ビジネスQ&A

従業員の資格取得を推奨しようと思います。留意点を教えて下さい。

2022年 4月 13日

従業員60人の中小企業です。従業員の資格取得を推奨する制度を作りたいと考えています。会社としてどの程度の金額的補助をすべきか、また勤務時間の勉強を認めるべきか、などがよくわかっておりません。留意点を教えてください。

回答

資格取得推奨は多くのメリットがあります。留意すべきポイントは、(1)さまざまな部門の従業員が応募できるよう、推奨資格をバランスよく洗い出すこと、(2)金額的補助に関しては社内規定で細かく明文化すること、(3)評価基準についても整備しておくこと、です。

従業員の資格取得を推奨することは、会社と従業員双方にメリットがあります。
会社にとっては、従業員のモチベーション向上、能力アップによる業務効率性の向上、人材育成に熱心な会社だと思われることによる会社の評価向上、求人上の優位性確保や離職防止、自発的に学び発展する組織風土の醸成、などが期待できます。
従業員にとっても、個人の能力向上、社内評価の向上、新しい技術や知識の主体的な取得、視野の広がりによる新たなキャリアプランの作成、など多くのメリットがあります。
では、資格取得支援を制度化する際に留意すべきポイントを挙げてみます。

ポイント1 社の強みにつながる推奨資格を、バランスよく洗い出す

まず、会社として推奨する資格を洗い出し、リストを作成します。業務遂行に必須となる資格(例えば不動産仲介事業者における宅建など)がある場合はその取得が最優先となりますが、そうでない場合は「会社としての強みの維持強化につながる資格か否か」を念頭に置き、吟味・選択しましょう。

推奨する資格は、特定の部門の人員だけでなく、すべての部門の従業員が参加できるように、バランスよく幅広さを持たせましょう。例えば、施工管理技士や介護職員初任者研修などが社業上必要となる会社でも、ITパスポート試験や日商簿記3級など、どの部門の従業員でも取得する価値のあるものを加えて編成するとよいでしょう。従業員60人に合わせて、それぞれの資格の難易度にも幅を持たせれば、相応の数のリストになるでしょう。

また推奨資格リストは、業績との関連を見ながら、定期的に見直すことが大切です。

ポイント2 金額的補助に関する社内規定の整備

まずは資格取得にかかる費用について、会社が補助する範囲を明確にします。受験料だけでなく、当日の受験場への交通費、テキスト代、学校などの受講料まで補助するのか否か、全額補助か半額補助か、受験料は何回まで補助するか、などを細かく決めておきます。

また資格を取得した場合の報償は、手当(給与と共に支払われる資格手当など)にするか、一時金(祝い金、奨励金など)にするか、金額も含めて資格ごとに決めます。一時金の場合、すでに取得している者への対応方針も決める必要があります。さらに、2021年4月1日以降は中小企業でも、「同一労働・同一賃金」制度により、契約社員やパート労働者に対しても同一の資格手当を支払う必要が出てくることに留意しましょう。

また、資格取得の勉強時間を業務として認めるか否か、認める場合はどの程度の時間とするかについても、あらかじめ決めておきます。業務上の必須の資格などを「業務命令」として取得させる場合、会社の指示する勉強時間は労働時間に該当すると判断されます。

それらを資格取得支援制度の社内規定として明文化し、定期的に見直しましょう。

ポイント3 評価基準の整備

評価についても規定を作っておきましょう。推奨資格を取得したらプラスの評価をするのか、あるいは取得した資格を業務上の成果に結びつけた段階で初めて評価するのか、また取得しない・できないことは評価上どうみるか、などについて、自社としてのポリシーを持つことが大切です。

そこを考え抜き、実践と修正を重ねて定着させることが、資格取得推奨制度を活かして自社を強くすることにつながります。

実施してみると、「若手の優秀株でもなかなか取れない難しめの資格を、意外な高齢社員があっさりと取得して見直され、職場の空気が変わった」、など思わぬ効果もあるものです。人に投資する会社には明るい将来が待っています。

回答者

中小企業診断士 渡辺 英史

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