸出しています。契約によりCEマーキングの貼付をしていますが、UKのEU離脱後も有効でしょうか。

回答

UKEU離脱後も、すでにCEマーキングをしている場合は、特定の要件の製品以外は、2021年12月31日まで有効です。
2021年1月1日からUKではCEマーキングに代えてUKCAマーキングとなりますが、2022年12月31日までは、取り扱い説明書などの付属文書に貼付することができます。
2023年からは、機器本体に貼付しなくてはなりません。
UKのなかで北アイルランドは、経済特区になり、UKN Iマーキングとなります。

(i)離脱法

英国(“The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(略してUK)”)は1973年1月1日にEUに加盟し、2020年2月1日に離脱しました。UKはEUに加盟するにあたり「欧州共同体法1972年(European Communities Act 1972)」を制定しました。(*1)
UKがEUからの離脱のために、同法を離脱日に廃止するための「欧州連合(離脱)法2018(European Union (Withdrawal) Act 2018)」(以下 離脱法)を制定しました。(*2)

離脱法は、離脱後にもはや適切に運用しなくなる法律に対して補正を行うことを可能にするために、二次的な法律(規則や指令などから制定される法令)を作成するための一時的な権利を設定しています。
離脱法のSec.2(EU国内法の保持)で「EU法に基づく国内法は、離脱日の直前に国内法で効力を有するので、離脱日の当日およびその後も国内法で効力を有し続ける。」としています。
2020年12月31日までUKはEU法に基づく国内法が適用されました。従って、2020年12月31日までのEU法の改定も反映されますが、それ以降は反映されなく、UKの判断で改定内容が決められます。
なお、離脱後は法令の判断はUK裁判所が担います。

(ii)EMC指令やRoHS指令等のニューアプロ—チ指令について

EUのニューアプロ—チ指令は2020年12月31日までに英国国内法で転換されUKで運用されています。
EMC指令(Electromagnetic Compatibility - Directive 2014/30/EU)は、電磁両立規則 2016(Electromagnetic Compatibility Regulations 2016)(*3)です。
低電圧指令(Low Voltage Directive 2014/35)は、電気機器(安全)規制2016(Electrical Equipment (Safety) Regulations 2016)(*4)です。
RoHS指令(2011/65/EU)は、“The Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment Regulations 2012”(*5)として英国法として制定されています。
ニューアプロ—チ指令の市場監視当局等が運用する規則765/2008/EC(*6)や事業者の義務を示す決定768/2008/EC(*7)も制定されています。
ニューアプロ—チ指令もEUで法改正が行われない限り同じ規制内容です。

(iii) UKCAマーキングとUKNIマーキング

2021年1月1日にUKは、EUから離脱しました。北アイルランド(NI)はアイルランド共和国(Republic of Ireland NI)とハードな国境がなく、NIは経済特区として扱われ、GB(Great Britain:イングランド、ウェールズ、スコットランド)とNIは若干異なる対応となり、GBはUKCAマーク、NIはUKNIマークとなります。
UKCA(UK適合性評価)マーキングは、英国(イングランド、ウェールズ、スコットランド)で市場に投入される商品に使用される新しい英国製品マーキングです。これは、以前にCEマーキングを必要としていたほとんどの商品が対象です。
UKCAマークは下記からダウンロードできます。(*8)
UKCAマーキングは、CEマーキングと同様に、技術文書を作成し適合宣言書は発行します。
技術文書は、英語で作成し、市場監視当局の要求により提出できるようにしなくてはなりません。
ただ、CEマーキングと異なり、適合宣言の法律はUK法、整合規格(harmonised standards)はUK標準規格(BS規格)でなくてはなりません。
EUの整合規格はEN規格(European Norm)ですが、多くがEN規格とBS規格は同じになっています。例えば、RoHS指令の整合規格は BS EN IEC63000:2018 となっています。

仮に、貴社製品を電気電子機器に組み込んで上市する場合は、REACH規則ではなく、RoHS指令が適用されます。濃度計算の分母は共通ですが、分子が違います。REACH規則は、DEHP、DBP、BBP、DIBPの合計ですが、RoHS指令は個々のフタル酸エステルになります。
最大許容濃度は共に0.1重量%ですが、サプライヤーからの含有情報を入手する場合に留意しなくてはなりません。

(iv) UKCAマークに関する経過措置

2021年1月1日からUKCAマーキングとなりますが、多くの製品について、経過措置(*9)が認められています。
経済事業者(製造業者、輸入業者又は販売業者)は、UKCAマーキングが実施されていることを確保するために合理的な措置が求められ、UKCAマーキング対応がされていない場合は販売などにより利用可能にすることができません。
しかし、CEマーキングは、自己宣言に基づいて製品にCEマーキングを適用していた場合などでは、2021年12月31日まで、CEマーキングを使用することができます。
当然ながら、EUが規則(指令)を変更し、英国の要件とは異なる新しいEU規則に基づいて商品にCEマークを付ける場合、英国でCEマークを使用することができなくなります。

しかし、次の製品はCEマークが使えず、UK国内法の適用となります。

  • オールドアプローチで規制されている商品(化学物質、薬品、自動車、航空宇宙機器など)
  • UK国内法(英国製品安全法など)で規制されている商品
  • 医療機器、鉄道機器、建設資材、爆発物などの特殊製品

UKCAマーキングは製品自体に添付する必要がありますが、2023年1月1日まで、商品自体ではなく添付文書でこれらの詳細を提供することができます。 

参考情報:

回答者

中小企業診断士 松浦 徹也

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