食品事業者必見!知って得する豆知識
知って得する商品開発(マーケティングリサーチその2)
2020年 2月 5日
前回は消費者視点でマーケティングリサーチを行う場合の調査項目について解説しました。今回は、バイヤー視点でマーケティングリサーチを行う場合の調査項目について解説します。
バイヤー視点での商品マーケティングリサーチ
II-A 商品価格 売りやすい価格帯か/利益が確保できるか/商品回転率はどの程度か
II-B 陳列しやすさ サイズ感(幅・高さ)/売り場形状にマッチするか
II-C パッケージ 流通耐性のあるパッケージか/売り場で目立つか
II-D 販促のかけ方 POP・インストアプロモーション・チラシ
II-E 商品陳列量 どの商品を一番売り込みたいか
II-F 原材料・製造方法 原材料・製造方法へのこだわり度合い
バイヤー視点での商品マーケティングリサーチでは「どれだけ効率的に儲けられるか」という視点が入ってくるのが特徴です。
II-A 商品価格
バイヤー視点の商品価格はカテゴリーを面でとらえるところから始める必要があります。X社の醤油の品揃えは40アイテムあり価格の下限は500円、最も売れている価格帯の商品は750円、上限が1000円だとします。この場合、Z商品は醤油カテゴリーの中では上限の価格帯に位置するということがわかります。750円の商品が10本/月の売上で、Z商品は一番売れる価格帯の商品ではないので月に5本しか売れていないとします。Z商品はバイヤー視点で見ると商品回転率の悪い商品ということになり、750円の商品よりも1本あたりの利益率を高くする必要があることになります。II-Aは、こだわり商品であればあるほど高価格、低回転率になる傾向がありますので、店舗側にどれだけ利益を多く残せるかを販売価格から推測し、小売価格と自社商品の店舗段階の原価率を算定する場合に利用する項目となります。
II-B 陳列しやすさ
食品小売業の売り場は商品カテゴリーによって、商品陳列棚の高さや冷蔵・常温などの温度帯が異なります。仮にZ商品が通常の1Lの醤油商品と比べ1.5倍の高さだとしたら、店舗導入されないでしょう。商品陳列棚に入らないからです。つまり、II-Bは商品カテゴリーと売り場形状がマッチしているかを確認するときに利用する項目となります。
II-C パッケージ
製造小売り業(自社の店売りのみで販売)の和菓子商品をスーパーマーケットで扱う場合などに多いのですが、商品を移動(輸送)させることを前提にパッケージが設計されていないため、商品取り扱いがNGになるケースです。II-Cは流通耐性のあるパッケージのレベルを知るための項目となります。
II-D 販促のかけ方
自社商品がX社に採用された場合、店頭でどのような販促活動が可能かを確認します。幸運にもX社が自社商品に興味を持ち、採用に向けて商談をすることになった場合、自社による販促活動やPOP資材の提供などの提案をすることで、商品採用の後押しになる可能性があります。II-Dは商品採用率を上げるための販促提案内容を検討するときに利用する項目となります。
II-E 商品陳列量
商品陳列量の多寡で、どの商品を一番売りたいかがわかります。X社売り場の醤油カテゴリーでは、750円商品を3フェース(売場で3本分陳列できる幅で売られている状態)、Z商品は1フェースです。Z商品は品揃え商品(数は売れなくてもよく、商品バリエーションを維持するために置かれている商品)ということがわかります。II-Eは自社商品を小売業提案時にどのポジションで扱ってもらうかを確認するための項目となります。
II-F 原材料・製造方法
バイヤーは商品価格と原材料・製造方法のこだわりのバランスを検討したうえで商品導入を決定します。Z商品は、価格は高めですが国産原料のみを使った木桶仕込み製法ですので、原料と製造方法のこだわりと販売価格のバランスが取れていると感じて商品を定番導入しています。II-Fは商品の販売価格と原料・製造方法のこだわりのバランスを決定する項目として利用します。
マーケティングリサーチを重視すれば外さない商品開発ができる
Z商品は、Iの消費者の商品評価と、IIのバイヤーの商品評価をクリアしています。いいかえるとX社顧客(消費者)が評価している商品なので、バイヤーは商品を導入しているといえます。自社商品をX社売り場に定番商品として導入してもらうには、自社開発商品がZ商品含め、醤油カテゴリ-全品に対して、消費者の商品評価項目、バイヤーの商品評価項目が何か一つでも上回っている必要があります。バイヤーの立場からすると既存の定番商品より強みのある商品でないと商品を入れ替える意味がないのです。既存商品の商品レベルを知るうえでは、店頭商品についてのマーケティングリサーチが有効でです。消費者及びZ社が最低限求めている商品レベルは把握出来ているわけですから、あとは何か一つでも強みのある商品を開発すれば、定番採用になる可能性は高くなります。新商品開発はまずは競合商品の店頭マーケティングリサーチから始めましょう。
次回以降、2.商品開発コンセプト検討、3.商品設計、4.販売戦略の設定について解説していきます。
- 解説者
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中小企業基盤整備機構 チーフアドバイザー 籾山 朋輝