ビジネスQ&A
アルバイトを成長させて有用な人材として活用するには、どうしたらよいでしょうか?
3年前に開業した居酒屋の売上が順調に伸び、業績自体はよいのですが、いま一番の悩みはアルバイトが私の思ったとおりに成長してくれないことです。店を空けることが心配で休みもまったく取れません。アルバイトを私の理想とする人材にしていくには、どうしたらよいのでしょうか?
回答
まず経営者が求めている「理想の人材像」を明確に示してください。また、アルバイトの個性を認め、自発的な行動をさせることで成長を促しましょう。コミュニケーションをよくとって、相互の状況を共有することも大切です。
接客サービス業である飲食店にとって、アルバイト教育は店の経営を左右する最重要課題の一つです。ご相談のケースのように、アルバイトに店を任すことができず、休みを取ることができない経営者や店長も、実際に多く見受けられます。中長期的に、この状態が続くのは健全ではありません。
また、店員の対応一つでお客さまの満足度は大きく変わります。一度不満を感じた店にお客さまが帰ってくることはまずありません。アルバイトの能力は、店の収益にも大きな影響を及ぼすものです。
では、実際にアルバイトの成長を促す3つのポイントについてご説明します。
【アルバイトの成長を促す3つのポイント】
1.経営者が求めている「理想の人材像」を明確に示す
経営者の頭の中にある「理想の人材像」を文章にして紙に書き、アルバイトに見てもらいましょう。明確にこのように行動して欲しいということを示さずに、アルバイトから経営者の理想に近づいてくることを期待するのは無理があります。
「理想の人材像」を示す際には、以下の点に注意してください。
(1)できる限り具体的に、分かりやすく
理想はできる限り数値化し、複数の解釈ができないようにしましょう。例として、「メニュー提案ができる」とするのではなく、「年間メニュー更新数の最低2割をアルバイトの提案したものとする」と設定してみましょう。アルバイトが描くイメージがより鮮明になり、実現可能性が断然高くなります。
(2)実現可能な範囲で、少しずつ理想に近づける
アルバイトの現在の能力と理想とのギャップが大きい場合には、「少し頑張ればできる」程度の目標を個々人に与え、それがクリアできたらもう少し目標を上げる、というように段階を踏んで理想に近づけるように導きましょう。
(3)社会的に同意を得られる理想像とする
それぞれの経営者や店によって理想とされる項目は異なって当然ですが、あまりにも独自のものばかり、あるいは経営者の個人的趣向が強くなると、アルバイトから受け入れられない可能性が強くなります。
2.アルバイトそれぞれの個性を認め自発的に行動させる
経営者や店長からみるとアルバイトは頼りなく、常に助けてあげなければならない存在かもしれません。ときにはフォローも必要ですが、アルバイトの成長を促すには、自発的に行動させることが不可欠です。
自発的な行動を促すためには、以下の方法があります。
(1)挑戦をよしとし、失敗に対して理解を示す
基本的には褒めることです。失敗のコストも前向きな人件費の投資ととらえましょう。
(2)店の運営方法やメニューなどに提案制度を設け、よい提案をしたアルバイトを表彰する
アルバイトに運営方法の改善案などを提案してもらいます。そして、採用可能なものはすぐに採用し、また採用不可のものにはすぐに採用できない理由をフィードバックしましょう。
(3)勤務シフトは一方的に押し付けない
事前に希望を提出してもらい、それを調整してシフトを組みましょう。店長の出したシフトを後でアルバイトが調整するよりも、シフトに対する責任感が増し、欠勤率の減少効果も期待できます。
3.密にコミュニケーションをとる
できる限りアルバイトと話をすることが重要です。また、アルバイトからも話しやすいような環境づくりを心がけてください。経営者の理想とアルバイトの現状とを常に確認し合いましょう。
効果的なコミュニケーションの方法や留意点は、以下のとおりです。
(1)定期的にミーティングを設定する
毎日の運営ミーティングとは別に、アルバイト個々人と目標や達成度合いを話し合うミーティングを行いましょう。10分程度の短時間でもかまいません。この時間が、先々の大きな時間を経営者に与えてくれるのです。
(2)ツールを活用する
伝言ノートや電子メールを活用しましょう。ノートには最低限かつ形式的な書き込みだけではなく「クレームというほどではないが、お客さまがぼやいた気になる一言」などを盛り込むと、俄然活用価値が高まります。また、携帯メールを活用した連絡なども積極的に取り入れるべきでしょう。大切なのは、相互の存在を常に近くに感じることです。
外食産業は「教育業」です。人件費は、利益を圧縮する費用と考えずに、収益を向上させる投資と考えてみてください。
- 回答者
-
中小企業診断士
櫻井 正人
- 関連情報
-
厚生労働省
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