ビジネスQ&A
社長が集金業務で出かけているときのケガは労災になりますか?
従業員3人と小さな広告会社を営んでいます。私は社長としての日常業務のほか、営業で外回りの仕事が多く、お客様との折衝や集金業務も行っています。先日いつものとおり、集金業務に出かけたところ、階段で足を滑らせ足の骨にひびが入りました。このような場合、医療保険はどのようになっているのでしょうか?また、労災保険は使えますか?
回答
社長は、原則的には労災保険を使うことはできません。よって、加入している国民健康保険などを利用することになります。ただし、労働者を1人でも雇用している社長であれば、事前に労災保険に「特別加入」すると、労災保険を使えるようになります。
労災保険は、労働者の業務災害および通勤災害についての負傷、疾病、障害、死亡などに必要な保険給付を行うものです。ですから、社長が集金業務など一般の従業員が行う業務を行っていたとしても、労災保険は適用されません。
よって、治療のため医療機関を利用する場合には、現在加入している国民健康保険など医療保険制度を利用することになります。保険が使えるかどうかは、加入している制度により異なります。
- 自営業者など個人事業の場合には、国民健康保険に加入しているケースが多いのですが、国民健康保険の場合は、業務上、業務外の区別なく保険給付が行われます。ですから、仕事中のケガであっても、国民健康保険の保険証を使うことができます。
- 法人を設立しているなどの場合には、健康保険に加入しています。健康保険の保険給付の対象は、業務外となっているため、原則的には健康保険の保険証は使えないことになっています。ですから、社長が業務上でケガをしても、健康保険は使うことができず、自費で病院に通うことになります。
しかし、極めて小規模な事業所の法人の代表者など(法人の代表者または業務執行者を意味します)の場合には、その事業の実態を踏まえ、次のような取り扱いとなっています。
「(健康保険の)被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とする。」(平成15.7.1保発0701002号)
よって、ご相談の社長の場合は、国民健康保険に加入していれば国民健康保険、健康保険に加入していれば健康保険の保険証を使うことができるということになります。
【労災保険の「特別加入制度」】
労災事故の起こりやすい業種で従業員と同様の業務に従事することの多い代表者の方には、労災保険の「特別加入制度」をお勧めします。
一定の中小企業の場合、労働保険事務組合に労働保険についての事務を委託すると、労災保険に特別加入することができます。手続きについては、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
特別加入すると、所得水準に見合った適切な給付基礎日額により保険料が決定されます。保険料は、概算払いでその年度分を前払いし、年度単位で保険料を払っていきます。
実際に事故が起きた場合は、加入手続きを行ったときに申請している労働者として行う業務または作業を行っていたときの災害によるケガなどであれば、労災事故と認定され保険給付されることになります。株主総会に出席中の災害など、本来の事業主として行うべき業務を遂行中に被った災害は、対象となりませんのでご注意ください。
【外部研修機関の活用】
人材育成プログラムができても、時間・予算・社内講師などの制約で、すべての研修を自前で実施するのはたいへんです。中小企業の場合は、こうした制約が多いのが一般的です。このような場合は、外部の信頼できる研修機関を活用すべきでしょう。国の教育研修機関として中小企業大学校があります。ここでは、中小企業の皆様に職位・職制ごとに、質の高い人材育成プログラムを提供しています。また、都道府県等中小企業支援センターにおいても、従業者を対象にした講習会を行うことが多くあります。
- 回答者
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社会保険労務士・中小企業診断士
大塚 昌子
- 関連情報
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労務安全情報センター
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厚生労働省
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