中小タスクが行く!
第27回:時代のニーズをつかむ編
2020年 3月 2日
個食化・簡便化という市場ニーズの変化に対応できているか?
増加し続ける単独世代
未婚率の上昇や、核家族化の流れを受けて、単独世帯(世帯主が一人の世帯)が増加しています。厚生労働省の「平成27年 国民生活基礎調査」によると、2015年の全国の世帯総数は5,036万1,000世帯で、その世帯構造は、「夫婦と未婚の子のみ世帯」が1,482万世帯(全世帯の29.4%)で最も多く、次いで「単独世帯」が1,351万7,000世帯(同26.8%)、「夫婦のみの世帯」が1,187万2,000世帯(同23.6%)となっています。
「単独世帯」は、20年前の1995年には921万3,000世帯だったのが、この20年で46.7%も増加。この流れは今後も続くと見込まれており、国立社会保障・人口問題研究所の予測データによると、2040年には単独世帯の割合は約40%に達するとされています。特に、65歳以上の単独世帯数の増加は顕著です。
【単独世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移(2020年以降は予測)】
(出典)2015年まで総務省統計局「国勢調査」2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」(2018)
- 出所:総務省HP「単独世帯の増加」
時代のニーズは「個食化」「簡便化」
世帯構成の変化により、一食分ずつ小分けする個食化、調理の手間のかからない簡便化へのニーズが年々高まっています。
このことが顕著に表れているのが、カレー業界です。株式会社インテージの全国小売店パネル調査によると、2013年以降、個食パッケージされた「レトルトカレー」が徐々に伸長を続け、2017年には初めて「レトルトカレー」が「ルーカレー」を逆転しました(図1)。
【図1】販売規模(インテージ調べ)
- https://www.intage.co.jp/gallery/curry/ 出典:Intage知るGallery
また、レトルトカレーの「購入者当たり購入額」が一番高いのも単身世帯となっています(図2)。
【図2】購入者あたり購入額〔円〕(インテージ調べ)
- https://www.intage.co.jp/gallery/curry/ 出典:Intage知るGallery
では、ニーズの変化を受けて検討すべき次の一手は? マンガの続きを見てみましょう。
「シーズ発想」ではなく、「ニーズ発想」で
商品開発には、大きく分けて次の2つのアプローチがあります。
- 「企業の物語」や「地域の物語」を活かした『シーズ(Seeds)発想』
- 「消費者のニーズ」や「地域のニーズ」を想定した『ニーズ(Needs)発想』
中小・小規模事業者では、特定の原材料や素材ありきであったり、自社でつくれるものは何かといった『シーズ発想』を元に商品開発を行う傾向が見られますが、売れる商品をつくるには、『ニーズ発想』を元にしたアプローチが不可欠です。どちらか一方の発想によるのではなく、両者を行き来して商品を練り上げていくことが重要になります。
ニーズ発想の考え方やこれまで見てきたデータをふまえると、今後は食品関連企業が個食対応を進めることが非常に重要と考えられます。味の追求に熱心な食品メーカーは多いのですが、それと同じくらい適正量目の追求や使いやすさの追求が重要だという認識を持つ必要があるのです。
長期的な視点で、対応を検討
しかし、個食、もしくは簡便対応の商品開発をしようとすると、製造ラインの整備や新設が必要になるなど、企業には重い負担がのしかかります。そのため、大企業に比べて資金力が弱い中小・小規模企業は対応に二の足を踏むことも多いのですが、消費者ニーズが大きく変化した今、対応の必要性は高まってきています。
製造ラインの整備や新設を考える場合は、食品設備機器メーカーに相談するとよいでしょう。ある程度大きさのある工場の新設を考えるなら、エンジニアリング企業に依頼して省力化や省人化について検討してみることも選択肢の1つとなるでしょう。長期的な視点で対応を検討していきましょう。