ビジネスQ&A
食品リサイクル法について教えてください。
2021年12月 9日
社員2人、創業10年の食品製造業を経営しています。食品残さを減らす取組みを検討していますが、食品の再生利用等を通して食品残さの減少につなげられる食品リサイクル法について教えてください。
回答
平成13年5月1日に施行された農林水産省管轄の法律です。長期目標を具体的数値化することにより、食品関連事業者・農林漁業者等・再生利用事業者が一体となり、食品ロスの減量化を図ることを目的とした法律です。
趣旨
食品の売れ残りや食べ残し、製造過程において大量に発生している食品廃棄物について、発生抑制と減量化により最終的に処分される量を減少させるとともに、資料や肥料等の原材料として再生利用するために、食品関連事業者よる食品循環資源の再生利用等を促進することを目指すものです。
業種別の目標設定
基本方針では、食品関連事業者が再生利用等に取り組むための「再生利用等実施率(業種別の目標)」や「基準実施率(個々の事業者の目標)」が設定されています。業種別に定められた再生利用等実施率は、個別の義務ではなく、業種全体での達成目標となります。
再生利用等実施率の計算式
毎年、その年度の再生利用等実施率が事業者ごとに設定されたその年度の基準実施率を上回ることを求められています。
再生利用等実施率 = その年度の(発生抑制量 + 再生利用料 + 熱回収量 × 0.95 + 減量量)÷ その年度の(発生抑制量 + 発生量)
リサイクルの現状
食品製造業から排出される廃棄物等は、量や質の安定などから栄養価を最も有効に活用できる飼料の再生利用が多くなっています。一方で、食品小売業や外食産業から排出される廃棄物は、衛生上の問題もあり、飼料や肥料には不向きなものも多いため、焼却や埋立等により処分される量が多くなっています。
また、食品製造業においては、再生利用等実施率は既に目標値である95%に達している一方で、その他の業種では現状と目標値に大きな開きがあります。
登録再生利用事業者制度
食品廃棄物等の再生利用を行うリサイクル業者は、申請に基づき登録されます。
令和元年10月10日時点で165の事業所が登録されています。
食品リサイクル法に基づく定期報告
食品廃棄物等を多量に発生させる食品関連事業者(多量発生事業者)は、毎年度、食品廃棄物等の発生量や再生利用等の取組状況を農水大臣に報告しなければなりません。2019年度以降の定期報告(2019年4月~2020年3月の実績が対象)は、食品廃棄物等の発生量・再生利用実施量に関して、「都道府県」から「市町村毎」の把握が必要となる変更がありました。これにより、多量発生事業者は、市町村毎のデータ等報告が必要になりました。
農水大臣は、多量発生事業者に対して、必要に応じて指導・助言を行い、さらに著しく不十分であると認められると、勧告、公表及び命令が行うことができます。つまり、食品リサイクルへの取組が不十分であると業務停止命令が出され、事業継続が出来なくなるので、大変重たいものと認識しておく必要があります。
- 報告の対象
当該年度の前年度に、食品廃棄物等の発生量が100トン以上である食品関連事業者です。 - 活用方法
「食品循環資源の再生利用等を実施すべき量に関する実施率の目標」等の見直しや事業系食品ロス削減目標の設定、食品リサイクル法に基づく施策を推進するための資料として活用されます。 - 報告様式
定期報告書様式を利用して報告します。該当年度用に計算式の設定もされているので、報告年度に対応した用紙を使用します。
改正
食品リサイクル法は平成19年に一部改正が行われました。
食品関連事業者(特に食品小売業・外食産業の事業者)に対する指導監督の強化と取り組みの円滑化が図られました。
また、再生利用等に「熱回収」が認められることになり追加されました。食品リサイクル法では、再生利用等の実施の手段として、再生利用が困難な場合に一定の効率以上で行う熱回収を選択できることとしています。熱回収は、あくまでも、再生利用の実施が困難な場合に選択するもので、まず、肥飼料化等の再生利用を検討すべきで、基本方針に熱回収の位置づけ、考え方が示されています。そのため、適用条件は厳しく、例えばいくつかの条件のうちの一つとして、事業活動に伴い食品廃棄物等を生ずる食品関連事業者の工場又は事業場から75kmの範囲内に特定肥飼料等の製造の用に供する施設が存しない場合に行うものであることとされています。これは、75km圏内に再生利用施設が無いのは、北海道、北東北、南九州などの一部地域であることから、こうした地方での取組可能な方法も新たに認められたものです。
食品ロスの取り組み
食品ロスについては、各地方自治体において、ゴミ削減の観点を中心とした取り組みが実施されています。これに加えて、消費者や社会情勢の変化に合わせた対応を検討します。
例)京都市「生ごみ3キリ運動」、長野県「ごみゼロの日」など
また、フードバンクの活用も注目されています。日本ではNPO法人が主体的にネットワークを構築し、個人でも参加できるような取り組みとして年々活用されるようになってきました。
出典:農林水産省、環境省
- 回答者
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中小企業診断士 三海 泰良
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