ビジネスQ&A
人材の確保とその定着を図るにはどのようにすればよいのでしょうか?
当社は警備業を営む中小企業ですが、若い新入社員を採用しても次々とすぐに辞めていってしまいます。人材の確保とその定着のために、会社としてどのようなことに努力すればよいのでしょうか?
回答
募集にあたっては、まず求める人材像を明らかにし、自社の魅力とともに十分認知させることです。一方、若年者を含めた人材を定着させる方法としては、経営方針を明確にし、社員にしっかりと浸透させること、同様に求めている人材像を明らかにすること、表彰制度、社内提案制度、メンター制度、オフサイトミーティングの導入などがあります。
【「求める人材像」を明らかにする】
リーマンショックに端を発した「100年に一度の危機」といわれる経済情勢の悪化により失業率が5%を上回り、有効求人倍率(有効求人数/有効求職者数)も平成21年度平均では0.45倍となりましたが、平成26年度の失業率は3.6%、有効求人倍率1.09倍と回復し求職者の売り手市場となっております。
加えて、若年者は大企業や公務員志望が依然強く、知名度の高くない中小企業は敬遠されがちです。
そのような中でいかに人材を確保するかは、まず、「求める人材像」を明らかにすることです。これは、就職希望者にとって、入社した場合の「どう行動すればよいのか」といった行動基準になります。次に、アピールできる自社の魅力を洗い出します。場合によっては、透明性の高い風通しのよい組織、やりがいのある仕事を提供できる仕組みなど、魅力づくりの企業努力も必要です。そして、経営方針や会社の将来の方向性などを含め、これら情報を就職希望者が容易に受けられるようにすること、広く認知させることです。
【原因と方策】
このようにミスマッチを回避して採用した人材は、離職率が低くなります。しかし、753現象と言われるものもあります。入社して3年以内に中学卒の7割、高校卒の5割、大学卒の3割が辞めてしまうという現象です。このように若年者がすぐ辞めてしまう原因は、「仕事が自分と合わない、おもしろくない」、「賃金、労働時間などの労働条件がよくない」、「人間関係がよくない」、「会社に将来性がない」、「キャリア形成の見込みがない」などです。
若年者がなかなか会社に定着しない原因としては、
- 入社前の印象と入社後の現実とのギャップが大きいこと
- 企業の経営に対する姿勢をあらわす「企業理念」や「事業計画」自体が明確でないこと
- 企業の中で共有する共通認識がないことからチームワークの力が弱く、働く社員にとってもやる気のでる職場となっていないこと
- 社内の風通しが悪く、若年者が気軽に相談できる雰囲気ではないこと
- 会社として、若年者を含めた人材にやる気を出させるような仕組みがないこと
などがあげられます。
若年者の定着率をあげる方策としては、
- 企業理念、事業計画を明確にし、企業の方向性を明らかにすることにより、働く社員に会社の将来像をはっきりと描かせること
- 人材育成についても、会社が求めている人材像を明らかにし、目標を明確にさせること
- 社員のやる気がでるような表彰制度や社員の意見を反映させる社内提案制度などの仕組みを取り入れること
- 定期的にトップからの企業の経営方針についてのメッセージがあること
- メンター制度やオフサイトミーティングなどいつでも気軽に仕事以外のことも相談できるしかけを会社の中につくること
などがあります。
メンター制度とは、組織上の上司や先輩とは別に仕事以外のことも含めた相談、指導を担う先輩社員を配置し、新入社員などの若手社員の育成にあたらせる制度です。メンター制度は、新人教育の他、幹部社員の育成などにも活用されています。この制度により、支援を受ける社員は、日々の細かな心配事や相談ができるようになり、会社に対する気後れや疎外感が薄れるようになります。
オフサイトミーティングとは、会社以外の場所で、従業員同士が集まり、仕事の立場を離れリラックスしながらまじめな話しをする場を設けるものです。集まった者同士の共通テーマでミーティングを行い、気軽に本音を話し合うことを目的としています。
企業にとって、人材は経営の「要」となるものです。目標を明確にして、意欲を高めさせるとともに、チャンスを与え、成果があった場合には誉めるということが、働く社員にとっての満足につながります。
- 回答者
-
社会保険労務士・中小企業診断士 大塚 昌子
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