ビジネスQ&A

総合衛生管理製造過程承認制度の留意点を教えてください。

2022年 2月2日

社員5人、創業20年の食品製造業を経営しています。HACCP(ハサップ)といえばかつてはマル総(総合衛生管理製造過程承認制度)がその役割を担ってきたと聞きましたが、どのような内容か教えてください。

回答

総合衛生管理製造過程承認制度(通称:マル総)は、厚生労働省がHACCPの概念を取り入れて作った食品安全管理の認証制度です。具体的には、対象食品の営業者が HACCP の考え方に基づいて自ら設定した食品の製造や加工の方法、衛生管理の方法を対象として、これらを厚生労働大臣が承認基準に適合するかどうかを個別に確認するものです。令和2年6月1日をもって廃止されましたが、有効期間満了日までは従前のとおり取り扱います。

承認対象となる食品

  • 乳製品
  • 清涼飲料水
  • 食肉製品
  • 魚肉練り製品
  • 容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルト食品)

マル総は日本でHACCP認証が導入される足がかりとなりましたが、現在は政府認証から民間認証が主流となり、内容の不十分さを指摘されるようになったこともあり、役割を終えることになりました。具体的な日程として、令和2年6月1日をもって総合衛生管理製造過程承認制度(改正前の第13条及び14条)は廃止されています。ただし、それより前に承認・更新の手続きが完了したものについては、その有効期間満了日までは従前のとおり取り扱います。
マル総の認証範囲は、一般衛生管理方法や食品に品質に関する危険予測も含んでいることなど評価されている面もあり、2021年2月現在でも345施設が承認を受けています。
食品衛生法第13条で定められている制度です。また、途中で次のような改正も行われました。

《 改正点 》

  • 承認取得後も検査があり、違反が認められれば、承認が取り消される更新制となりました。
  • 内部監査の機能強化として、総合衛生管理過程で承認をうけた施設は、食品衛生管理者を設置することが義務づけられており、食品衛生管理者は事業者に対して必要な意見を述べ、営業者は食品衛生管理者の意見を尊重しなければなりません。

外国において食品を製造、加工しようとする場合も対象となります。またHACCP支援法では認定の対象を工場単位としていますが、本制度では、施設単位となりますので注意が必要です。考慮すべき危害原因物質も食品の種類ごとに示されています。それらは厚生労働省の認証施設に関するホームページで確認することが可能です。

手続き方法

営業者


 ↓ 申請(申請書+資料)

厚生労働大臣

 ↓
地方厚生局


 ↓ 提出された書類をもとに基準に適合しているか確認:適合していた場合は承認を通知

営業者

  • 3年ごとに更新を受けなければ承認は効力を失うことになります
    (更新手続きは3か月前から受付)
  • 承認に係る総合衛生管理製造過程の一部を変更する際はその変更について承認を申請しなければなりません
  • 取消しに係る事務手続きは厚生労働本省が行います
  • 地方厚生局及び都道府県等は、営業者が自ら設定した認証内容を確実に実施するための技術的・専門的な支援を行います
  • 営業者は営業者が自ら設定した認証内容を確実に実施するため、HACCPシステムに係る教育訓練を受け、その知識の習得に努めます

総合衛生管理製造過程

食品衛生法において「製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法について食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造又は加工の工程をいう」と定義されています。ここがHACCPとの違いで、あらかじめ設定した衛生管理方法を遵守する必要があり、新たな危害発生を分析した結果への対応が困難にさせています。
営業者がHACCPシステムの考え方に基づいて自ら設定した食品の製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法は以下のとおりです。

衛生管理

  • 厚生労働大臣が承認基準に適合することを個別に確認し、承認する。
  • 「基準に適合した方法による食品の製造又は加工の方法である」とみなされる。

承認時の確認

  • 工程の各段階の責任者の設置や改善措置の明確化
  • サンプリング検査による検証の実施
  • 必要事項の記録の実施等HACCPシステムによる適切な衛生管理体制が確立されていること

6業種を対象としていたマル総は廃止されましたが、原則、全食品事業者を対象に令和3年6月1日から、HACCPに沿った衛生管理の実施が義務付けられました。

HACCPシステム

(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析・重要管理点 システム)
7原則に沿って行われる衛生管理システムのことです。令和3年6月1日からは原則としてすべての施設において実施が必要となります。特に大規模施設等に分類される施設は12の手順を踏まえて7原則を網羅できるように取り組みを進めましょう。
また、小規模な一般飲食店等でも、対応が必要になります。食品等事業者団体が作成した業種別手引書がありますので、参考にして対応を進めましょう。

出典:厚生労働省・一般財団法人食品産業センター(JFIA)

回答者

中小企業診断士 三海 泰良

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