ビジネスQ&A
クーリングオフは、店頭で販売した使用済みの商品でも対象になるのでしょうか?
蒲団屋を経営しています。あるお客様に枕を販売したところ、3日後に、「寝心地が悪い。クーリングオフ期間中だから、返品させてくれ。」と言われ、商品を戻されました。すでに使用済みの枕なので、できることなら引き取りたくはないのですが、どうすればよいでしょうか?
回答
いわゆる「クーリングオフ」の制度は多種多様ですが、主要なものとして「特定商取引に関する法律」および「割賦販売法」で定められた「クーリングオフ」制度があります。多くの場合、店舗内での取引においては、いわゆるマルチ商法ではない限り、クーリングオフの適用がありません。したがって、持ち込まれた枕をできれば引き取りたくない、ということであれば、お客様には丁重にお断りしましょう。なお、事業者の方には、原則「クーリングオフ」制度が適用されないため注意が必要です。
クーリングオフの制度は、消費者保護を背景に生まれた制度で、そもそも「物品やサービスの購入希望者が『自ら営業所に出向いて購入』する場合とは異なり、販売員が自宅や勤務先に訪問してくるなどして、訪問を受けた際には、とくに購入意思が希薄な状況であったにもかかわらず、販売業者の勧誘により冷静さを失って契約させられた結果、事後に契約の履行や解約などのトラブルが発生することが多いこと」を考慮して、買主となる一般消費者を保護するために認められた制度です。
最近、増えているご相談として、事業者の方から「リースで電話機を導入したのですが、リース契約をクーリングオフできませんか?」といった内容のご質問があります。前述のとおり、クーリングオフは消費者保護を背景として生まれた、すでに成立している契約を一方的に解約できるという『特例』を認める制度であるため、事業者に対しては適用がありません。事業者の皆様が契約を行うときには、クーリングオフはできないものと考えた方がよいでしょう。
たとえば、大家さんが自己のアパートに消火器をリースで設置するような場合、大家さんは事業者であるため、このリースで購入した消火器の契約はクーリングオフの対象外となります。このように、ご自分が事業者という自覚のないままに契約に至るケースも多いと思います。ご自分で事業をされている方は、十分ご注意ください。
さて、クーリングオフの制度を定めた法律で、中心的なものには、「特定商取引に関する法律」および「割賦販売法」がありますが、これ以外にも、保険業法や宅地建物取引業法など、さまざまな法律によって、クーリングオフの制度が定められています。
対象となる商品・サービスや、適用となる法律が異なるため、クーリングオフ制度のその期間や条件が千差万別です。ここでは、代表的なものを表1にまとめてみました。
※ 上記に記載した内容に加え、さらに法令の中で、クーリングオフできる商品や権利・サービスが定められていますので、ご注意ください。
クーリングオフ制度では、「8日以内であれば解約可」というものが多いのですが、必ずしも「8日」というわけではないので、注意が必要です(表1参照)。
一方、雰囲気的にクーリングオフ制度がありそうな『通信販売』や、クーリングオフが適用になる商品であっても、顧客側から営業所に自ら出向いて、商品を購入した場合などは、クーリングオフが適用にならないケースがありますので注意が必要です。
クーリングオフの制度は、「消費者側から一方的に契約を解除するもの」ですから、そのルールもきちんと定められています。したがって、クーリングオフを実際に利用できるかどうかは、「自分の契約内容」、「対象商品(権利・サービス)」、「クーリングオフの期間」を確認し、判断する必要があります。
さて、ご質問のケースですが、もし店頭販売しているのであれば、枕の販売がいわゆるマルチ商法に該当せず、また、お客様の自宅を訪問したうえで枕を販売するなどの訪問販売やキャッチセールスなどにも該当しないため、法制上のクーリングオフの制度は適用がありません。したがって、お客様から返品された枕を引き取る義務はありませんので、お客様に納得いただいたうえで、枕をお買い上げいただきましょう。
なお、法律に基づくクーリングオフ制度以外に、自主的にクーリングオフの制度を設けて商品を販売している事業者もいます。これも、マーケティング戦略の一環と考えられます。このように考えると、今後の取引を考えて、枕一つを引き取っておくのも一つの考え方であると思います。
クーリングオフの制度は、事業者としてだけではなく、一般消費者として知っておいて損のない制度です。たとえば、東京都消費生活総合センターにも、クーリングオフ制度について解説しているHPがありますので、参考にされるとよいでしょう。
- 回答者
-
中小企業政策研究会
同じテーマの記事
- クーリングオフは、店頭で販売した使用済みの商品でも対象になるのでしょうか?
