ビジネスQ&A
従業員はリモートワークの継続を希望しているものの、出社の方が成果を上げやすいという意見もあり、どのように判断すればよいでしょうか。
2026年 2月 4日
コロナ禍で導入したリモートワークを今後も継続すべきか、それともオフィスワークに戻すかで悩んでいます。何を基準に、どんなことに配慮して判断すればよいか教えてください。
回答
仕事の成果を最大化するうえで、「リモートワーク」と「出社」のどちらが優れているかについて、すべての企業に当てはまる一律の正解は存在しません。大切なのは、全体をひとくくりにして判断するのではなく、業務内容や従業員の事情などを総合的に踏まえ、自社にとって最適な働き方を模索することです。その際に欠かせないのが、従業員との十分な対話です。会社の方針を一方的に押しつけるのではなく、互いに納得と共感を持ちながら進めていくことが、成功の鍵となります。結果として、リモートワークと出社を自社に合わせてきめ細かく組み合わせたハイブリッド型の働き方が、現実的な最適解となるケースも多いでしょう。
1.リモートワークの現状、メリットとデメリットとは
まずは、リモートワークの現状と、そのメリット・デメリットを整理しておきましょう。
(1)リモートワークの現状
リモートワークは、もともと働き方改革やBCP(事業継続計画)対策の一環として、大企業を中心に導入が進められてきました。新型コロナウイルス感染症の流行を機に一気に普及しましたが、その流行が落ち着いた現在は「出社回帰」の動きも見られています。一方で、出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッド型」を定着させている企業も多く、今後もリモートワークは多様な働き方のひとつとして、社会に根づいていくと考えられます。
(2)リモートワークのメリット
1.従業員満足度の向上
通勤が不要になることで身体的な負担が軽減され、家族との時間、育児・介護、趣味や副業などに充てる時間も確保しやすくなります。こうした生活の充実は、結果としてパフォーマンス向上にもつながります。
2.コスト削減
出社人数が減れば、オフィスの縮小による賃料の削減が可能になります。また、通勤手当、光熱費、紙代などの諸経費も抑えられます。
3.定着率向上・採用競争力の強化
リモートワークは従業員満足度を高め、離職防止にも効果があります。売り手市場の現在、辞めた人材の補充よりも、既存社員の定着を図るほうが、はるかに効率的で経済的です。また、居住地や育児・介護などの制約を超えて人材を採用できる点も、大きな強みです。
4.事業継続性(BCP)の確保
災害や感染症の流行などで出社が困難になっても、リモートワークの体制が整っていれば、事業を継続できる可能性が高まります。
(3)リモートワークのデメリット
1.コミュニケーション不足
リモート環境では、対面に比べて意思疎通が不足しがちです。その結果、以下のような弊害が生じやすくなります。「出社の方が成果を上げやすい」と言われる背景には、こうした要素があります。
- 手戻りやミスの増加(効率性の低下)
- 対話から生まれる新しい発想の減少(革新性の低下)
- 一体感・帰属意識の希薄化(士気の低下)
2.労務管理・人事評価の難しさ
管理者が従業員の働きぶりを直接確認しづらくなるため、適切な労務管理や納得感のある評価が難しくなる傾向があります。
3.セキュリティリスク
社外ネットワークや私用端末の使用により、情報漏洩のリスクは高まります。
2.自社にとって最適な勤務形態をどう見極めるか
次に、実際に自社では、どのような勤務形態で業務運営をしていくべきか、基本的な方向性と進め方の手順をまとめます。
(1)基本的な考え方
繰り返しになりますが、「リモートか出社か」という二者択一で考えるべきではありません。業務内容や組織の特性、従業員の状況を総合的に見ながら、自社に最適な形を探ることが重要です。
(2)最適な働き方を導く3つのステップ
1.業務の棚卸し
まずは、自社の業務を整理することから始めます。「自社はどんな価値を社会に提供したいのか」「そのために、どの業務がどんな形で行われるべきか」という視点から、リモートと出社のどちらが適しているのか、業務単位で冷静に見極めます。部署ごと、業務ごとに判断することが重要です。
2.従業員の個別事情の把握と対話
