ビジネスQ&A
企業機密の漏洩を防ぐにはどうしたらよいですか?
自動車部品の下請製造業です。親企業からの発注書類の中に、親会社の重要な機密事項が入っていますので、外部に漏れたら大問題になってしまいます。そこで、情報漏れを防ぐ社内体制を構築するには、どのようにして行ったらよいでしょうか?
回答
企業機密漏洩対策は一般的な方法に加え、体系的な取り組みが大切であり、常に見直しをすることが求められます。また根源的には「従業員の働きがいや生きがい」を見出すための仕組みづくりを含め、従業員を大切にすることです。
昔も今もこの「企業機密の漏洩」には多くの会社が悩まされてきました。つまり、社内における多くの方の知恵や努力の結晶だけでなく、大切な取引先の情報などが他社に流れてしまい、企業経営上の大きな損害を被ることになります。
企業秘密と言われるものには新製品等の情報や設計図面、製造ノウハウ、顧客情報、製品原価などがありますが、こうした秘密事項の中でも特に、機密性が高いものを「営業秘密」として国が定める「不正競争防止法」ではこれを保護しています。
こうした、企業機密の漏洩を防止するには、次のような方法が考えられます。
【一般的なチェックリスト】
一般的な方法としては、以下の事項がよく行われています。
- 機密書類には(秘)とか「厳秘」などのスタンプを押し、一般情報との区分けをします。(ただし、これは「秘密情報ですよ」とまわりに告知をするようなものであり、その方法には多少の工夫が必要です。)
- 機密書類にアクセスできる権限を社員レベル(部署別、役割別)において設定します。
- 特に重要な秘密情報を保管庫とか別室に保管し、担当者などの出入りをチェックします。具体的には、人員出入り簿の設置、さらには監視カメラで出入りをチェックします。
- パソコンのアクセスなどにパスワードやID、さらには生体認証の設定をします。
- 秘密情報の書類など複製不可(特殊用紙の活用など)の設定をしておくことのほか、誰が印刷したのかを追跡できるようにしておきます。
- 書類だけでなくUSBメモリーなどでの社外持ち出しを厳禁とします。
- パソコンを含め、秘密情報機材・書類などの廃却についてその基準化と方法を定め、厳重に管理します。
などいろいろとあります。
しかしながら、これらは機密情報管理としての必要条件かもしれませんが、十分とはいえません。そこで、次のような防止方法をおすすめしたいと思います。
【体系だった防止法】
1.情報の仕分けの実施
- 多くの技術情報や取引先を含めた営業関連情報、仕入先や生産に関する情報などのうち、企業にとって特に大切な情報をピックアップし、体系的に整理して把握します。
- こうした情報の中で、特に、競争他社や外部に漏れた場合、自社および得意先にとって大きな損害を被りそうな情報を「重要秘密」として選別します。
- この場合、選別の基準枠を大きくすると、ほとんどが対象となってしまうという結果を招きますので、基準枠の設定は厳しめにすることとし、社内でよく論議をしておきましょう。
2.現状の管理方法のレビューと補整
- 重要秘密別に「アクセス制限の中身」「分離・保管方法」「部署外持ち出しのルール」「複製のルール」「廃却方法」「保管施設全体の守秘体制」といった秘密情報管理項目について、現状の方法を一旦まとめます。
- 重要秘密別のこうした方法について、担当部署だけでなく客観的な立場の部署を含めて検討し、現状の手法について過不足はないか、さまざまな角度からレビューします。
- こうした検討を踏まえ、秘密情報管理項目それぞれについての管理方法を補完、修正し、マニュアル化をすることにより、全社的に共有します。
【根源的な方法】
- 基本は「ヒトを大事にする」ということです。どんなに管理を厳重にしても、必ず破られてしまうのが世の常です。上司や経営トップを信頼し、会社の発展のために惜しみなく働こうとする社員でしたら、営業秘密を外部に漏らすなど不正を働き、私腹を肥やそうなどということはありえません。
- 日常的に、自分の部下との人間関係をより深め、「部下の働きがいや生きがい」を見出すための仕組みをどのように創ってあげるかに、腐心することも会社の役割です。
- 就業規則等において会社の機密を漏洩しないような規定を設け、従業員との秘密保持契約を締結したりすることも、1つの方策かもしれません。しかし、本質はもっとプリミティブなところにあります。「ヒトを大事にする」 これが企業秘密防衛の一番の近道であり、大切なことです。
- 回答者
-
中小企業診断士
草間 亨
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