- 環境ISOを取得するには、どのような公的支援が受けられますか?
- ISO22000について教えてください。
- ISO14001について教えてください。
- 自社にとって有利な取引条件に改善するにはどうすればよいですか?
- 顧客からのクレーム対応時に気をつけなければいけないことは何ですか?
- 顧客情報の流出や従業員の不正などのリスクをマネジメントする方法を教えてください。
- リスクマネジメントの一つであるBCPについて教えてください。
- プライバシーマーク取得の効果は何ですか?
- リスク分析、評価をどのように進めればよいでしょうか。
- インフルエンザ・パンデミックやその対策について簡潔に教えてください。
- 社内の震災対応などの防災対策を見直すには、どのようにすればよいですか?
- BCP策定のメリットと留意点は何ですか?
- 防災対応のために会社が持っておくべき情報を教えてください。
- 情報資産の風水害への対応体制はどうすればよいでしょうか。
- 企業の社会的責任(CSR)について教えてください。
- 風水害に備えて、自社に合った対策の立て方を教えてください。
- 企業機密の漏洩を防ぐにはどうしたらよいですか?
- 改正民法における中小企業への影響はありますか?
- どのような情報が「個人情報」にあたりますか?
- 私の会社も「個人情報取扱事業者」に該当しますか?
- 民法改正によって変わる時効の規定を教えてください。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について知りたい。
- プラスチック製買物袋有料化について、どのように対応したらよいでしょうか。
- 新型コロナウイルスの感染症の影響による事業継続について何を準備すればよいか教えてほしい。
- 新型コロナウイルス感染症の第2波や自然災害に備えるための計画があると聞きましたが、どういったものなのでしょうか?
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について、どのように対応していけばいいでしょうか。
- 内部監査をオンラインで実施する際の注意点を教えて下さい
- HACCP対応のための支援制度はありますか?
- JFSM(Japan Food Safety Management Association)とは何のことですか?
- 食品製造業向けの有効なクレーム対応方法はありますか?
- 米国への日本酒輸出のために対応すべき、FSMAについて教えてください。
- 食中毒の原因や種類、予防方法について教えてください
- 飲食店での産業廃棄物処理の留意点について教えてください。
- SQF取得にあたり、そもそもの所から教えてください。
- 食品リサイクル法について教えてください。
- 食品製造業がHACCPへ取り組むにあたって考慮すべき点を教えてください。
- 喫茶店の開業を予定しています。営業にあたり必要となる許認可制度が変更になったと聞きましたが、どうしたら良いでしょうか?
- 総合衛生管理製造過程承認制度の留意点を教えてください。
- 食品工場内の設備に組み込むハンドラーやコンベヤなどの搬送設備についてHACCP対応が要求されています。 RoHS指令およびREACH規則を遵守していることでHACCP対応しているといえるでしょうか。
- 飲食店のHACCP対応は何から始めたら良いですか?
- 健康経営とは何ですか?どのように始めたらよいですか?またどのような効果がありますか?
- 中小企業にもセキュリティ対策は必要なのでしょうか?
- IT化とDXの違いを、中小企業がDXに取り組む際のポイントと併せて教えてください
- どうすれば業務の属人化を防いで、技術・技能承継をスムーズに進めることができるでしょうか。
- なぜ今Pマークの取得が求められているのでしょうか?
- BCPの策定と運用のポイントを教えてください。
- 従業員のメンタルケアの方法や注意点などについて教えてください。
- 物価高騰に対して中小企業がどのように対応していったらよいか教えてください。
- 時代の変化を見通した就業規則の直し方を教えてください。
- サイバーセキュリティ対策を行うためのツールについて教えてください。