食品事業者必見!知って得する豆知識

知って得する商品開発(マーケティングリサーチその1)

2020年 2月 4日

今回・次回と2回に分けて新商品開発についてお話しします。

新商品開発にはいくつかのパターンがあります。

A 競合商品改良型の商品開発

食品小売業に商品が採用されている理由、消費者に支持される商品はどのようなものかを考え、競合商品を上回る価値を有する商品を開発するパターンです。新機軸の商品を開発する場合を除けば、競合商品が存在していることが多いので、既存の競合商品と思われる商品を徹底的に研究し、それを上回る価値提案ができれば小売業、消費者に支持される商品開発ができる可能性が高いです。

B 消費者ニーズの吸い上げによる商品開発

消費者の既存商品への不満・要望などをヒアリングし、商品開発を進めるパターンです。大手メーカーなどはマーケティング会社を利用し、消費者ニーズのヒアリングを行う場合もありますが、大規模なヒアリングを行うと莫大なコストがかかるので、友人、知人、家族などにヒアリングしてコストを抑える方法も有効です。

C 事業者のひらめきや未利用素材の有効活用等によるプロダクトアウト型の商品開発

プロダクトアウト型の商品開発は、企業が商品開発に取り組むうえで、作り手の理論や計画を優先させる方法です。マーケティングリサーチを行っていないので、消費者に支持されない商品になってしまう可能性が高いのですが、この開発手法で商品開発をしている事業者は意外と多いです。

このほかにもいろいろ商品開発のアプローチ手法はありますが、経営資源の限られる中小事業者が商品開発を行うことを想定すると、Aの手法を軸にし、コストを抑えたBの手法も導入した商品開発がおすすめといえます。Cの手法で開発している事業者もA・Bの要素を追加することで売れる商品づくりができる可能性が高まります。

商品開発のプロセス

図1は、もっともオーソドックスな商品開発の手順です。順を追って商品開発のポイントを見ていきましょう。

図1

1.マーケティングリサーチ

商品のマーケティングリサーチを行う際、消費者視点とバイヤー視点の両方でリサーチすることが重要です。消費者視点で評価の高い商品でもバイヤー視点で扱いにくい商品となると、結局店頭に商品が並ばず、消費者が商品を購入できません。以下、マーケティングリサーチ項目例を列挙しましたので、項目ごとに目的を説明します。

ここでは具体性を持たせるためにY社のZ商品(木桶仕込み醤油1L・小売価格税別1000円/原料は全て国産)が高品質の食材を扱うスーパーマーケットX社の定番商品として扱われていると仮定して説明をすすめます。

消費者視点での商品マーケティングリサーチ

I-A どこで買う   スーパーマーケット・コンビニ・百貨店・専門店・WEB通販
I-B 誰が使う    家族・自分・ギフト
I-C 誰がターゲット 性別、年代、ライフスタイル、未婚既婚、単身・二人以上世帯
I-D 利用シーン   自宅・オフィス・外出携行/朝昼晩の食事・間食
I-E 目的      主菜・副菜・おやつ・味の調整
I-F どのように使う そのまま・レンジアップ・湯煎・炒め・煮る等
I-D 保存方法    使い切り・複数回利用を想定/要冷・常温/消費・賞味期限
I-E 価格      品質と価格のバランス
I-F 味       ターゲットに合ったおいしさの追求ができているか
I-G 原料      国産・輸入素材/添加物利用度

I-A どこで買う

同一の消費者でも、どの業態・店舗で商品を買うのかで、価格、量目、原料のこだわり、デザイン等に求めるものが違ってきます。X社で売られている醤油とコンビニで売られている醤油では価格帯と原料のこだわり度合いが違うかもしれないというところが推測されるでしょう。I-Aは自社が開発商品をどの業態で売りたいのかを判断する項目となります。

I-B 誰が使う

自家需要向けの商品であれば箱入りの醤油である必要はありませんが、ギフトであれば化粧箱入り3本セット商品が必要かもしれません。I-Bはパッケージデザインや量目を検討するときに参考とすべき項目となります。

I-C 誰がターゲット

Z商品はX社の客層にふさわしい、こだわりのある原料を使い、木桶仕込みという伝統製法で製造しています。しかし、価格は1000円と大手NB醤油メーカー1Lの商品が300円前後であることを考えると、とてつもなく高い商品といえます。X社のメイン顧客である30代~60代の原料・製法にこだわりを求める二人以上世帯の働く女性(消費者)でなければ購入につながらないでしょう。I-Cは販売価格、原料、製法、量目、デザイン等商品すべての仕様を決定するうえで、とても重要な項目となります。

I-D 利用シーン

Z商品は1Lと比較的大量目であるため、外出携行用とは考えられず、家庭内で煮物、焼き物などの味付け用として使われることが想定できます。仮に自社の新商品開発が弁当用醤油であったとしたら1Lでは全く駄目(量目が多すぎる)ということになります。I-Dは量目、商品形状(携行用・常備用等)などを決定する際に参考にすべき項目となります。

I-E 目的

Z商品は醤油ですので、当然、味の調整がメインの目的です。しかし、マーケティングリサーチの項目にあえて設定することで、新しい利用目的が発見できるかもしれません。例えば、ごはんにかけると抜群においしい醤油だとしたら、「醤油かけご飯用醤油」という利用目的を一つ増やすことができます。I-Eは利用法提案検討時に利用する項目で、この利用法の設定次第で小売店の商品導入の可否が決まる場合もあります。

I-F どのように使う

Z商品は醤油ですので、ほぼオールマイティ、どんな用途にも使えます。ただし、家庭でレンジアップして乾燥させるとふりかけ状になり、パスタに混ぜると見た目と味のアクセントにつながる商品だとしたら調理バリエーションが増えることになります。消費者にとって、用途は多いほうがありがたいでしょう。I-Fは用途提案決定時に利用する項目となります。

I-D 保存方法

Z商品はレトロ感漂うびん容器を採用しており高級感はあるが、近年、消費者からのニーズが強い鮮度保持容器には対応していないところは今後改良課題になるかもしれない。I-Dは容器、量目、商品形状(携行用・常備用等)、ターゲット等決定時に利用する項目となります。

I-E 価格

消費者が購入時に一番重視する項目です。ただし、安ければよいというものではなく品質と価格のバランスが重要であるため「値ごろ感」のある価格設定ができるかがポイントです。また、商品カテゴリーによって売れる価格帯の下限上限がありますので、販売価格設定時は考慮が必要です。仮にZ商品が販売価格3000円だったとしたら、X社は採用を見送るはずです。

I-F 味

ターゲット層に合ったおいしさの追求ができているかがポイントになります。どこにおいしさを感じるかは主観の部分も大きいため難しいのですが、ターゲット層によって求める味の傾向は分かれます。I-Fはターゲット層と味のバランスを決定するときに利用する項目となります。

I-G 原料

原料のこだわり度合いによって、販売価格、ターゲット層などが全く変わってきます。Z商品はX社のメイン顧客である30代~60代の原料・製法にこだわりを求める二人以上世帯の有職女性(消費者)に支持されていますが、ディスカウントストアのお客様は、外国原料と添加物を使っていても198円の醤油を支持するかもしれません。I-Gは主にターゲット層決定時に利用する項目となります。

次回は、マーケティングリサーチその2として、バイヤー視点で商品マーケティングリサーチを行う場合の調査項目について解説します。

解説者

中小企業基盤整備機構 チーフアドバイザー 籾山 朋輝

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