会社としての方針を決めた後も、従業員一人ひとりの事情(居住地、持病、育児・介護、入社直後など)を丁寧に汲み取る必要があります。合理的な理由がある場合には、柔軟な例外運用を認めることが、士気の向上や定着にもつながります。
3.PDCAと継続的な見直し
働き方は一度決めたら終わりではありません。社会情勢や事業環境、従業員のライフステージの変化に応じて、定期的に見直し、改善を重ねていく姿勢が欠かせません。
3.成果を高めるためのポイント
最後に、リモートワークと出社を組み合わせた「ハイブリッド型」をベースに業務運営を行う中で、より高い成果を上げるためのポイントを整理します。
(1)「リモートワーク」に関するポイント
1.適切な労務管理、公平で納得感のある人事評価
リモートワークでは、従業員の労務状況や働きぶりを、出社時のように「目で見て」把握することができません。そのため、リモートワークを前提とした労務管理・人事評価制度の構築が不可欠です。
また、制度を整えるだけでなく、それが現場で適切に運用され、従業員にとっても納得感のある評価として機能しているかどうかが重要です。そのためには、管理者向けの研修を通じて評価ノウハウを確実に共有したり、業務管理に有効なツールを導入したりすることが有効です。
さらに、日々の業務において、経営者・管理者と従業員の間で、アウトプット(成果物)のすり合わせを丁寧に行い、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を密にすることで、信頼関係の構築につながります。こうした積み重ねが、適切な労務管理・人事評価、ひいては高い成果の創出へと結びついていきます。
2.コミュニケーションの活性化
リモートワークでは、意識しなければコミュニケーションが不足しがちになります。そのため、チャットやビデオ通話などのITツールを積極的に活用し、意図的にコミュニケーションの機会を設ける工夫が重要となります。
ITツールをうまく活用することで、単なる業務の効率化にとどまらず、
- 部門を越えた情報共有
- 創造的な意見交換
- チームとしての協働
といった取り組みも実現しやすくなります。これにより、社員の一体感の醸成や、組織全体の成果の向上が期待できます。
3.セキュリティ対策
リモートワークでは、社内ネットワーク以外の通信環境を利用したり、従業員の私用端末(パソコンやスマートフォン)を使用したりする場面も想定されます。その結果、顧客情報や社内情報の漏洩リスクは、出社時よりも高まりやすいという点を十分に認識しなければなりません。
対策としては、
- ITツールの導入などによるハード面での対策
- 情報管理研修などを通じた従業員のセキュリティ意識向上というソフト面での対策
の両輪で進めていくことが重要です。
(2)「出社」に関するポイント
1.出社目的の明確化
出社を求める場合には、「なぜ出社するのか」「出社によって何を実現したいのか」という目的を明確にし、会社と従業員の間で共通認識として持つことが極めて重要です。目的があいまいなままの出社は、かえって形骸化し、パフォーマンスの向上にもつながりません。
2.「ハイブリッド型」におけるチームでの出社日合わせ
ハイブリッド型の場合には、
- チームビルディング
- 対面の方が効果的な打ち合わせ
- 革新的なアイデア創出
といった、「出社した方が効果の高い業務」を特定の営業日に集中的に実施するなど、できるだけチーム単位で出社日を合わせる運用も効果的です。
3.オフィス環境の整備、出社インセンティブの創出
オフィスのレイアウトやデスク、打合せスペースの配置についても、「出社ならでは」のコミュニケーションが自然に生まれるよう、改めて最適化を検討することが重要です。例えば、偶発的な会話が生まれやすい導線や、気軽に打ち合わせができるスペースの配置などが考えられます。
また、
- 出社手当
- 出社した従業員へのランチ券
- 飲食物や菓子類の提供
といった小さなインセンティブの積み重ねも、出社への心理的ハードルを下げ、コミュニケーション活性化を後押しする有効な施策となります。
自社にとって最適な働き方を模索し、従業員のパフォーマンスを最大化していくためには、第三者の専門的な視点も有効です。中小企業診断士などの専門家への相談も検討してみてください。
- 回答者
-
中小企業診断士 中嶋 大志
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