ビジネスQ&A

リスク分析、評価をどのように進めればよいでしょうか。

当社は従業員100名で情報機器の製造・販売を行っています。これまで30年間、特に大きなリスクを受けることなく順調に経営をおこなってきました。ところが、大規模な震災関連のニュースを聞いて心配になりました。手順を踏んだリスク分析、評価が必要だと思いますが、どのように進めればよいかわかりません。リスク分析、評価の進め方を教えてください。

回答

リスク分析、評価は、リスク発見・リスク特定・リスク算定・リスク評価の4つのステップで進めます。リスクマネジメントとして対象とするかの判定は、リスクの発生確率と損害の大きさの二つの尺度によります。

リスク分析、評価は、リスクマネジメントにおける最も重要なプロセスであり、リスク発見・リスク特定・リスク算定・リスク評価の4つのステップで進めます。
なお、必要以上の精度を求めるより、早急にリスクマネジメントが開始できるように心がけることをお勧めします。精度については、継続的にリスク分析、評価をおこなうことで、精緻化を図ればよいと思います。

【リスク発見】

はじめに、リスクの全体像を把握するために、漏れのないようにリスクを抽出します。このリスクの発見は、企業の内部情報、および外部情報から広く集めます。

【リスク特定】

次に、発見されたリスクの中から、企業にとって重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定、あるいは不特定に選別します。リスクマネジメントの対象とする必要がないリスクを不特定として除外していきます。

【リスク算定】

さらには、特定したリスクの重大性を算定します。事態の起こりやすさ(発生確率)と事態が発生した場合の影響の大きさ(損害の大きさ)の二つの要素で、定量的、あるいは定性的に算定します。
ただし、残念ながら、すべてのリスクを同一基準で算定する手法はありません。したがって、いろいろな手法を使い分けてリスクの算定を行います。代表的な算定手法としては、定性的シナリオ分析法、数値シミュレーションがあります。

【リスク評価】

そして最後に、算定したリスクを、あらかじめ決めたリスク基準と比較し、対応の要否、重要度を判定します。つまり、リスクマネジメントとして、対策を実施するリスクを最終的に決定し、重要度のランク付けをします。
一般的に、リスク評価は、事態の起こりやすさ(発生確率)と事態が発生した場合の影響の大きさ(損害の大きさ)の二つの尺度から評価します。

評価の手法には、この二つの尺度について、それぞれ「掛け算型」、「足し算型」、「散布図型」とする手法があります。
「掛け算型」とは、「発生確率×損害の大きさ」で評価します。確率・統計学における期待値の概念です。
「足し算型」とは、「発生確率+損害の大きさ」で評価するものです。この場合は、単位が異なるので、両者を相対的な点数のようなものにする必要があります。
「散布図型」とは、「発生確率」と「損害の大きさ」を散布図にプロットした時の、位置関係で判定するものです。「リスクマップ」、あるいは「リスクマトリックス」とも呼ばれます。視覚的にわかりやすいため、最も用いられている手法です。

回答者

中小企業診断士
芳賀 知

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