中小タスクが行く!
第25回:食品商談会編
2020年 2月 3日
チャンスを逃さない!
成約率を高める商談会の極意とは?
様々な形式の商談会
販路拡大のための絶好の機会である商談会は、以下の4つに大別できます。
- 特定企業との商談
特定の企業を訪問して行う1対1の商談会。バイヤーの出前出張によって行われることもある。
- 展示会との併設商談会
展示会主催者が出展社に対して提供することが多く、展示会と商談会を同日にこなせる、また、複数企業のバイヤーと商談ができるというメリットがある。 - 金融機関・支援機関等主催の商談会
地銀、信金、商工会、商工会議所等や中小機構地域本部にて、特定の地域の商品を首都圏等に拡販していくために開催される。 - バーチャル商談会
インターネットでつないだPCモニター越しに行われる商談会。地理的な制約がないため、遠方のバイヤーとも商談ができる。
Web商談会の例
- https://www.smrj.go.jp/doc/tool/guidebook_chiiki.pdf 写真出典:「地域資源を活用した売れる商品作りサポートブック(P.60)」(PDFファイル6,859KB)
今回は1つ目の「特定企業との商談」をマンガの題材としていますが、どの形態にも通用する、商談会の要点を見ていきましょう。
欠かせない「事前準備」
まずは以下のような「事前準備」が重要です。
1.WEBで商談先企業の情報収集
(1)通販サイトや電子チラシを確認する
例えばディスカウントストアと今回マンガで取り上げた高質系スーパーマーケットでは、商品に求められる価格帯や品質が全く異なります。通販サイトや電子チラシで品揃えの傾向を事前に分析し、自社商品の中で最適な商品を提案するための情報収集をしておきましょう。
(2)店舗数を確認する
商談先の店舗数が多すぎると、自社の供給能力と釣り合わない可能性があります。「うちの商品が、1店舗あたり1日X個売れるとして、(X個)×(店舗数)は最低作れないといけない」と概算し、想定される供給量と自社の供給量のバランスをチェックしましょう。
(3)店舗展開エリアを確認する
自社商品を供給するための物流体制が組めるかを、事前にシミュレーションしておきましょう。例えば、冷蔵商品などは距離の関係で配送日数が一日多くかかると、取引が難しくなることも。
自社の物流体制を事前に整理して、
- 2月5日15時まで…取引先の発注〆切
- 〃 17時 …商品発送(宅配便を利用)
- 2月6日 …取引先集荷センターに到着可能
という具合に、どういう物流(宅配便or自社便)で、発注後いつまでに取引先に商品を届けられるのかを確認しておきましょう。
2.臨店調査を実施する
可能なら、商談先の店舗に実際に足を運んで、客層や品揃え、価格帯などを調べます。その際のチェックポイントについては、マンガの続きを見てみましょう。
事前に自社情報・商品情報を整理する
商談先企業の情報収集に加えて、もうひとつやっておきたいことがあります。それは、自社情報・商品情報の整理です。
限られた商談時間の中で、自社や自社商品の情報をバイヤーに知ってもらうには、必要な情報をコンパクトにまとめておく必要があります。バイヤーが求める次のような情報を、事前に整理しておきましょう。
◆バイヤーが求める情報
〈自社情報〉
- 会社沿革
- 取引先小売業(有名スーパーマーケット・百貨店などと取引実績があると有利)
- 取引卸も有効な情報
〈商品情報〉
- 一押し商品の取引価格、出荷可能期間、出荷可能数量、出荷形態、最低発注ロット、保管方法、日持ち期間、セールスポイント(こだわりの栽培方法、数値データ)等をまとめた商品仕様書。「FCP展示会・商談会シート」の使用もお勧め。農林水産省のホームページよりダウンロード可能。
- https://www.maff.go.jp/j/shokusan/fcp/syoudan_sheet/ 農林水産省ホームページ「FCP展示会・商談会シート」
商談会当日
実際の商談会では、次の点に注意しましょう。
(1)時間配分を考える
例えば商談時間が30分の場合、「会社説明3分、商品説明7分、バイヤーからの質問10分、取引内容5分、クロージング2分、予備時間3分」という具合に、事前に時間配分を考えておきましょう。
(2)全商品を掲載したカタログを持参する
自社の全商品を掲載したカタログを持参しましょう。商談会では、基本的に一押し商品を提案しますが、バイヤーに気に入ってもらえない場合でも、ほかの商品を提案して、そちらが採用になることもあります。商品情報は多めに用意しておきましょう。
なお、一押し商品については、別に細かい情報を記載した商品仕様書が必要です。
(3)定期的に作業の意義・内容を振り返る
商品サンプルは「パッケージ等確認用」と「試食用」の最低2つは必要です。必ず持参しましょう。
(4)試食準備はぬかりなく
- 食品系の商談会の場合、試食・試飲はマスト。試食・試飲するものに合わせて、紙皿/紙コップ/割りばし/スプーン/フォークなどを持参しましょう。
- 前の商品の味を消すための、飲料水も忘れずに持参します。
- 残り物を入れる大きめの容器や、食べ残し、飲み残しを入れるゴミ袋等も持参しましょう。
バイヤーからの要望に備えておく
商談会では、バイヤーから次のような要望が出ることが想定されます。こうした要望に対して、どこまで対応できるのかも、できるだけ事前に決めておくことで、当日先方とのやりとりがスムーズになります。
◆バイヤーからの要望の具体例
- 価格等 →バイヤー希望の取引条件まで調整可能か?
- 商品の量目 →変更可能か?
- 味・食感 →バイヤー希望の味・食感に改良が可能か?
- 原材料 →添加物を抜くなどの変更が可能か?
- 商品生産量 →バイヤー希望の生産量まで対応可能か?
- 他の商品の提案 →見積りと商品サンプルを後日提供できるか?
- 販促物の追加 →メーカー側からPOP・キャッチコピー等を提案できるか?
- 口座開設 →バイヤー指定の卸との口座開設が可能か?
- 衛生管理 →バイヤー希望の衛生管理レベルまで対応可能か?
- 消費・賞味期限 →バイヤー希望の期限まで延ばせるか?
- 商品パッケージ →変更可能か? まずはダミー商品の作成が可能か?
こうした要望に対応可能なら、商談継続前提で話を進めましょう。
後日対応
商談会で、後日の対応としてバイヤーと約束したこと(サンプル提供、見積り出し、資料送付等)は、速やかに対応してください。
中でも気を付けたいのが「見積り出し」です。小売業(スーパーマーケット)との取引は、卸経由で行われることが一般的なため、見積の提出は問屋マージンを入れた後の金額を提示するのが原則です。商談会参加時に卸売業者が確定していない場合は、見積提示はしないほうが無難です。
小売業から卸売業者の指定があるはずなので、指定された卸売業者に仕切り価格を提示の上、卸売業者経由で小売業への卸売価格を提示するルートを作り、継続商談に持ち込みましょう。
ここで紹介した、事前・当日・事後の商談会対策はどれも欠かせないものばかり。成約につなげるために、着実に取り組みましょう!